愛の座敷牢

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領域展開しようぜ!

 ひさびさのビンゴ記事です。前回はこちら

 そろそろむずかしいお題しか残ってない。

 

 

※注意

 以下は少年ジャンプ連載の陰惨battle漫画『呪術廻戦』を読んでいないと全く理解の出来ない記事です。読んでない人は今すぐに読むか、我慢してこの記事を読んでください。

 

 

 という他者に面倒を強要する「縛り」によってわたくしの術式効果を底上げしたところで、今回のお題に移りましょうか。もうそのまんまです。

『領域展開:(アルバム名)』ですって!

 あーあ! こんなアダルトな記事しかない、アダルトな読者しかいないブログでジャンプネタなんてもうねえありがとうございます本当に。当方、週刊少年ジャンプを購読して早15年の根っからのジャンプ大好き27歳です。ジャンプより付き合いの長い友達がいない

 というわけで、ここから先は呪術廻戦を現在連載分まで読んだ人しかいない、という前提で話を薦めるのでよろしく頼みます。「そんなん知らんからフィーリングで読むわ」という世界一無謀な方向けに一応簡単に説明しておくと『領域展開』というのは、呪術廻戦に登場するキャラの中でもトップクラスの戦闘力を有する奴らしか使えない、呪術廻戦の戦闘における「奥義」です。BLEACHにおける卍解、ワンピースにおける覇王色の覇気、ポケモンにおけるメガシンカダイマックス もう分かったね、出したら大体勝てるし出されたら大体負けるやつだよ

 説明終わり! こっからはノリで書くからよろしく

 

 

 

 

 

 領域展開

 

 

 

  

 ズギュウウウウウウウウウン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1.展開

 

 術式を展開すると、術者の頭上に両脚で電球を掴んだミミズク型の式神と、巨大な右の掌型の簡易領域が出現する。掌型の簡易領域は術者の足元に出現し、術者の動きと連動して、術者を乗せるような形のままで動く。ミミズク型の式神は術者の意志に従ったり、従わなかったりする。ごくまれにミミズク型の式神は逆さづりになった投手(バスケットシューズを履いている)になったり、森鴎外マーティン・スコセッシを雑にコラージュしたような肉人形になったりする。後述する式神の能力自体は変わらない。

 掌型の簡易領域は殆ど「シン・陰流」の簡易領域と同等の性質を持ち、他者の領域によって付与された術式の必中効果を中和できる。この簡易領域内は他者が自由に侵入することが可能。領域内は約49分間で1ループする謎の音楽が大音量で流れ続けている(術者の鼓膜は呪力によって適度に守られる)

 この「領域内で流れている音楽」が術式の根幹であり、ミミズク型の式神はその音楽の術式を増強するためのいわば「スピーカー」、電球は音楽に合わせて自在に色を変え光り輝く「スポットライト」と言える。延々と鳴り響く音楽と明滅するフラッシュによってテンションの上がった術者本人のバフと、何が何だか分からない相手への視覚・聴覚へのデバフがこの術式の基本仕様となる。

 ミミズク型の式神は術者が命令をしない限り、術者を中心とした半径1.1kmの範囲内を自由に飛び回り、件の音楽を大音量で流し続ける。その音量は式神に近づくほどに上昇し、最大で150dBにもなり得る。これは常人では鼓膜が破れる音量である。それを守るために耳に呪力を集中すると、今度は術者の徒手空拳に対応しづらくなるという地味な厄介さがある。また、後述する術式の効果は聞こえる音楽の音量が大きければ大きいほど上がるという性質があり、相対する人間(以下「対象」と記述する)は術者本人とミミズク型の式神双方の距離感を意識して戦闘を継続しなければならない。

 

 

2.術式"Catcher In the Spy"

 

 この術式は前述の通り「49分間で1ループする謎の音楽」が核となっている。術者の領域、そしてミミズク型の式神から鳴り響くこの音楽は、原則として「やたら高い声のボーカル」「おおよそ1人で弾いているとは思えないエレキギター」「ウザいくらいに主張の強いぶりぶりのベース」「死ぬほど上手いドラム」によって構成されており、聴き馴染みの無い人間からすれば「騒音」としか判断されないようなものであるが、そういうことを素直に言うと術者が激昂して大変なことになる。

 この「49分間で1ループする謎の音楽」は12のセクションに分かれており、分割されたセクションのひとつひとつを「曲」と呼ぶ。この「曲」はそれぞれ雰囲気が全く異なり、術式の効果そのものも大きく変化する。この「曲」の順序は術者によっても変えることは出来ず、「曲」を早送りにしたり、スキップしたりすることも出来ない。また術者がその「曲」それぞれの術式効果を自由に扱えるわけではない。あくまで術式の効果は「曲」の進行に依存する、いわば「イベント」のようなものであり、この術式は「曲」の進行によって発生するイベントを、術者と対象に強制する術式と言える。

 この「曲」にはそれぞれ盛り上がり、いわゆる「サビ」が存在し、それが流れている間は術者の呪力が無尽蔵に溢れ続ける状態となる。ただし、この効果は相手が「サビ」を認識すると相手にも適用される。こういう部分は「坐殺博徒」とよく似ている。

 以下に「曲」ごとの術式の効果(イベント)を一部記載する。

 

 セクション1

 長さは2分54秒。 術式を展開したと同時に流れ出す楽曲。重厚かつ疾走感のあるギターの音色を基調としたスピーディな曲。

 

 0:00 術者後方に巨大な赤子の頭部が現れ、ニタニタと笑う。

 0:20 赤子の頭部が5つに増える。もう笑っていない。

 0:30 無作為の地点に学生服姿の森鴎外マーティン・スコセッシが出現する。

 0:41 上記二人が楽しそうになる。

 0:46 尋常ではないくらい退屈なテレビ番組が放映される。

 0:55 ホワイトアウトする。上記の登場人物がすべてリセットされる。

 1:00 どこからともなく現れた銃火器が対象を蜂の巣にする。

 1:09 一定のIQを有する人間を対象にしていないテレビ番組が放映される。

 1:22 なんかめっちゃ光る。

 1:26 銃声。

 1:31 どこからともなくぬるま湯があふれ出し、対象が身体を冷やす。

 1:36 DA☆

 1:50 霊媒師が今日の運勢を教えてくれる。信憑性は朝の占い以下。

 1:54 対象の頭の上に水晶が乗せられる。楽しそうにしなかった場合、死ぬ。

 2:07 忍者が現れる。特に害はない。

 2:17 砂嵐の画面を観ている方が有意義な時間を過ごせるテレビ番組が放映される。

 2:23 上記のテレビ番組の音量が200dbを超える。

 2:31 なんかめっちゃ光る。

 2:36 銃声。

 2:43 どこからともなくぬるま湯があふれ出し、対象が身体を冷やす。

 

 

 セクション6

 長さは3分26秒。中盤で流れる曲。どことなくとぼけた雰囲気のリズム隊と、その中で軽快に鳴り響くギター、そしてなにより後述するイベントの理不尽さが特徴的な曲。

 

 0:11 術者後方に自由の女神が現れる。

 0:15 おもむろに唐揚げにされる。

 0:28 上記への疑問を呈した場合、上空から身体を打ち付けられて即死する。

 0:33 バスケットシューズを履き潰した投手が、マウンドにて華麗に倒立を決める。

 0:41 上記全てが主審判断によりなかったことされる。0:28で死んだ場合も生き返る。

 0:44 ハリクマハリタ。少女時代への憧憬。

 0:56 時間遡行、もしくは跳躍。数秒~数分前に巻き戻ったり、数秒~数分後にジャンプしたり、何も起こらなかったりする。ポンコツで無様である故の、仕様

 1:11 道理摂理蹴っ飛ばされ、異論を全てシャットアウトされた後に、どうしようか?と問われる。明確な回答がない場合、死ぬ。

 1:21 自由の女神像が崩れ、代わりにたくさんの野生生物がそこら中からあふれ出る。

 1:28 愛とチョコレートが配布される。拒否した場合、死ぬ。

 2:14 時間の法則が乱され、全ての秩序が崩壊する。

 2:23 地球のどこかのコールセンターに通話がつながる。明瞭な質問が出来ない場合、死ぬ。

 2:43 時間遡行、もしくは跳躍。数秒~数分前に巻き戻ったり、数秒~数分後にジャンプしたり、何も起こらなかったりする。ポンコツで無様である故の、仕様

 2:58 時間遡行、もしくは跳躍中に時空の壁にぶつかったりぶつからなかったりする。ぶつかった場合、三次元と四次元の狭間の空間に取り残され、この世から「存在」そのものが消える。非常に危険

 3:10 Bon voyage. 特に理由は無いが、死ぬ。

 

 

 セクション10

 長さは3分46秒。全セクションの中でも特に際立ったゴリゴリ感と、色んな意味で血の気の多いイベントのラッシュが特徴であり、必ず相手を殺すという意志が感じられる特に危険な曲。

 

 0:07 "Who is normal in this show?" の絶叫と共に、術者の後方に巨大なルーレットが出現する。以降のイベントはルーレットの出目によってダメージが大きく変わる。

 0:21 無数の紙幣がばら撒かれる。どこからか怒号、ボスを呼ぶ声。

 0:34 四方八方から新鮮なトマトが投げつけられる。出目が悪いと死ぬ。

 0:40 術者、相手、ルーレットの均衡が崩れ、術式が一瞬不安定になる。これは術式の使用上どうしても起こるバグのようなものらしく、端的に言うと「謎」

 0:46 SHAKE!

 0:55 以上を全て成り行きに任せることで術式を安定させる。

 1:00 信じられない勢いでルーレットが回転し、ボールが1個投げ入れられる。赤のポケットを「天国」黒のポケットを「地獄」とし、ボールが赤のポケットに入った場合術者に、黒のポケットに入った場合相手に、無限の「退屈」が押し寄せる。

 この「退屈」は強烈な時間感覚の延長、雑に言うと五条悟の「無量空処」に性質は近く、この「サビ」が終るまでの数十秒間を数年間に感じるほどに体感時間が延長し、その間全くの身動きが取れなくなる。コンマ数秒の駆け引きが勝敗に直結する術師同士の戦闘においてはあまりに致命的な時間であり、決まればほぼ勝ちと言える。

 救済策として「退屈」に呑み込まれた約10秒間以内に、この「退屈」が無作為に提示する問いに、揺るがない条件・確かな理由を挙げて解答することで硬直から逃れることが出来る(この解答時間は硬直時間に含まれず、正確な解答が出来た場合はボールがポケットに落ちた直後の状態に戻る)。ただこの「問い」は大抵理不尽なので、初見では大抵確定で硬直する。術者もたまに解答をミスってスタンする。

 1:26 今夜も駄々騒ぎが始まる。出目が悪いと死ぬ。

 1:36 巨大な掌で転がされていたダイヤモンドが無作為な方向に超高速で射出される。出目が悪いと死ぬ。

 1:46 相手が女性だった場合無条件の攻撃権が与えられる。

 1:50 ルーレットの出目によってプレゼントが配布される。出目が悪いと死ぬ

 1:55 すっごいエリート然とした、財が有り余る殿方が現れる。出目が悪いと圧倒的財力で撲殺される。噂ではこいつが「ボス」らしい。

 1:58 常軌を逸した勢いでルーレットが回転し、ボールが1個投げ入れられる。赤のポケットを「天国」黒のポケットを「地獄」とし、ボールが赤のポケットに入った場合術者に、黒のポケットに入った場合相手に、無限の「退屈」が押し寄せる。

 今回は与えられた時間内に質素と善行を重ね、その行いを褒められた際に謙遜することが出来れば硬直を免れる。与えられた時間と求められる善行のノルマはランダムに決められ、育ちが良いほど高いレベルの質素と善行を求められる。

 2:21 大人を嘗めるな、と一喝される。出目が悪いと死ぬ。

 2:24 気楽な駄々騒ぎが始まる。出目が悪いと死ぬ。

 2:41 on the bassのfakest beat! 出目が悪いと死ぬ。

 2:45 on the drumsのclever shors! 出目が悪いと死ぬ。

 2:49 same timeでchaotic show! 出目が悪いと死ぬ。

 3:02 OK people one more time? セクション10内のイベントで任意のものをもう一度繰り返す。

 3:03 おおよそ正気とは思えない勢いでルーレットが回転し、ボールが1個投げ入れられる。赤のポケットを「天国」黒のポケットを「地獄」とし、ボールが赤のポケットに入った場合術者に、黒のポケットに入った場合相手に、無限の「退屈」が押し寄せる。

 3:29 三度目の駄々騒ぎが始まる。もうこの辺からわけがわからなくなる。

 3:31 対象が「若人」だった場合、花盛りなので許される。それはそれとして出目が悪いと死ぬ。

 

 

 

3.領域展開"既勃発事件"

 

 掌印は弁才天印。

 領域展開を行う上でのこの術式特有の「縛り」として、流れている音楽を相手が聴いていることが一つの条件となっている。何らかの理由で相手が聴覚機能を遮断・喪失していたり、強い呪力によって耳を守っている場合、領域内に閉じ込めることは出来ない。この「縛り」を代償に、この術式は領域を展開せずとも「イベント」によってある種、その空間を支配しているかのような攻撃と、後述する多様な生得領域が可能となっている。

 この術式の領域は、今現在流れている曲のイベント情報を生得領域に添加することで、その「曲」を素体としたものとなる。セクション1の状態で領域を展開すればどことなく近未来なビル群が立ち並び、セクション8で領域を展開すれば宇宙空間に鉄道が走っている様な空間となる。

 領域展開中は12曲ではなく領域展開していたそのセクションが単体で無限にループするため、領域を解除するまでその曲のイベントを何度も繰り返すことになる。その仕様上、術者からは「リピート再生」と呼ばれたりする。一度そのセクションで領域を展開した場合、一度領域を解除するまではセクションは移行しない。

 この術式に付与される必中効果は相手に攻撃判定が発生するイベント全般であり、セクション1の銃火器乱射、セクション10のトマト投げつけ、セクション12の自動車急襲などが該当する。ただ、術者もろとも対象を致死性のイベントの数々に理不尽に巻き込んで攻撃する術式という関係上、音楽を聴いている以上ある程度の必中効果をすでに有しているため、その点では比較的恩恵は薄いともいえる。この領域の真髄は、そのセクションを文字通り「自在に」操れることにある。

 通常この術式において、セクションそのものを弄ることは術者にすら出来ないが、術者は領域内においてはそれが可能となる。具体的に言うと巻き戻しや早送りの使用である。

 セクション4の焼却炉放り込み攻撃、セクション7の隕石落下爆撃、セクション11の呼び出しボタンによる降神など、この術式の音楽には強力を通り越してもはや理不尽とさえ感じさせるイベントがちらほら存在するが、巻き戻し効果を使用することでその全てを無制限に、何度もお見舞いすることが出来る。またそこまで効果の薄いイベントはスキップすることで、手早く強力なイベントの乱打に移行することが可能であり、狙ったセクション内で領域を展開すれば文字通り一方的な蹂躙が開始すると言っても過言ではない。また「音」を主体とする術式である以上、相手が聴覚で認識していればそのままこの領域に引きずり込めるため、領域同士の押し合いにめっぽう強いという利点がある。

 余談だが、この術式の非常に珍しい特性として、特定の場所にて領域を展開すると、既存の12セクションの順番が通常と変化した上で、新たな曲がいくつか追加されることがある。その「場所」は全国に26か所存在し、術者はそれを「聖地」と呼んでいるらしい。「聖地」で領域を展開した場合はセクション単位でループすることなく、単純に普段の術式が強化されるような形になる。

 

 

4.弱点

 

 このように非常に強力かつ多彩で、なにより理不尽極まりない術式ではあるが、その特殊性ゆえにいくつかの明確な弱点が存在する。

 まず、この術式がすべて「音」を根幹としていること。

 狗巻家相伝の術式「呪言」がそうであるように、言霊、音に特化した術式の宿命として、耳から脳にかけてを呪力で守られると術式効果そのものを無効化される。これは領域展開時でも例外ではなく、そもそもこの音楽を聴いていないと領域に引き込むことも出来ない。だからこそ「呪言」は対呪霊に特化した術式とされるのだが、この「Catcher In The Spy」は「呪言」と同じような性質を有しながらもどこまでも対術師に特化した術式であるため、かなりちぐはぐだと評される。なので、手練れの術師には比較的容易に対策されがちではある。

 また、耳から脳にかけてを呪力で守るという対策の他に、聴覚を意図的に遮断するという対策も有効である。過去にこの術式と相対した際には自ら鼓膜を潰して対策を講じた術師も確認されている。反転術式の使用が可能な術者は一時的に自らの聴覚を自身の手で物理的に遮断することで、この術式に対応することが可能。

 ただこの弱点は術師側も深く認識しており、それをさせないために徒手空拳や呪具などで間を潰し、多角的な攻撃で攻め立てることで相手の呪力操作を不安定にさせ、術式に上手く引き込むように立ち回る。

 

 また、性質上この術式は、術者自身も完全なコントロールが出来ない。

 前述の通りこの術式は、セクションの進行によって発生するイベントを、術者もろとも相手に強要する術式である。術者は術式で発生するすべてのイベントを把握しているとはいえ、イベントの中には対処法が術者自身でも「気合で回避する」以外の選択を取れないものも存在するし、セクション10にいたってはルーレットの出目次第では術者自身も問答無用で死ぬ。この術式の初見殺し性能と圧倒的な理不尽さは、術者もこうして巻き込むことによる「縛り」によって成り立っている部分があるためどうしようもない。

 

 そして最大の弱点として、セクションごとのスキップが出来ないことが上げられる。

 理不尽の極致点であるセクション6、殺傷能力の臨界点であるセクション10と、術式に巻き込めさえすれば一瞬で叩き潰すことが出来るセクションもある一方、陽気で快活だが危険性は低いセクション3、どこまでも優しいセクション5、一般人が死ぬまで追いかけて来るだけのセクション9など、セクション全体を通しても殺傷能力が低いものもあり、そのセクション中はイベントに期待が出来ないため、術者自身の攻撃のみで立ち回る必要がある。

 特に殺傷能力の高いセクションは2・6・7・10・11が該当するが、セクション2に到達するまで約3分、セクション6に到達するまではなんと21分の時間を必要とする。「サビ」突入状態の呪力の無尽蔵化によって実質的に不死身となることなどを利用すれば、戦闘時間を意図的に長くすることも不可能ではないが、術式の詳細を理解している相手術師が危険性の低いセクション中に畳みかけることは定石であり、不利な事にはかわりない。特にセクション5は全体通しても相手に害を与えるという意志が全く持って感じられない上にその長さも約6分間と全セクションの中でも一番長いため、ここで攻め立てられると非常にもろい。

 領域展開時もその時に流れている「曲」を生得領域に反映する為、任意のセクション中に領域を展開しないと術者の思ったイベントが発動できない欠点があり、例えばセクション10を領域として使用したい場合は、術式の進行がセクション10にいたるまで待たねばならない。

 

 このように、極めて理不尽な術式ではあるが、その理不尽に至るまでがなかなかに困難であり、最大限にこの術式を運用するには術者本人の素の強さが肝要であることが分かる。非常に扱いの難しい術式といえよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 記録

 20■■年■■月■日  ■■県■■市

 

 任務概要

 同県における一般人の連続廃人化事件の調査

 

 任務担当者

 ■■■■(当時準一級呪術師)

 

 15:35 近辺の調査によって、残穢から呪詛師【検閲により削除】によるものだと断定

 16:00 呪詛師【検閲により削除】の情報を担当者に開示。

 16:35 ■■市■通りアーケード街において呪詛師【検閲により削除】を確認。

 16:42 近辺の補助監督によって”帳”が下ろされる。

 16:44 戦闘開始。

 16:50 呪詛師【検閲により削除】が術式を展開。

 17:11 呪詛師【検閲により削除】が領域を展開。記録されている術式効果との相違点が確認され、この場所が「聖地」であることを特定。担当者は簡易領域で中和しようとするも、”分からず屋には見えない魔法”によって視覚情報を乗っ取られ、領域に引き込まれる。

 17:12 そのエネルギッシュかつソリッドなパフォーマンス、たった三人のトライアングルで掻き鳴らされているとは到底思えない重厚なサウンド。圧倒的ステージングでこの場を支配する彼らの音楽からもはや逃れる術はなく、始めは懐疑的だった心も次第に支配されていく。ハイトーンなボーカル、エッジの効いたフレーズライン、主義主張の逞しいベース、異次元のテクニックのドラミング。三者三様のストイックな佇まいに、ロックバンド有するロマンがこれでもかと凝縮されている。

 ”シャンデリア・ワルツ”でヒートアップしたフロアの熱を受け継ぐかのように披露される"蒙昧termination"では毒々しくもリズミカルなビートが観客を揺らし、"WINDOW開ける"のどこまでも音楽に対して愚直に真摯な姿は観客の身体だけでなく、心も同様に震わせているのは言うまでもない。そしてエモーショナルな空間を切り裂くようなギター、炸裂する”シューゲイザースピーカー”!! もはや言葉はいらない、俺達はこのあまりに激烈な音楽の奔流に、振り回されるだけの、ただの、木片――――

 19:48 "帳"が破られる。

 20:01 補助監督が担当者を発見。よだれを垂らし、どこか恍惚とした状態で立ち尽くしており、専門医はこれを呪詛師【検閲により削除】の術式の能力だと断定。

 呪詛師【検閲により削除】の姿は確認できず、逃走したとみられる。

 

 

 

猫又おかゆに歌ってほしい曲 9選

 

 

 推し、という言葉には年齢制限がある。と思っている。

 

 近年本当に良く用いられるこの「推し」というたいへんに利便性の高い言葉。wikipediaによればその起源は1980年のアイドルブームにまでさかのぼるそうな。モー娘。のファンの間で用いられ、AKB48の台頭によって普及し、2011年の流行語大賞へのノミネートに伴って知名度が上がり、2019年にはついに国語辞典に乗るまでにこの国に浸透した。

 今やSNSを眺めていてこの「推し」という言葉を見かけない日はなく、アイドルにアニメに漫画に映画にその登場人物に、ロックバンドに楽曲にと、ありとあらゆるコンテンツの頭にこの「推し」の二文字を付け、それを応援、依存、ないし布教すること、いわゆる「推し活」に自身の存在意義を見出す人々によって、今日も僕の周りの電子空間はにぎわっている。自分だけの魅力を見出した「推し」の供給を心の糧に、苦難の多いこの世の中をなんとか邁進しているうつくしき人たちをSNS等で観測すると、人間もまだまだ捨てたもんじゃないなとか、そういうことを思う。何目線?

 

 ただこの「推し」という言葉は、あまりに言葉の響きが若すぎるというか何というか、僕の中でどうにも成人男性にはそぐわない感じが否めない。高校生や女性が好きなものを「推し」と語るのは何とも思わないが、自分ほどの年齢の同性が「推し」という言葉を使っているのを見ると、どうにもむずがゆくてならない。見苦しいから使うな、という話ではなく、なんか僕らみたいな年代にはそういうヤングな感じではなく、もう少し相応しい言葉を模索してもいいんじゃないすか、みたいな気分になるのだ。そういう意味での「年齢制限」である。「推し」という言葉を使うには、俺様は年をとりすぎた。

 

 

 それを踏まえて言う。

 2年ほど前から猫又おかゆにハマっている。

 

www.youtube.com

 

 僕はもう「推し」って言葉を使いたくなくて仕方がないのだが、彼女に対する気持ちを単なる「ファン」で済ませるのも違う気がする。この紫髪の超かわいいぷにぷにゆるふわスーパーキャット、猫又おかゆことおかゆんが完全に、生活の一部として入り込んでしまっているのだ。今も彼女のカスタムロボV2配信を裏で流しながらこの文章を書いている。

 この年になってアイドル、それもVtuberにハマるとは思わなかった。学生時代、阿澄佳奈が結婚するまでのほんの一時期だけ、女性声優およびアニラジにハマったことはあったものの本当に一過性のもので、ももクロやでんぱ組といったその時代をきらめくアイドルの沼へとハマっていくクラスメイトたちを横目に見ながら、自分はアイドルというものには縁のない人生を歩んでいくのだと思っていた。ホロライブにハマるまでは。もう今では立派なおにぎりゃーである

 

 これ以上書くと記事の本題とどんどんズレていくので手短に書くが、このおかゆんは本当にいい子なんですよ。こんな人格、もとい猫格者は本当に珍しい。他人に甘く、自分にもっと甘くを地で行くようなその人柄は本当に素晴らしい。いつかの質問コーナーか何かの配信で、彼女の物事への向き合い方に感銘を受けてからずっとおかゆんの虜である。おかゆんの何が好きかと問われたら間違いなく存在そのものと答える。猫又おかゆという存在がもう、最高。素晴らしい。あと、。マジで声が良い。

 そう、おかゆんは何より声が良いのだ。マジで声が良い。それこそあのヒカキンが認めるレベルである。配信でのダウナーでキュートな声も、他のホロメンとのコラボでのちょっと精神年齢の上がった感のあるゆるっとした声も、カッコいい系の歌を歌う際に聴ける低音クールな声も、全部いい。中毒性が高い。僕が知らないだけで神経系に作用する激ヤバ成分が含まれているとしか思えない。

 その声の良さを存分に活かした彼女の歌は極めて評価が高く、ものによっては一千万回再生されているものもある。かくいう僕も歌ってみたがきっかけでおかゆんを知った口である。ここ一年は特にこの「歌」方面に力を入れているらしく、オリジナル楽曲を多数収録したフルアルバムの発売、ソロライブの敢行とかなり精力的に活動していた。

 

 

 これは僕が初めて聴いたおかゆんの歌ってみたであるが、原曲を損なうことなく、そして原曲の雰囲気に食われ過ぎることもなく、自身の声質と原曲の魅力の最大公約数を的確に弾き出し、原曲の良さを120%引き出しながら楽曲を自分のものにしていることが見て取れる。本人曰く、声が当初から変わってしまったのでもうこの時の歌い方は出来ないそうだが、これ以外の歌ってみたも等しく魅力的だ。楽曲に真摯に寄り添いながらも、自分の個性を決して消さない、歌ってみたとして極めて理想的なクオリティ。ほれぼれする。

 ここまで良い歌をコンスタントに歌われると、どうしても芽生えてくる願望がある。

 

 

おかゆんに自分の好きな曲を歌ってもらいたい!」

 

 

 長くなったが今回の記事の本題はこれだ。

 というのもこの猫又おかゆ女史は、歌ってみた一本一本のクオリティが非常に高いのは前述のとおりだが、どうもその選曲にクセがあるというか何というか、流行りからちょっとずらしたような曲を、よく分からないタイミングで歌って投稿することが妙に多いのだ。

 ホロメン、というかにじさんじ含めて人気Vtuber(及び歌い手界隈全体の傾向として)はわりと歌ってみたとして投稿する曲が偏りがちで、その時々に人気になった、話題性のある曲を歌うことが非常に多い。具体的に曲名を挙げるとすれば「KING」「フォニイ」「神っぽいな」「ヴァンパイア」あたりだろうか。「ロウワー」「overdose」「トンデモワンダーズ」あたりも多い気がする。

 別にこれが悪いという話ではない。歌う曲のチョイスに当たって話題性は確かに大事だし、そのVtuberのファンもなるべく自分が知っている曲をカバーしてほしいものだろう。歌ってみた一本出すのにも、動画やらミックスやらインストやらをその筋のプロにお願いして、クオリティの高いものへとこだわると相当な費用がかかるため、どうせやるなら少しでも自分の知名度向上に繋がるものにしたい、というのも頷ける話ではある。再生数もろくにない、どこから見つけてきたかもわからないような曲に心血を注いで動画を作るのは、わりとリスキーなことなのだろう。

 おかゆんはどうにもこの「流行りに乗る」という部分に鈍感なのか、非常にマイペースに、自分の好きな曲を好きなように歌っている様に思える。そしてその選曲がやたら独特なのである。確かに有名ではあるが、なぜ? みたいな曲をよくカバーしている。こないだはとうとうクリープハイプのキケンナアソビをカバーしていた。同曲の弾き語り動画は数多く存在するものの、専用のインストまで用意してガチガチの歌ってみたとして投稿しているのは観測する限り彼女ぐらいである。

 

 

 しかしこれもいい。めっちゃいい。投稿されてからというものほとんど毎日聴いている。ヘビロテ中である。低音と高音のバランスが絶妙。あと、非常に、ハイ、セクシーです

 察するにおかゆんは、自分の好みな歌ならそれが流行ってようがいまいが関係なく歌うらしい。だったら僕が「これ歌ってくれ~~」って布教した曲を何かの間違いで気に入って、歌ってみたとして投稿する可能性も、まったくのゼロではないということである。布教のし甲斐があるってもんよ

 というわけで今回は僕がおかゆんに歌ってほしい曲を、独断と偏見、知名度、そしてなにより僕の”癖”の指針、その他諸々のバランスを考慮しながら9曲、ピックアップさせていただいた。もうマジで、これをおかゆんが歌ってくれたら俺が100万回聴く、聴くから歌ってくれ、絶対に合う、そういう切実な願いを込めた。なんで9曲なんて半端な数なのかは後でわかる

 

 というわけでここから曲紹介です よろしく

 

 

 

1.化け猫/キタニタツヤ

 

 

 これに関しては歌ってほしいというか、先陣を切ってほしいというか……

 まず単純にめっちゃおかゆんに合う。曲名、原曲のイラスト、魔性な歌詞、曲調のノリの良さ。僕は最近これをおかゆんが歌っているという妄想をしながらキタニ歌唱の原曲を何度もリピートしている。僕の中ではもう歌ってすでに投稿しているみたいな気分でいる。というか、これを書いていて「ああ、まだ歌ってないんだ……」と思った。なんとまだ歌ってないらしい。この世で一番おかゆんにふさわしい曲なのに。

 そしてこの曲、MVが個人製作のボカロMVを思わせる雰囲気の非常にシンプルなものである上に、なぜか概要欄にピアプロのリンクが貼ってあり、そこから公式のインスト音源に飛べるのだ。他のキタニタツヤの曲と比較しても、一昨年・昨年と歌ってみた界隈を風靡しているDECO*27のMANNEQUIN収録曲のように、聴いてもらうことと同じくらいに歌ってもらうことをかなり意識した楽曲だと感じる。

 1か月くらい前から歌い手がカバーしているものはちょくちょく観測されるようになったものの、未だに女性Vtuberでこの曲をカバーしている人はなかなか見られない。これはもうおかゆんが先陣きってムーブメントのきっかけになるしかねえよ。

 まあもうそんな建前はともかくなにより俺が聴きたい。おかゆんカバーの「化け猫」が恋しくて仕方ない。聴いてみたい。こないだ発売されたHolo*27収録の「エンドロール」でも低音エロティックなラップパートを聴かせてくれたので、この曲のDメロにも絶対に合うと確信している。人命がかかっていると思ってもろて、何卒。

 

 

2.Laundry/神山羊

 

 

 ハツコイソウ、ジャンキーナイトタウンオーケストラ、内臓ありますかと、前の年に発売されたアルバムに楽曲提供をしたボカロPの楽曲のカバーを続々と上げているので、そろそろ来てもいいだろと神山羊くんをチョイス。この方は「琥珀糖」を提供されたハイパーアーティストですね。個人的にアルバムで一番好きな曲がこの「琥珀糖」で、多分再生数でグラフ作ったらこの曲だけ突き抜ける。おかゆんの声とマッチし過ぎてる。今度出るMVも楽しみ

 この方はもともと「有機酸」という名義で色んなボカロ曲を作っており、その中でも「quiet room」や「カフネ」そして「krank」といった、独特の浮遊感やチップな音を細かく取り入れたサウンド、そして浮遊感と美メロを併せ持つミドルテンポの楽曲は本当におかゆんの声質に合うと信じてならない。だからアルバム発売前に提示された楽曲提供者の中に、神山羊くんの名前があった時は自分でも驚くくらいにテンションが上がった。実際その期待は裏切られることなく、「琥珀糖」は最高の一曲だった。

 有機酸名義、神山羊名義、どちらのカバーが来ても心底嬉しいが、一度神山羊くんのラジオに出演したりしている以上、線として濃そうなのはこっちかな~ということで、神山羊くんのYouTubeにMVが上がっている曲の中でも、特におかゆんの声に合いそうなこの「Laundry」を選んだ。これもゆるっとしてるのにしっかり横ノリで、聴きながら深夜徘徊をするとま~捗るのだ。この曲のおかゆんカバーがきたらもう、気持ちよすぎておうちに帰れなくなるかもしれない。それでも本望なので頼む

 

 

3.刹那の渦/須田景凪

 

 

 単純に須田景凪、もといバルーンの曲を歌ってほしい。それだけ。

 歌枠でシャルルを歌っているのを見かけたり、いつかの3Dライブでメーベルをカバーしていたりと、それらを見る限りかなりのシナジーを感じるので、いっそここら正式に、須田景凪の曲をカバーしてくれやしないだろうか、というアレです。声変わりしたとはいうものの元来の声質の低さもあってか、個人的におかゆんは女性ボーカル曲より男性ボーカル曲のが合う気がする。そっちのがエロい。

 というか今思ったんだけどホロメンってバルーン曲の歌ってみたをあんまり上げてないんだね。意外だった。おまるんとかとっくに歌ってそうだったのに。

 それで何がいいか、というのをいろいろ考えた結果、この「刹那の渦」がどうやらよさそうだぞ、という結論に至った。「パレイドリア」「アマドール」あとはナナヲアカリへの提供曲「事象と空想」あたりも捨てがたいが、ひそやかに、静かに、優雅に踊れるこの曲が一番合う気がする。とはいえどの曲でも最高なのでどれでもいい。須田景凪×猫又おかゆの圧倒的シナジー、奇跡のコラボレートをいつか見せてほしい。

 

 

4.BURU/4na

 

 

 嗜癖。それ以上でもそれ以下でもない。

 こういうシンプルかつノリノリのビートに、分かりやすくアガれるサビがくっついている音楽にはいつまで経っても弱い。Vaundyの「life hack」とかでもいいが、こっちの方が歌詞が若干官能的なのでおかゆんにはあってそうな気がする。

 昨年11月くらいに4naのアルバム「a beast」がリリースされ、僕も何度か繰り返し聴いていたのだが、彼は本当に耳が疲れない音楽を創るのが上手い。声質といい余計なことを主張しない音作りといい、力の抜き方、抜かせ方というのが非常に巧みに感じる。この「BURU」は収録曲の中でもとくにそれが顕著で、どこで、何をしているときに聴いても邪魔にならない不快にならないずっと聴いていたい。そう、おかゆんの歌ってみたと一緒である。

 おかゆんと4naの組み合わせは僕の作業効率を格段に向上させ、今流行りのQOLとかの改善に直結する、素晴らしき一作になるに違いない。僕の栄えある未来のためにぜひ検討して頂きたい。

 

 

5.雨は実刑/Sohbana

 

 

 最近人気急上昇中の新鋭ボカロP・Sohbana氏。何を隠そう僕も「ボーイズセイハロウ」で衝撃を受けてからずっとファンである。

 彼がMAISONdesおよびうる星やつらのアルバムに参加したのは本当にびっくりした。完全に売れっ子の道を歩みつつある。あと関係ないが京大生らしい。人気のボカロP、個人のスペックが高い奴があまりにも多すぎる問題。もしかして高学歴じゃないと売れないとかそういう感じか?

 これは確か前々回のボカコレの参加曲だったのだが、なんかもう大学生が作ってるとか考えると鬱になりそうなくらいにいい曲。AメロBメロサビサビ明けのラップ間奏ラスサビ後奏全部いい。主張の強いベースも軽やかなギターもそれらに負けず主旋律でがっつり主張するピアノも、そもそもの調声も言葉選びも、全部いい。

 これに関しては原曲がミクの声と合い過ぎて、下手なカバーじゃ曲に負けそうな気がするが、おれたちのおかゆんなら最高の着地点を提示してくれるに違いない。ばなそラップもクールに決めてくれるに違いない。そういう思い、そういう信頼の元、選ばせていただいた。あと前に梅雨ライブをやっていたこともあって、おかゆんは雨曲がめっちゃ似合う印象がある。そのわりにカバーした曲に「雨女!」みたいな感じの曲が未だにないので、そろそろどうでしょう。よろしくお願いいたします

 

 

6.ピカロ/空白ごっこ

 

 

 DECO*27提供のオリジナル曲「あっかんべ」を聴いた時に思ったのだが、今のおかゆんはわりとパンチの強いボーカル曲もカッコよく歌いこなしてしまうらしい。だったら、ということでこの曲をチョイス。単にパワーな曲調だけならAdoの楽曲とかでもいいと思うが、Adoの曲なんていくらでも他の人たちにカバーされているわけで、どうせならあまりカバーを見かけない空白ごっこの方を聴いてみたい。

 こちら空白ごっこというグループ、分からない人のために一応紹介しておくと、あのkoyori氏と針原翼氏がコンポーザーをやっているユニットである。電ポルPとはりーPって書いた方がいいだろうか。どちらも僕の学生時代に沢山の神曲を生み出していた伝説のボカロPである。配信ジャンキーピンクコヨーテの方ではない。

 彼ら二人と、フロントマンであるセツコ氏の三人で活動しているこのユニットだが、このセツコ氏の声が非常に良い。純粋に歌が上手い。パワフルかつ繊細な、どこまでも楽曲のグレードを高めるような非常に良いボーカルである。特に僕はこの「ピカロ」のような、カッコいい部類の曲を歌う彼女の声が好きであり、この「ピカロ」がリリースされた当初は狂ったようにリピートしていた記憶がある。

 以前のおかゆんの印象だったらこの曲が合うなんて考えもしなかっただろうが、「あっかんべ」のラスサビを聴いた今なら言える。合う。やろう

 

 

7.ファジーストラテジー/西憂花

 

 

 さっきからカッコよかったりオシャレだったりする曲ばかりで、一曲くらい可愛いのがあってもいいだろ、ってことでこちら、西憂花。この方も最近大きく注目されているボカロP兼シンガーソングライターである。ボーカリストとしての声質的にはナナヲアカリとかそっちの系統の、ハイトーンで芯のあるタイプと言える。

 声は非常に可愛い感じなのだが作る楽曲は、全体としてポップでありながらも音作りがソリッドでロックで疾走感のあるようなものが多い。ギターの主張が強い曲も多く、そういうの好きなんだろうな~というのをめちゃくちゃ感じられる。非常に好ましい趣味である。顔と声が良い女は等しくギターロックを好むべき。それは猫又おかゆにしても例外ではない。もっとおかゆんはギターロックを歌うべきだ

 この「ファジーストラテジー」は西憂花がこれまでに投稿した中でも、メインリフ、サビ共に個人的に非常に好みの楽曲ということで選ばせてもらった。なんでこんなに再生数が低いか疑問に思ってしまうくらいにいい曲である。この世本当にいいミュージシャンが多すぎる。

 こういう、ちゃんと評価されれば絶対に伸びる人を救い上げる手が、大手の人気Vtuberとかそういうインフルエンサーだったりすると夢がある話だなと思う。とはいえ西憂花はこないだ開催されたボカコレで結構評価されていたので、本格的に売れるのも時間の問題かもしれない。

 

 

8.じゃあ君の思想が死ねばいい/椎乃味醂

 

 

 爆裂的才能炸裂超人ボカロPこと、椎乃味醂氏の代表曲である。

 彼の音楽のすさまじさはとても常人には言葉で言い表せない。基本的にはロックとEDMの融合にポエトリーリーディングが加わった、渾然一体のカオスさ、そして圧倒的な語彙と痛烈な皮肉を有する歌詞だろうが、それをベースにやたら長い間奏や、何をどうやって鳴らしているか分からないサンプリング音が乗っかり、その圧倒的な情報量に殴られていつもよく分からなくなってしまう。新曲が出るたびに俺はこの人のことが何も分からんくなる。Twitterでwowakaの熱心なファンということだけは把握している。もうそれしか分からん。

 この曲を選んだ理由はもう本当にシンプルで「おかゆんのポエトリーリーディング曲が聴きたい、聴いてみたい」ただそれだけである。ただそれだけなので、極端な話別にアメリカ民謡研究会とかでもいいが、流石にベースは歌モノとした方がいいだろうということでこちらをチョイスした。あと間奏の「N/A」のところが、にゃにゃにゃになると思うとちょっと可愛いなって、

 難点はこの椎乃味醂、先述の通り非常に語彙が豊富であり、故に日常生活でまず目にすることの無い難解な熟語とかを歌詞に平気で用いるのだが、猫又おかゆ女史は大変残念なことにわりと深刻なレベルのアホなので、漢字だらけの歌詞だけ見てブラウザバックする可能性が否めないことである。おかゆんだけでなくホロメン全般に言えることだけど、なんであんなに漢字に弱いんだろう。歌詞は初音ミクWikiにて全部丁寧にルビがふってあるから、そっちを参考にしてくれれば、ワンチャン……

 

 

9.エレファント・イン・ザ・ミュージアム。/A4。

 

 

 というわけでラストはこちら「エレファント・イン・ザ・ミュージアム。」

 僕以外のおにぎりゃーの皆さんに質問なんですけど、いつもゆるゆるでふわふわでこの世で一番優しいと言っても過言ではない、包容力の化身であるおかゆんに、バカクソ冷たい、例えるなら冷めた弁当の端っこにある漬物の切れ端を見るような目で「んなわけねえだろバーカ。死ねよ」って言われたい、って思ったことありませんか? ありますよね? そう、あるんですよ

 この曲を歌ってもらえたらそれが叶えられる。選んだ理由なんてそれだけ

 

 

 

 おわりに

 

 というわけで今回、おかゆんに歌ってほしい曲をド偏見で全9曲、選出させていただいたが、いかがだっただろうか。さすがに好みが偏り過ぎている気がしないでもない。

 今回の記事で取り上げた楽曲は、どれも僕がこれまでアーティストごとたくさん聴きこんできた思い入れのある曲ばかりだ。おかゆんがそれを結果的に歌うことはなくとも、何かの間違いでこの記事を見て、僕の好きなアーティストを知って好んでくれるとか、そういう奇跡は決して0%ではないと思う。そういう微かな希望を込めてこの記事を書いた。

 とはいえおかゆんはどんな曲でも自分のものにしてしまうような気がしているし、実際これまでもいい意味で予想を裏切られ続けてきた。今の僕が思っても無いような曲をひょいと選んでは、これまでのように完璧なアプローチで自分のものにして、僕らに見せつけてくるのだろう。それをまたいつものように楽しみに待ちたい。

 

 あなたのゆるゆるな配信とすばらしき歌が自分の支えになっています。いつもありがとう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけ 選んだ曲数が9つである理由

 

 

 僕がビンゴで遊ぶためだよ

 なんかの間違いで3つくらい開かねえかな……

キタニタツヤ "Hugs Vol.5 Tour"@2023.3.12 名古屋DIAMOND HALL【w/ヒトリエ】 ライブレポート

 

 

 キタニタツヤの主催の対バンツアー「Hugs vol.5 tour」の名古屋DIAMOND HALL公演に行ってきました。この記事はそのライブレポートになります。

 

 前置きここまで、以下本文

 

 

 

 

 

 

 見た瞬間ノータイムで申し込んだ。当たった。

 わたくしが2022年、幾度もリピートしたアルバムランキング断トツの第1位がヒトリエの「PHARMACY」であり、最も聴いた時間が長かったアーティスト第1位がキタニタツヤである。昨年の僕はこの二組の音楽を聴いて毎日の地獄を乗り越えてきたといっても、まあそれはさすがに過言なのだが、とにかくこの二組の音楽を聴かない日は無かったように思う。本当にアホみたいにFlashback,Francescaしたし、狂ったように散らばった愛の吸い殻に舌打ちした。幾度も幾度もFlight simulatorしたし、何度だって君のいない春を歩いた。

 そんな二組の対バンである。名古屋で。なんで名古屋なんだよ福岡まで来いよ

 そう言いたい気持ちも「日曜開催」の情報だけでとりあえず吹き飛んだ。許した。とりあえず申し込もう。その後のことは当たってから考えよう。そう決めて、オフィシャル先行に自分のクレジットカードの情報を叩きこんだ。自分でも、いつか気付かず詐欺に遭ってもおかしくないフットワークだと思う。

 

 

 3月12日日曜日、早朝。ほぼ満席のプロペラ機(何気に人生初だった)でぎゅうぎゅうになりながら中部国際空港に到着。今でもなぜ名古屋空港に飛ばなかったのか不思議でならない。こんな感じで、今回の旅路は本当に事前リサーチをさぼり過ぎたせいで、これまでで一番行き当たりばったりになってしまった。それでも非常に楽しかったので良い街です名古屋

 初めての愛知県だというのにホテルも何も予約しておらず、最悪ネカフェに泊まればなんとかなるやろの精神でいたので、とりあえず何も知らずに名古屋までの特急「ミュースカイ」に乗車。全席指定席というアナウンスで焦り散らかして冷や汗をかきながらデッキで棒立ちするも、車内で車掌さんにお金を払い、事なきを得る。

 名古屋から地下鉄を使ってダイヤモンドホールのある栄に向かい、会場を確認してから栄近辺を散策することにする。途中でデパートのレストラン街みたいなところに入り、名古屋コーチンを使っているという触れ込みの親子丼を食べた。親子丼といい味噌カツといい、名物として食すものがことごとくかなり甘めの味付けで、ここで数年暮らしたらすぐ糖尿病になりそうだなと思った。それもあってか胡椒の効いた手羽先がとても美味しかった。あとマジでどうでもいいけど箸を忘れられる事件が旅行中2回ほど発生した。潜在的に名古屋人に嘗められるオーラが出ているとしか思えない。

 その後は時間まで、栄の書店をひたすら物色する不審者と化していた。とくにbibliomaniaというめちゃくちゃアングラな書店が品揃え・店内の雰囲気ともにあまりに最高だったので、ここ目的で名古屋に遊びに来てもいいなと思った。我が家の積読を片したら爆買いしたい。サイトも古き良きフラッシュ時代の産物って感じで最高。

 

 先行物販でTシャツを一枚買い、自分の整番と睨めっこしてだいたいここらへんだろ~くらいのところに並ぶ。製番がわりと近かったお兄さんと、踊り場近くの自販機前で「キタニ×ヒトリエは最高」「新生ヒトリエはゆーまお曲が至高」「結局追悼会のライブは超えられない」「なんでスマホドラえもん読んでるの?」みたいな話をした。ライブ開演までの待ち時間に誰かと話すのも、まったく初対面の方とここまで話が弾むのも初めてだったので印象的だった。連絡先は交換しなかった。チキンなので。お兄さんはイケメンでイケボでめちゃくちゃ優しい良い人だった。一生苦労することなく人生を全うしてほしい。

 都市部のビル街にあるライブハウス特有のやたら長すぎる階段を登らされ、ドリンク代600円を支払ってフロアへ。「今日は誰を見に来られましたか?」の質問には、数瞬の逡巡の後「ヒトリエ」と答えた。キタニタツヤが本日の主役なのは重々承知ではあるが、その対戦相手がヒトリエでは無かったらおそらくここまで来ていないので

 製番は真ん中くらいだったが、手持ちの荷物をロッカーに叩き込んで身軽になっていたことが幸いして、わりと前の方の下手側に陣取ることに成功。前回ヒトリエのライブを見た時は上手側だったので、今回は真正面からシノダ氏を拝むことにした。フロアには今回の”Hugs”の対バン相手である、indigo la Endヒトリエアジカンの音楽が入れ替わりながら流れ続けていた。

 

 

【先攻:ヒトリエ

 

「キタニのライブは撮影OKだけどゲストはダメだよ~」的なアナウンスが流れて、少ししてから客電が落ちる。歓声。ああそうか歓声解禁されたんだ、とここで気付く。本当に久しぶりに、客の声でライブハウスが揺れるような感覚を覚えた。数年前はこれが当たり前だったんだよなあ

 去年のライブで聴いたインターネットっぽい曲に合わせてゆーまお、イガラシ、シノダの順に入場。それぞれが楽器を構えて重厚な音を叩きならし、開幕。音が、背筋と肌に、ひりつくような、灼けつくような感覚。歓声も相まっていつも以上に、非現実にとばされたような心地になる。福岡で見ようと鹿児島で見ようと東京で見ようと、名古屋で見ようと、きっと北極で見ようとアフリカのサバンナで見ようと、ヒトリエはいつも、どこでも最初の一音から最高に、非現実的なまでにカッコいい。

 

シノダ「ヒトリエです、よろしくどうぞ! 挨拶代わりに3分29秒ください!」

 

 からのドラミング、からのピックスクラッチ、からの「哀願しても懇願しても、変わらないや もう」述べ口上100点、イントロ1000点、ステージング測定不能。これだけで、これだけでチケット代の価値がある。飛び跳ねる観客、うねるアンサンブル、異常なまでに息ぴったりの同期音源。馬鹿みたいな音圧と想像を絶するテクニックで、有無を言わさずにフロアを支配する"3分29秒"。完全に、主役を、喰いに来ている。Aメロで巻き起こるクラップも何も、耳障りにすら感じない。ここには、俺と、ヒトリエしかいないのだから

 そのままなだれ込むように"ゲノゲノゲ"へと続き、コミカルでやるせない歌詞とバキバキのロックンロールの融合、その新境地をまざまざと見せつけられる。相変わらずの間奏ソロパートの巧みさよ。今宵も俺の中の巨匠が顔を出してしまう。そしてそこからギターソロ、から追撃の”ハイゲイン”! このフロアに存在する人間の体力を、自分たちの持ち時間だけで奪いつくしてやる、キタニまで一滴の体力すら残させない、そういう意志すら感じる、三人の鬼気迫る暴力的なまでのパフォーマンス! 赤青の点滅を繰り返す照明と音圧で目眩をおこしかけた。あまりの熱力に窒息しそうだったし、実際僕が気付いていないだけで多分この後の転換中に人が救急車で運ばれている。

 

 手早く、しかし強烈に三曲を済ませて、転換。おそらくキタニ目当てで訪れたであろう観客のどよめきが聞こえる。勝手にほこらしくなってしまう。俺は、このバンド、何回も何回も見てきたんだぜ、そういう精神のマウントをとってしまう。嫌なファン

 

シノダ「改めましてヒトリエです! すげーな、こんなパンパンのダイヤモンドホール見たことない。キタニタツヤ凄すぎワロタ」

 

 今日のシノダさんは汗の話を全くしない代わりに同じ話題を何回かリピートするタイプのMCだった。「パンパンのダイヤモンドホール」「キタニに呑み代をおごってもらった」だいたい、この二つだけ。ゆるい。しかし見るごとに話し方や話の展開が明瞭になってて、どこまで成長するんだこのフロントマンは……みたいな気持ちになる。

 

シノダ「Hugs tour インターネット代表として呼ばれました、よろしくお願いします」

 

 から繋がるのがそのインターネット代表感から一番遠い位置にありそうな曲調の"風、花"なのが非常に良い。とはいえ今回も相変わらずジャズマスターによる演奏で、原曲のポップさを食い散らかしそうなほどにロックで最高に良かった。

 演奏後、シノダさんがギターを置きハンドマイクにに。お? SLEEPWALKか? と思ったらまさかのイントロが。腹のそこから響くベースと怪しげな同期音源。ここで予想外過ぎる”RIVER FOG,CHOCOLATE BUTTERFLY"である。何気にライブでは初対面で本当にびっくりした。マジでやるのか、と

 いや新生ヒトリエになってからは定番曲とまではいかずとも、それなりの頻度で演奏されている曲だというのはもちろん把握していたが、さすがに呼ばれる側の対バンでカップリング曲をやるとは夢にも思っていなかった。最高過ぎる。今日一のサプライズ

 丁寧に歌い上げられるサビの美メロにぶっ壊れたような間奏、アウトロの世界一泣けるギター。全部最高、完全無欠。この日のこの曲の演奏の音源を余すことなく俺の葬式で流してほしい。これを聴かせるためだけに俺の葬式に日本国民全員来てほしい。俺の遺体なんてどうでもいい、これを聴いたらすみやかに帰ってほしい

 そしてそのまま"Neon beauty"。ここまで聴いて思ったが、ボカロ畑のアーティストが対バン相手だとしても、無理にボカロPとしてのwowaka(現実逃避P)時代の曲をラッシュするようなセトリじゃなくてよかったなと思う。あくまで見せるのは自分たちの現在地。その潔さが良かった。まあボカロラッシュでもぎゃーぎゃー騒いだとは思うけど

 伸びやかに歌い上げて、転換。こんなにパンパンのダイヤモンドホールみたことない。キタニはすげえ男だ、飲み代も奢ってくれるし、みたいなこと言ってた。奢ってもらうシノダさん可愛くていい

 

シノダ「キタニタツヤは天才なんですけど、うち(ヒトリエ)にも、天才がいまして」

 

 ここで爆発的な歓声。わかる。

 

シノダ「そんな天才が作った曲を、今からやりたいと思います」

 

 からの高速ドラム、そのフレーズはもう耳馴染みしかない。

 

シノダ「そんなもんかダイヤモンドホール? そんなもんかダイヤモンドホール!? ……言いたいことがあるなら、トーキーダンスで踊りませんか」

 

 ハイ、勝ち! 問答無用で、俺達の勝ち! もうそんな気持ちだった。そらもう、踊るよ。脳も血液も沸騰するよ。歓声も解禁されてるんだからテンションのブレーキも壊したよ。おしまい、おしまいです ここが、この瞬間が我が人生の頂点といっても過言ではない そんな気持ちにさせてくる"トーキーダンス”あまりにも最高だった。センキューマイガール、センキューフォーEarth

 ギターのキメの度に「ヨッ」「アヨイショ」みたいな声入れるシノダさんが印象的だった。最高、最高です、これ以上はありません、とか思っていたら、曲終わりからほとんど間髪いれずに、あの曲の、あの部分を、吠えるように歌う声

 

シノダ「歌える奴は歌ってくれ、wowakaより、愛を込めて」

 

 そこから"アンノウン・マザーグース"は反則だろ……人の生の最高到達地点を、縁石でも跨ぐかのように数分で飛び越えるの本当にやめてほしい、やめないでほしい  追悼会以来の歓声ありアンノウン・マザーグースである。泣ける。本当に。

 今回の彼らのセトリで唯一のボカロ曲ということもあって、会場の熱量もこれまでとは比にならなかったような気がする。みんなで歌いました。僕はアンノウン・マザーグースだけは一緒に歌うと決めてるタイプのヒトリエ大好きおじさんなのでちゃんと声を出しました。去年鹿児島でヒトリエを見た時は、いつかこの曲を一緒に歌える日がくるといいな、なんて思ってたけど、意外と早かったし、それでもちゃんと感動した

 誰も知らない物語を口ずさみ終わった後、シノダさんがぼそりと「こんなに歌えると思わなかったな。まあでも、キタニタツヤ聴いてるようなやつが歌えないわけないか」と言ってたのすげえよかった。そらそうよ

 

シノダ「キタニタツヤにこんなパンパンのダイヤモンドホールに呼んでもらえて、飲み代も奢ってもらえて(2回目)、ヒトリエというバンドを誇りに思います。本気で歌います」

 

 からの"イメージ”。確実に”殺し”に来てるセットリストである。イガラシさんのサビでのコーラスが綺麗すぎて鳥肌が立った。曲展開が進むごとに少しずつ厚みを増していく伴奏と、それを最大限に爆発させる2サビ終わりのギターソロがあまりにも完璧で、自分がこの曲を、このバンドを好きでいることが勝手に誇らしくなった。

 

 曲が終わり、次が最後の曲です、と一言。「え~」の声を上げる観客に苦笑しながら「しょうがねえだろ」と返すシノダさん。

 

シノダ「しょうがねえだろ、キタニタツヤが待ってるからよ、ハハハ……ハァ?」

 

 一挙一動一言一言がいちいちおもろい。

 

シノダ「今我々もワンマンやってて、4月13日に名古屋クラブクアトロでやります。これ(本日のダイヤモンドホール)くらいパンパンにしてくれ」 

 

シノダ「最後に、ヒトリエより愛を込めて! ステレオジュブナイル!」

 

  いや~最高ですありがとうございます、本当に。

 というわけでラストは"ステレオジュブナイル"! こんなん聴いてくれんのお前だけ、のその「お前」が、ライブハウスで聴くといつもたくさんいるの、本当に気持ちいい。世界一カラフルな照明が似合う曲と言っても過言ではない。ヒトリエみたいな音楽が好きで日々バンドを追っている僕みたいなリスナーからすれば、天啓みたいな曲である。末永く愛されてほしい。

 俺たちが愛するバンドは大器晩成のうわさのスーパーミュージシャンにも匹敵、凌駕するスーパーロックバンドということを知らしめて無事終了。相変わらず最高のステージでした!

 

 

 

【後攻:キタニタツヤ】

 

 開演前にスマホを取り出す観客が多かった。撮影・録音OKなので当たり前ではあるが、そもそもそういうライブが初めてなので結構新鮮だった。僕自身は撮影するかどうか結構迷ったが、今回は見送りにした。集中できる気がしなかったので。

 音出し、事前の確認を終え、ほどなくして客電が落ちる。楽器隊の面々から入場して、最後にキタニ本人が入場。ツアーグッズの緑色のロングTシャツを着ていた。特に礼をすることも笑みを見せることもなく、沈黙。微かにノイズのような音が聞こえたかと思うと、重たいギターの音からまずは”聖者の行進”!

 キタニをライブで見るのは初めてだったがめちゃくちゃ歌が上手かった。あと客を煽動するのが馬鹿みたいに巧み。シンガロンさせる部分とさせない部分を上手いこと使い分け、客に適度に参加を促しつつ、魅せるところは自分で魅せる。長髪とピンボーカル特有の佇まいもあって、ロックスターというよりは"教祖"のような印象を受けた。僕はライブにおける一体感を強要されるのが苦手なのだが、キタニのそれはそんなに拒否反応が生じなかったのが不思議だった。どうやらそういう煽り方にも、本能的に不快なものとそうじゃないものがあるらしい。あたらしい発見

 そのまま去年死ぬほど聴いた前奏から繋がるは”PINK”。大好きな曲なのでめちゃくちゃ嬉しかった。これに関しては何も言うことない。最高に良かった。舌打ちもえっちだったよ。下手に間奏で観客に呼び掛けたりとか、そういうのが無くて良かった。カッコいいところはただただカッコいいだけだった。

 そして間髪入れずに”永遠”。EPのカップリング? でいいのかな? これもBLEACHの千年血戦編にめちゃくちゃマッチする壮大な楽曲。間奏のWoooの部分を歌った。  

 Rapport、タナトフォビア、スカーとBLEACHの世界観に完璧に合致する曲を3曲も作りながら、まだこんな曲の引き出しがあるのはさすがに天才と言わざるを得ない。引き出しがたくさんあるのか引出しの一個一個が尋常ではなくデカいのか定かではないが、ともかく今度からキタニタツヤのことは引き出しマンと呼ぼう

 

キタニ「お前らの声聴きたいわ」

 

 そんな引き出しマンの4曲目は代表曲”悪魔の踊り方”。結構(4割くらい?)客側が歌った気がする。ステージを右に左にと動き回るキタニが差し出すマイクに向かって、強い言葉を飛ばす観客。キタニの視点からは弱く見えたのかしら

 ライブハウスで聴く悪魔の踊り方による煽動の効果は凄まじく、いくらヒトリエが会場のボルテージを高めようとやはり今日の主役は彼、と言わんばかりの説得力があった。

 そして少し間を開けて今度は"パノプティコン"! これもミニアルバムでめちゃくちゃリピートした曲なので素直に嬉しかった。メロディに対する歌詞の乗っかり方とサビのリズムが好きすぎる。まったく救いようのない歌詞なのに満面の笑みで踊ってしまったことに罪の意識すら覚えたが、そんなの関係ねえと畳み掛けるように"化け猫"! 最近めちゃくちゃリピートしている曲だったので、これもまた僥倖だった。

 2サビ後、一回落して軽いラップパートに入る構成本当に、現代ポップスの旨味の上澄みだけを抽出しました、みたいな秀逸さを感じるんだけど、なんでこんなに騒がれてないのかが謎なんだよな これマジで好き。生で聴くとエロさ10割マシで余計にグッドだった。俺が女だったらもうダメになってる。出待ちとかしてる。

 

 立て続けに6曲を披露してようやくまともなMC。「RIVER FOG,CHOCOLATE BUTTERFLYの時の客の反応が良くて、こいつらヒトリエ詳しいな、古参マウント取れねえ」みたいな話してた。生放送でも思うがキタニは話がおもろい。

 

キタニ「シノダさん名古屋長いけど言っていいの? 名古屋マジ客来ねえんだよ!」

 

 これめっちゃ笑ったけど普通にびっくりした。メロコアの国だからか? もう名古屋なんか見捨ててずっと福岡に来てほしい。福岡でもっかいやろうこの日の対バン。俺がZeppもサンパレスもマリンメッセも全部抑えとくから。頼むわ

 

キタニ「まあヒトリエHugs Vol.5 Tourのインターネット代表と言うことで、確かに我々ニコニコ動画インターネット老人会ですけれども! 今日はみんな、キタニタツヤのライブ、ってだけじゃなくて、キタニタツヤとヒトリエの対バンだから来てくれたんだよね! 名古屋を滅茶苦茶にするためにヒトリエを呼びました、よろしくお願いします!」

 

 そんな最高のMCから続くは"Ghost!? (Bad Mood Junkie ver.)"。原曲のGhost⁉︎はサックスやピアノの音が特徴的だが、こちらはバンドサウンドが強めなスタイルとなっている。これは個人の好みだが個人的にはBad Mood Junkieバージョンの方が好き。よりロック色が強く感じられるのがたまらない。通常版Ghost⁉︎はどちらかと言うとホールとかアリーナとかで聴いてみたい感じはする。

 伸びやかにラストを歌い終えた後、ベースを抱えるキタニ、をよそに聴き馴染みの或るビートが鳴らされる。BIPOLAR収録曲が多いもんだと思っていたからまったくノーマークだったが、考えてみればインターネット老人会にここまで相応しい曲もあるまい、ということでキラーチューン”芥の部屋は錆色に沈む”! もともとこんにちは谷田さん名義でのリリースが初出であるこの曲、この曲がニコニコ動画に投稿されたころに彼をちゃんと認知したかった……バキバキのオルタナロックが肌に染み渡る 高い化粧水のように

 2サビ明けのキタニ自身によるベースソロがヤバすぎた。誇張抜きで会場が揺れてた。地震学に詳しくないからなんとも言えないが、マグニチュード換算で8万くらいはあったと思われる。めちゃくちゃテンションが上がった。

 

キタニ「みんなで歌いたいと思って作った曲です」

 

 そして、このオルタナの熱を受け継いだままのフロアにもたらす名バラード、令和のこの時代において、結婚式で尊いリア充の男の側が歌うべき曲ナンバーワンソングとして(俺の中で)名高い"プラネテス"! やはりこれきっかけで人気がさらに加速したみたいなところあるんだろうか。何も言うことなくめちゃくちゃいい曲なのでコメントに困る。「あのムーンリバー渡って~」のところをみんなで歌った。

 そのバラードの流れを崩すことなく”ちはる”。単純に季節にぴったりだし、薄桃色の照明が美しくも荘厳な曲調に合ってて、全フレームマジで"絵画"だった。チェンソーマンが、鬼滅が、ぼっちざろっくが、神作画だなんだと騒いでおりますがね、本当の神作画は3月12日の名古屋ダイヤモンドホールなんで。マジで。全員エアプ

 そしてその後ほとんど間を開けず、今度はギターを構えたかと思ったら、あのどことなくサイレンっぽさのあるイントロから"夜警"が始まる。ギターもベースも出来て曲も作れて編曲もお手の物平成生まれとか、マジでそこにいるだけで僕の存在価値を全否定している気がしてならない。ハイスぺ過ぎて腹立つ。でもカッコいい。くやしい。

 アルバムで聴くと他の曲の威力が強すぎてちょっと食われがちかな~とか思ってたけどマジでカッコよかった。ライブ版夜警最高。今度からライブ版夜警を聴いたことがある男マウントをとっていこうかな

 そしてそして上がってテンションそのままに今度は”トリガーハッピー”! ここまで聴いてなんとなくみんなで歌えるような曲を多くセトリに盛り込んだのかな、とか思った。声出し解禁されたんだったらまあそりゃ、そっちのが楽しい。どの曲も聴きごたえ満点のキラーチューン揃いなので、ゆったりしてようがバキバキだろうがどっちにせよ楽しい。しっかりとシンガロンまでやって終了。そしてピンボーカルで歌っていたキタニがまたギターを構えて

 

キタニ「次で最後です。アンコールはありません。ありがとうございました

 

 さらっとした前置きから劈くようなギターストローク、なだれ込む本日の大トリは"スカー"! 今のキタニによるギターロックの最高到達点のような一曲、テンションが上がらないわけない。というかライブが始まってから、テンションが「下がる」瞬間がない。青天井ぶち抜き、大気圏突破、オーバーフロー、俺達卍最強卍 2時間ずっとそういう感じ 人のテンションに、上限はない 人は皆、スポンジボブのハッピーセットのCMに出てた子供みたいな感情になり得る。俺はあの瞬間、スポンジボブに魅入られた子供そのものだった。実質キタニはハッピーセットのふろく

 間奏のちょっとしたギターをキタニが弾いてるのみて「カッケエ~~~」って声が出た。最後の秋好氏によるギターソロも鬼のようなカッコよさであった。この世のカッコいいがあの日あの瞬間、栄町のライブハウスに凝縮され、そして結実していた。世界はああいうところから始まるんだな、と思った。

 

 叩きつけるようにアウトロを弾き終え、小さく「またね」と言って去っていくキタニのカッコよさよ。そのまま客電が点灯し、まばらに観客がフロアの外に出ていく。とんでもねえライブを観たなあと若干放心状態だったが、スタッフに促される形で外に出た。

 両バンド共に無理にwowakaの話題を出すことが無かったのが本当に良かった。ただ純粋に力と力の、カッコよさと泥臭さとソリッドさのぶつかり合いを見せつけられた、その清々しさが心地よかった。変に湿っぽくならず、頭空っぽにして楽しめた。

 自分の信じたバンドは今日も今日とて最高にカッコよかったし、自分がここ何年かでハマりにハマったアーティストも自分の想像を優に超えたカッコよさを見せつけてくれた。本当に楽しい対バンでした。また相まみえることを、そして僕がその現場を目撃できることを心から願っています。

 

 

タニタツヤ "Hugs Vol.5 Tour"@2023.3.12 名古屋DIAMOND HALL【w/ヒトリエ

セットリスト

 

ヒトリエ

01.3分29秒

02.ゲノゲノゲ

03.ハイゲイン

04.風、花

05.RIVER FOG,CHOCOLATE BUTTERFLY

06.Neon beauty

07.トーキーダンス

08.アンノウン・マザーグース

09.イメージ

10.ステレオジュブナイル

 

タニタツヤ

01.聖者の行進

02.PINK

03.永遠

04.悪魔の踊り方

05.パノプティコン

06.化け猫

07.Ghost!? (Bad Mood Junkie ver.)

08.芥の部屋は錆色に沈む

09.プラネテス

10.ちはる

11.夜警

12.トリガーハッピー

13.スカー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけ

 終演後のロッカー前にて

 

 

観客「ヒトリエ正直一曲も分からなかったけどさあ……」

俺様「😠😠😠」

観客「アンノウン・マザーグースえぐかったわ!!!」

俺様「😊😊😊」

 

 

 楽しかったです名古屋 また来ます

 

 

ライブすっぽかし事件

 

 

 この記事は筆者、当ブログ「愛の座敷牢」管理人であるsikimi(@w3810t)が、2022年11月2日 熊本drum B-9で行われたUNISON SQUARE GARDENのワンマンライブ「fiesta in chaos」を日程を勘違いしてすっぽかすという、世紀のやらかし事件に関しての詳細とその顛末についてまとめた記事である。

 当事件から早4か月あまりが経過し、一時のテンションで削除したTwitterアカウントも戻して、流石に当時より心の傷は癒えたと感じている。とはいえ未だに「fiesta in chaos」「fic」の文字列をTwitterで見かけるたびに舌打ちしながらTwitterアプリを閉じるし(創作アカウントを作った理由の3割くらいがこれ)、未だに「放課後マリアージュ」を聞けない。というかそもそも「カオスが極まる」のCDをまだ買えていないあたり、その傷は非常に深く、根強い。下唇を噛み切りすぎてもう下唇の予備がない。

 このままだと4月発売の新アルバム「Ninth Peel」の発売にも支障をきたしてしまいそうなので、いい加減ここいらでもう清算したいのである。なんとこのアルバムの初回盤に、件のツアーのライブ映像(ライブ会場は異なる。当たり前である)が付くらしい。超高度なあてつけか? もう本当に余計な事しかしない。

 この「Ninth Peel」の初回限定盤発売までに去年のワースト思い出ランキング第一位であるこの事件の禊を済ませ、カラッと晴れやかな気持ちでアルバム発売を迎えよう

 

 

 ここまで読んだのならちょっと付き合え 以下本文

 

 

 

 

 

 直接的なミスの原因はライブの1週間前、つまり10月の最終週までさかのぼる。

 わたくしは普段、日銭を稼ぐためにクソみたいな製品を作る会社、略してクソを作る会社にて、作ったクソが優れたクソか出来損ないのクソかを判断する業務をこなしているのだが、その担当業務の中に「部署の内の出勤計画作成」という業務がある。

 文字通り所属する部署の出勤計画、つまり部署内の人間がどんなシフトで回っていくつ有休を取り、どれくらいの残業を行うかを、次月の生産状況や年間計画で割り振られた時間外業務枠とにらめっこしながら決定し、上司に提出して現場のまったく見えていない脳みそお花畑なダメ出しをくらい、そこを突破して今度は上司の上司、a.k.aクソ山の大将から現実の見えていない脳みそ豚舎以下のダメ出しをされる、そういう無情な業務である。

 なんで職場で一番下っ端のわたくしが、自分より二回りも年上の先輩方のシフトや有休計画を管理しているのかって? Excelをそれなりに使えるのが俺だけだからだよ SUM関数が分かるだけで異世界転生したオタクくんのごとき無双が可能な職場、興味ある方はぜひ

 

 上司二人が重箱の隅を楊枝でほじくる資格の有段者なので、どう計画を組もうと何かしら文句を突きつけられ、人格とプライドをそこはかとなく殴られるだけの損しかない業務なのだが、唯一といっていい利点がある。自身の有休の日程を自由に決められるところである。この利点を最大限に使って、わたくしは自分の行きたいライブのある日の有休をゴリ押しで通し、当日の職場がどれだけの惨状になっていようとヘッドフォンで耳を塞いで高速バスに乗り込むのだ。去年の10月末も、たしかそんなんだったと回顧する。

 最初に結論を言うと、有休を取る日付を間違えたのである。11月2日に取るべきだった有休を、3日に取った。ライブが3日だと思い込んで、3日に有休を取った。その後確認もしなかった。もう、それだけ。それだけである。

 ええええ分かりますとも。確認しろ、そういいたい気持ちも分かる。現に僕もタイムマシンがあったら過去の自分に「お前は不注意がきっかけでTwitterアカウントを消すことになる」と教えたい。ついでに2,3発殴りたい。でもまあ、その気持ちをちょっと抑えてこれを見てほしい。昨年11月のカレンダーである。

 

 

 そりゃ祝日に来ると思いません?

 逆になんで祝日を抑えてないんだよ。そっちの方がおかしいまである。

 だいたい「fiesta in chaos」の情報解禁、およびファンクラブ先行のチケット販売が行われたのが8月で、そっから3か月も期間が空いたらだいたい11月のはじめ辺り、くらいの記憶しかないわけで、そんなふわふわとした記憶のままこのカレンダーを見たらそりゃ祝日に来ると思うじゃないですか。勘違い、するじゃないですか。しない? それはお前が出来過ぎてるだけです。ちゃんと確認しろ? あの、ぐうの音も出ない正論で殴るのやめてもらっていいですかね ロジハラですよ

 ともかく、ご都合主義の世界で生きているわたくしはこのカレンダーを見て、ああユニゾンは3日に来るんだな、じゃあ3日に有休を取ればいいんだな、こうなってしまったわけだ。あとこれは余談ですが、残念なことに弊社は祝日は普通に出勤です。代わりに盆と正月とゴールデンウィークのお休みが長い。なので単純に、貴重な有給休暇を一日無駄にしたことになる。

 

 

 で、この致命的過ぎるミスに気付かないまま迎えた11月3日、くもり。

 

 社会に適合しすぎた社会不適合者であるわたくしは、有休を取ろうが取るまいが起床時間が全く変わらない。というか平日用のアラームを休日だろうと億劫がってオフにしない。6時にけたたましく鳴り響くアラームに内心中指を立てながら目を覚まし、顔を洗い、今日が有休であることを覚醒しつつある頭で再確認する。簡単な朝食を済ませ、いつものようにTwitterを眺めた。

 余談だが僕は普段から「UNISON SQUARE GARDEN」および「ユニゾン」をワードごとミュートしている。セットリストのネタバレ関係なく、である。fun time HOLIDAY 8が延期になったあたりからだったと思う。それによる情報の遮断もライブすっぽかしに災いした気がしないでもないが、普段からろくにタイムラインを見ていないのであまり関係ない気もする。わたくしはわたくしのツイートが一番好きなSNS限定ナルシストなので、Twitterの主な使い方は「自分のツイートを自分でワード検索かけてニヤニヤすること」である。これからはもう、アホと呼んでほしい

 とりあえず早起きしても特にやることもなく、三文くらいの徳なら寝てた方がマシだというのは本当だな、とか考えながら、昼過ぎまで好きなVtuberの配信をスマホで垂れ流しつつスプラトゥーン3を延々とプレイしていた。働き盛り成人男性としては最悪なコンボである。酒と煙草キメながら汚え部屋にデリヘル呼ぶくらい最悪

 たしかこのダラダラしてる時に暇見てライブチケットをダウンロードしたと思うが、これが本当に厄介なことにライブチケットってライブが終わった1日後でも問題なくダウンロード出来るんですよ。これマジでもう本当に悪質。まあその、ライブが近いからさっさとチケットをダウンロードしろ、っていうメールにはちゃんとライブの日付が書いてあるんですけどね 何なら電子チケットにもちゃんと日付はある

 もうこの「確認」という行為を怠るのは僕の本当に、本当に悪いところで、どうやったらこの肝心なところで手を抜いてしまう性根って治るんですかね。物事を先延ばしにする、もしくは指差し確認を怠るなどすると、脊髄に強めの電撃が流れるみたいなハンデを背負うとかしないと無理かもしれない。

 

 そうして昼が過ぎた頃くらいに簡単に身支度を済ませ、最寄りの駅から市街地へと向かう。熊本DRUM B-9という箱は比較的いい場所に建っており、アーケード街から路地一つ分しか離れておらず、カフェに古本屋に、下通り側に行けばゲーセンに漫画喫茶にボウリング場にと時間つぶしに全く困らない。何から何まで福岡に負けていると話題のわが県であるが、ことライブ前の時間つぶしだけは福岡とかいう街には負けない気がする。親不孝通り、およびマリンメッセ近辺が何も無さすぎるのが悪い

 DRUM B-9のライブ前の時間つぶしは、決まって近辺の古書店を物色して回るのがお決まりになっており(いい感じの古書店が3つくらいあるぞ!)その日もいつものように掘り出し物がないかと100円均一棚とにらめっこしていたのだが、ここで道行く人の服を見て、なんとなく違和感に気付き始める。

 

「なんかHEY-SMITHのバンT着てる人多くね……?」

 

(当時のDRUMB-9のライブ日程)

 

 さすがにここで気付けよ、と今でも思う。なんならその足でB-9の本日公演の張り紙を見に行けばその場で崩れ落ちて終わった話だろうに。ただこの時の僕はライブ前特有のウキウキによるくそ麻酔が脳に掛かっていたので、開演時刻が少しズレているのを見て「ヘイスミスのライブが終った後にユニゾンのライブがあるんだな! 大変だなB-9も」とか、そんなトチ狂った結論で勝手に納得していた。大変なのはお前の脳みそだよバカ

 自分以外にユニゾンのバンTを着ている人間は誰もいないのに、自分が間違っているとは欠片も思わない、あまりにもゆるぎない謎の自信。クソを作る会社で毎日、つつけばほころびがとめどなく溢れるようないい加減な業務を何気ない顔で行う末にたどり着いた、自分だけは間違わない、自分だけは大丈夫と自分自身を納得させる、正常性バイアスの極致。この年齢で、致命的な方向へと、強烈に、悟っている。何の能力も、危機感も、根拠もないのに、自分は大丈夫だと、澄んだ瞳で間違っている。こいつはなんなんだ? なんでここにいる? 何故呑気な顔でサンマルクカフェでコーヒーを飲んでいる? この街の、お前以外のユニゾンファンは、昨日すでに狂乱のさなかにいたというのに 文字通り後の祭りだというのに

 その足で漫画喫茶に入って漫画を読み、開場までの時間をつぶした。確か「ドクロ」を読んだ気がする。昔のヤンキー漫画のスピンオフである。

 

 

 基本的に何も考えていないし、そもそも思考という行為が苦手なので、とにかく時間をつぶしたいときは大抵ヤンキー漫画を読んでいる。ヤンキー漫画はいい。展開がワンパターンな上にアクションは派手で血みどろなので。治安の悪い水戸黄門みたいなノリで読める

 

 開場時間前になったのでライブハウスに移動を始める。この時点でようやくユニゾンファンが会場近くにいないことに疑問を抱き始める。昼中に見たヘイスミスのバンTを着た、有毒のカエルのような髪色の女性群が脳裏を過ぎる。

 いやいや、そんなはずはない、自分の身の回りにユニゾンのファンがいないように、彼らのファンは日ごろ忍者のように身を潜めているのだ、そんな、ライブ日程を間違えるはずがない、今頃B-9の前にはたくさんの、たくさんの"同志"と書いてユニゾンファンと読む、そんなひとたちがたくさんいて、俺は今日ここでうわさの放課後マリアージュと初対面を済ませるつもりで――――

 

 

 

 

 

 

「すいませんまだチケットありますか~?」

「いや流石にもうないですよ! なんてったってヘイスミの15周年ですからね!」

 

 

 

 

 あれ

 まじで、今日、何日?

 

 

 

 

 

 

 ここでようやく、自分がとんでもないミスをやらかしたことに気付いた

 本当に、全身から血の気が引いた 頭がまっしろになった

 

 

 

 それから僕はほとんど放心状態で家に帰り、普通にベッドにぶっ倒れて延々と呪詛を連ねていたが、何だかんだ空腹感を覚えて近所のパスタ屋に飯を食いに行った。いくつかの「やらかした」ツイートとともに。

 そのつぎの日、仕事の休憩中にTwitterで熊本公演の感想を見て、シンプルに殺意のようなものが湧いてしまったことがきっかけで、潮時を感じて樒(@w3810t)のTwitterアカウントを消した。アプリも削除した。

 実はその当時いろいろあって「Twitterなんか窮屈になったからいっそやめてぇ~~~~」と思っていた時期だったので、ほんの少しだけだが、ちょうどいいかなという心境はあった。比較的よく交流するフォロワーとはnoteで繋がってるからまあ別にいいだろ、という短絡的な考えもあった。今は反省している。あと、本当はnoteも全記事非公開にするつもりだったのだが、noteが一括で全記事非公開にするみたいなことが出来なくて、当時たしか80記事くらいあった自分の記事をすべて手動で非公開にするのがはてしなく面倒で、やめた。そのものぐさ精神のおかげで文章企画のおさそいに関する連絡を受けられたのだから変な話である。

 Twitterを閉じていた時期はずっとポケモンをやったりスプラトゥーン3のフェスをやったりしていた。精神状態がめちゃくちゃな状態でナワバリマッチをすると信じられないくらい負けることを痛感した。ライブをすっぽかした後のメンタルで対人ゲームはやめた方がいい。余計に気が滅入る。

 今となってはさすがに傷も癒えてきて「やっちまったな~」の程度の笑い話になってはいるものの、これから先もUNISON SQUARE GARDENのファンである以上「fiesta in chaos」というライブについてはずっと負い目に感じると思うし、アカウントを一度消した事実も消えないし、UNISON SQUARE GARDENというバンドそのものにも嫌な思い出が出来てしまったことは否めない。

 なにより、自分がとんでもないポカミスで日程を勘違いして、貴重なチケット一枚を無駄にしてしまったことで、行きたかったけどチケットが外れてしまった方の気持ちを結果的に踏みにじってしまったことになる。それに関しては本当に申し訳なく思う。人気バンドの現地のライブにある程度の倍率を乗り越えて赴くというのは、そういう観点で言えば単純なチケット代以上の価値と、意味があることなんだなと改めて思い知った。

 まあ一回くらい痛い目見ないと分からなかったんだなと思う。勉強代です。高すぎるけど。

 

 

 これから9枚目のアルバムである「NInth peel」が発売されて、また彼らはライブツアーをおっぱじめるわけだが、痛い目見た僕だから言える。マジで他人事じゃない。自分の行くライブの日程はちゃんと、念入りに確認しよう

 もうこんなアホが日本国内に何人いるのか知らないが、悪いことは言わないのでTwitterのbioか所在地か何かに次のライブ予定を書いたり、名前のうしろに「@○/○【バンド名】(会場名)」みたいな感じにしたりした方がいい。陽キャっぽくてなんか肌に合わねえ、なんか気に入らねえ、なんかダセえのは分かるがライブすっぽかす方が100倍ダセえんだから耐えられるだろ わがまま言うな

 

 

 ああ僕? 僕はもうあれですよ、あのよく、忘れ物しないように手のひらとか手の甲ににサインペンで書くやつあるじゃないですか。あれの進化版やってるんで。ええ。左手に行くライブ日程のタトゥーをいれてます。次はヒトリエ、4/28です。よろしく

祝!愛の座敷牢100000記事突破記念 愛の座敷牢ベストセレクション

 いつもご愛読ありがとうございます。

 

 いきなりこれまで欠片ほども見せたことの無い感謝の気持ちで始まる記事、怪しさ一番搾り以外の何物でもないが、いつもと異なり今回は至って平和な記事である。

 先日投稿した「MCでスベるバンドマンのためにMC専門学校を開校したい」で、この「愛の座敷牢」はなんと、投稿数100,000記事を突破しました。本当にありがとうございます。嬉しくて涙が止まりません。嬉しくて涙が止まりませんって初めて言いました

 2019年に記念すべき1記事目を投稿してからもう4年。一年間の間におおよそ25000記事のペースで投稿するわたくし及びこの「愛の座敷牢」は、SNS上で「TL汚染」「寝耳にゴリラ」「低学歴のChat GPT」「ミュート状態で聴くMIDNIGHT JUNGLE」と絶えることの無い称賛を浴び、史上最底辺のインタネットミームとして、電子空間の下水道に名を馳せつつある存在となりました。絶えず理論武装で突撃をかます高学歴アンチの怒涛の罵詈雑言に日々心を擦り切れさせそうになりながらも、ここまで続けていられるのはひとえにブログを読んでくださる皆様のお陰です。心から感謝申し上げます。

 それにしても10万記事である。いつかこのブログで「面白いからといって読んだことの無い人に、100巻くらいあるワンピースを薦めるのは気が引ける」と書いたことがあったが、この言葉はこのブログにも適用されるのではないか、ということを最近になって心配し始めた。今Twitter上に無数に存在するこのブログへのリンクから、何らかの興味を持ってこのブログを閲覧した方が、読者として定着することは、もう今となってはあまりにもハードルが高いことになっているのではないか。

 この圧倒的な文量、記事が記事を呼びさらにその奥地へといざなうこの無限回郎は、そのボリュームだけで言えばワンピースにすら匹敵する。ということは俺は尾田栄一郎といってもそれはさすがに過言 このブログはワンピースなどではなく、例えるならコンビニの書籍コーナーによく置いてある、所在不明のおバカ画像を適当に集めただけの極厚ペーパーバック本に近い。この世の出版物の中でも純粋な「紙の無駄」と評されるタイプの、あの黄色い背表紙の本

 というわけで今回の記事である。今回は記事数10万記念として、これまで書いてきた記事の中で思い入れの強い記事を、厳選に厳選、選りすぐりに選りすぐって5記事紹介したいと思う。これさえ読めば昨日このブログを知った君も今日から立派な愛の座敷牢フリークである。受講さえすれば取れるタイプの資格。愛の座敷牢フリークになったことを何にも知らないTLの人たちに自慢して煙たがられたりしよう! 

 前置きここまで、以下本文

 

 

1.Catcher In The Spyに捧ぐ

 

 記念すべき1記事目。すべてはこの記事から始まった。いつか書いたと思うが、もとはフォロワーとの空リプが切っ掛けである。ここから99999記事を連ねたことを考えると、ずいぶん遠くまで来たものだと思う。

 せっかくブログを開設したのにこの記事だけだと寂しいからもうちょっと書くか、が4年も続くと流石にこうなる。完全に過去記事に埋もれている。歴史、というものの途方の無さを感じさせる

 とにかくシンプルにこのCatcher In The Spyというアルバムに対する愛を詰め込んだものなので、特筆して語ることも無いが、流石に今読み返すと青臭くて読めたもんじゃない。が、この時の自分がめちゃくちゃ頭を捻って文字を紡いでいたのは誰よりも知っているので、まあ頑張ってるなとも思う。熱量のこもったいい記事です。

 未だにこの記事から知ってもらえることがあってビビる。というか未だに宣伝ツイートで、この記事の宣伝をしたツイートのいいね数を超えたことがない。俺はこの4年間何をやってたんだ 精進します

 

 

 

2.突然の闖入

 

 51記事目。今現在も細々と続いているわたくしの自己満足「愛の座敷牢SF」シリーズ化のきっかけとなった記事である。ちなみにここでいうSFは決して「サイエンス・フィクションではない。特に定義は無いが、強いて言うなら「すべて・フィクション」である。愛の座敷牢は9割くらい嘘しか書いてない。カスのネットニュースと一緒

 普段から「形の無い娯楽である音楽を語ることはこの世で最も不毛な、無駄な行為である」と言って憚らない僕ではあるが、この記事はこの価値観から発展した「存在すらしない音楽を語る行為は、その不毛さすらも上回る、この世で最も無駄で、故に全てのしがらみから解き放たれた、新時代のカルチャーとなるのではないか」という仮説の下に書かれた、存在しないバンドの、存在しないディスクレビュー集である。

 バンド名、楽曲、アルバム名、その全てに付随する事柄のすべてが僕の創作であり、故にこの記事から得ることの出来る生産性のある情報は1つも無いと言っていい。一言一句違わずすべてが創作であり、すべてが虚構である。

 僕自身の音楽の素養がたかが知れているので、その虚構に地に足のついた強度が有るかと問われればそこはNoと評せざるを得ないが、それにしても書くのがとても楽しい記事であった。バンド名とそのアルバム名を考える時間が至福だった。

 何にでも意味を求められ、コスパを最優先し、徹底的に無駄を嫌うこの世の中ではあるが、無駄というのはあくまで主観的なものであって明確な基準が設けられているわけではなく、何が無駄にあたるかは人による。本当に効率的な生き方をするのであれば音楽を聴く行為は勿論無駄だし、そもそも娯楽を嗜むというその思考そのものが無駄であり、もっと突き詰めれば究極的は生まれてから死ぬまでの時間も無駄である。その無駄をどれだけ楽しむことが出来るか、それが各々の人生の輝きに密接に影響してくる。

 どうせ無駄ならせめて楽しくあれ。この記事は現代社会において忌避される無駄の、無駄による、コスパや効率性に対するカウンターパンチのつもりで書いた。熱い。

 ちなみにここまでの数行は何の意味も無いタイプの無駄である。

 

 

3.Catcher In The Spyを聴くと、なんやかんやあってモテる

 

 709記事目。このブログに無数に存在する、Catcher In The Spy過剰評価記事の一つである。「Catcher In The Spy過剰評価記事」というのは僕が付けた名前ではなく、気が付いたらそう呼ばれていた。過剰評価しているつもりは毛頭ない。どう考えても適正評価である。血が滾るだろ、聴くと

 この頃の僕はこれ以外にも「Catcher In The Spyを聴くと肌がすべすべになる」「デキるビジネスマンは皆Catcher In The Spyを聴いている」「Catcher In The Spyこそが腐った国家を転覆させるためのマスターピース」といった、若干スピリチュアルを感じさせる方向にまでこのアルバムを激押しする記事を連発していたこともあり、当時のあだ名が「CITS界の大川隆法」だった。今思えば完全に蔑称

 この記事はその中でも特に「やりすぎ」と批判されたものである。平凡な生活を送っていた男がCatcher In The Spyと出会ったことをきっかけに、風が吹けば桶屋が儲かるみたいな理屈で一気にモテ・スターダムを駆け上がり、最終的に年収が3000億円になってトップアイドルの女を嫁にもらい幸せな家庭を築くという、その人生大逆転劇を克明に、精緻に、そして何より臨場感あふれる筆力で書ききったこの記事は、あまりに誇張が過ぎると散々批判された。

 今だから告白するが、まあ確かに誇張はあった。それは認めざるを得ない。ただCatcher In The Spyを聴くことが潜在的なモテ・オーラを高めるという事実は変わりないし、世の中のモテ男と呼ばれる人間のほとんどが日常的にCatcher In The Spyを嗜んでいるというデータもある。むしろCatcher In The Spyを摂取せずにモテの極致に立っている人間こそがマイノリティであることを自覚すべきだろう。確固たるモテ・ベースの形成、効率的なモテ・ヒエラルキーの向上には、Catcher In The Spyの力は決して欠かすことが出来ない。この記事はそれをただ、純粋に書ききっただけの記事である。

 このアルバムは2000円ちょっとで買える、もっとも信用度の高いモテ・バイブルなのだ。それをみんなに教えてあげるための記事である。多少の誇張くらいは、目を瞑るべきではないだろうか。自分で記事を読み返して、改めてそんなことを思った。

 

 でもあの、女の子を暴漢から守るためにCD投げで応戦するシーンは無いな。あれは無い。女よりCDの方が大事だろうが そこを間違うなよ

 

 

4.第一回 福岡偕老同穴 ライブレポート

 

 5286記事目。愛の座敷牢は音楽専門のブログである関係上、ちょくちょく行ったライブの感想をライブレポートとして記事にまとめることがあるが、この記事はこれまで赴いた中でもベストライブだった、第一回福岡偕老同穴についての感想をまとめたライブレポートである。未だにこのライブを現地で観ていた自分を夢に見て、目が覚めた後に羨ましく思ってしまう自分がいる。

 今となっては邦楽ロックを聴いていれば名前を知らないことはないであろう大規模フェスではあるが、せっかくなので一応説明しておく。この「福岡偕老同穴」は2023年から始まった福岡県の大規模な音楽フェスであり、毎年秋ごろに開催されている。

 このフェスの特徴は「ライブ中のMC禁止」「現地でのバンドグッズ・フードといった物販の出店一切無し」と、演者・観客双方に相当な縛りを設けられている点であり、バンド側はただ混じり気なく100%音楽に力を出し切ること、観客側は余計なことを考えずにステージを見ることが求められる。この要項が発表された時は、従来の音楽フェスの重要なファクターである要素の排除に相当な物議を醸した。

 しかし蓋を開けてみればMC全カットによって、純粋に、一切の混じり気の無いバンド本来の格好良さ、佇まいを感じられたこと、第一回目の様子をYouTubeにて全編無料生配信するという太っ腹な試みも相まって、開催前の物議は何だったのかと言わんばかりの盛況ぶりを見せた。かくいう僕も出演メンツに惹かれて現地で観ていたがこのイベントは本当に最高だった。ヒトリエも、CRYAMYも、PK Shampooも、GRAPEVINEも、UNISON SQUARE GARDENも最高だった。今でもGRAPEVINE前に鬱陶しくない程度の小雨が降って、ユニゾンの一音目が鳴ったと同時にその雨がぴたりと止んだあの瞬間のことを覚えている。あれは本当に音楽の奇跡だった。

 第一回目の大成功もあってが今では全国屈指の超人気音楽フェスとなってしまい、チケットがろくに取れなくなってしまったこともあってとんと御無沙汰なのだが、機会があったらまた行きたい。余談だがこのフェスが開催されるようになってから、MCが長いバンドに対する風当たりが多少強くなった気がしないでもない。

 

 

5.これで命を請え! 宇宙人に聴かせるべき邦楽ロックの名盤10選

 

 36580記事目。この年に宇宙人が地球に攻めてきたときに、切羽詰まって書いた記事である。結果的にこの記事がこの星を救ったようなものだ。宇宙人が「邦楽ロックバンドがカッコよかったので地球潰すのやめます」と記者会見で発表した時はさすがに目頭が熱くなった。この記事を書きあげた際はさすがに国の内外からありとあらゆる言語で称賛を浴びたが、この記事の後に自分に酔いすぎて自分を褒めたたえまくる記事を50000記事くらい連発したのは本当に良くなかった。あれで随分読者が離れた。

 マジで本能的な危機感に任せて書いた記事ではあるので多少の粗も見受けられるのは仕方がないとはいえ「宇宙人はピュアだからあなたが眠る惑星を聴くと涙で前が見えなくなって死ぬ」とか「トラベルプランナーは銀河共通のボロ泣きソング」とか「サイレンインザスパイにはこの世の全ての知的生命体の神経に作用する力がある」とか、今思えばよく殺されずに済んだなと思わんばかりのワードの羅列で顔が引きつってしまう。こんな記事、こんなブログに世界の命運がかかったのどうかしてるぜ

 しかし、今となってはワールドワイドを超えてスペースワイドなムーブメントとなった国産ロックンロールであるが、当然ここで紹介したアルバムがリリースされたころの当事者はきっと、比較的近い未来に宇宙人が地球に攻めてくることなんて考えもしなかったわけで、そんな中で作られた音楽が今や銀河の外まで響き渡っているのは本当にロマンのある話である。そういう音楽の持つ力を感じられたこともあって、この記事への思い入れは大きい。

 余談だが僕は今度GRAPEVINEの惑星渡航ツアーの木星公演に行くつもりである。防寒対策をしっかりして臨みたい。宇宙空間で「小宇宙」とか「Asteroids」とか聴いたらどうなっちゃうんだろうな

 

 

 

 終わりに

 

 というわけで、これまで書いてきた中で思い入れのある5記事を紹介したが、いかがだっただろうか。改めて振り返ると本当にろくな記事を書いてなくて困る。

 おおよそ4年前にCatcher In The Spyに捧ぐ記事を書いてから、特にスタンスも何も変わらずに、チラシの裏に書きなぐるようなクオリティの記事を量産している。音楽でき知識も何も養わず、書くといったものから逃げて、ひたすら自分が好きなものを書いて悦に浸っている。そんなゆるい感じで続けられたのも、ひとえに読んでくださる方がいたから、とは言わないものの、まあやっぱり読んでもらえるのは嬉しい。いつもありがとうございます。これからも頑張ります!

 こういう記念すべき記事が上がったことだし、この記事を読んでくださった方もよかったら愛の座敷牢で好きな記事をおしえてほしい。とはいえ10万記事もあるのだから自分で自分の記事が把握できていないこともある。書いてない記事をよかったと言われても気づかないかもしれない

 

 次の振り返りは1,000,000記事を突破したらやります 今後ともよろしく~~~

 

 

ゴリラ・ピクルス・己【MODE MOOD MODE SENTENCE】

 この記事はナツさん主催の企画「MODE MOOD MODE SENTENCE」の参加作品です

 

 

summerday.hatenablog.com

 

 

 

 大前提として、このMODE MOOD MODEというアルバムは「ポップなアルバム」である。ロックな曲、オシャレな曲、その全てを内包しているとはいえ、「fake town baby」以外のシングル3曲、そしてなんといってもラストトラックである「君の瞳に恋してない」が、このアルバムのポップさを際立させている。2018年のイケイケドンドンUNISON SQUARE GARDENくんが世の中に炸裂させた、新時代のポップ・アルバムと言って差し支えない。

 

 差し支え、な……

 

 

MIDNIGHT JUNGLE

MIDNIGHT JUNGLE

  • provided courtesy of iTunes

 

 

 お前は、なんなんだマジで

 なんでお前はそんなに茂っているんだ

 

 

 というわけで企画もどうやら終盤のご様子、大トリ直前11曲目という、大層な位置になぜか割り当てられたわたくしの担当は「MIDNIGHT JUNGLE」だそうです。

 ありがたいことに企画者のナツさんじきじきに、担当の楽曲と共にご指名を頂きました。僕は「静謐甘美秋暮叙情」が世界一似合う人間だと自負してここ10年くらいは生きてきたのですが、割りあてられた曲はまさかの「MIDNIGHT JUNGLE」でした。これはもしかして、お前の常日頃のツイ―トは盛りの付いたゴリラくらいの語彙しかない、ということを暗に示されているのでしょうか。怒っていいか?

 そんなたいそうご迷惑な被害妄想はさておき、この世紀の大名盤であるポップ・アルバムがもたらす極上の音楽体験を、単なる上質なポップで終わらすことなく、一筋縄ではいかないものとしている曲が、個人的にはこの「MIDNIGHT JUNGLE」とその後の「フィクションフリーククライシス」の二曲だと感じる。

 

 

 MODE MOOD MODEというアルバムを何らかの料理と捉えるのであれば、個人的にはハンバーガーなのかなと思う。個性の強いシングル曲という分厚いパティの存在感をきわだたせながらも、それぞれがバンズやその他の具材として強く主張し、それらが渾然一体となって聴覚におそいかかる、暴力的なまでの調和こそMODE MOOD MODEの持ち味である、と。となると「MIDNIGHT JUNGLE」と「フィクションフリーククライシス」は、立ち位置的にはそれこそハンバーガーにおけるピクルスのような、アルバムそのものの持ち味を定義する存在というよりは、小気味よいアクセントとして重宝される存在だと感じる。

 

 えっ?ピクルスにしては主張が強すぎるって? ほんとそうだねマジで

 

 フィクションフリーククライシスは次の曲との強烈なシナジーがあるからさておき、なんだね、チミは なんだねその半角大文字アルファベットは

 数あるUNISON SQUARE GARDENの楽曲の中でも、この曲以外に半角大文字アルファベットの曲は現状"BUSTER DICE MISERY"と"RUNNERS HIGH REPRISE"の2曲しかない。何というか、ある人に「ユニゾンの曲で何が好き?」というこの世で最も不毛な質問をしたとして、返ってきた答えがこの2曲だったら、別に悪い意味でも何でもなくただちょっと距離を置きたいと思わせるような2曲である。それほどまでにどちらも一筋縄ではいかない魅力を有している。これから先、半角大文字アルファベットのみで構成された新曲がリリースされたら、最大級の「癖」警戒をせざるを得ない。かくいうMIDNIGHT JUNGLEもそれである もう癖 癖しかない 珍味

 MODE MOOD MODEという、UNISON SQUARE GARDENが呈した新世代ポップネスの極致・到達点の中になぜかまぎれこんだ混沌とした密林。なぜか不正入国していた一頭のゴリラ。明らかに7曲目であるこの曲だけやたらと毛深い。異彩を放ちすぎている

 一体何がこの曲を途方もない樹海たらしめるのか、何がこの曲を卓越したゴリラたらしめるのか。それを少しでも理解しよう、解明しようと、このあまりに広大な密林にこれまで幾人もの調査隊が赴き、そして行方が分からなくなった。無理のない話である。だってのっけから不穏なギターイントロとともに

 

「ミッドナィt…………ジャンゴォーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

 

 はい失禁。はい失踪不可避。こんなん野生に還るだろ普通 俺らが生まれたのは母なる海ではなく鬱蒼としたJUNGLEだったんだね ワオ新事実

 記憶が正しければこの曲、初披露がDr.izzyリリースツアーの最後である、沖縄公演のアンコールだったと思うんだけど、前情報なしでこんなUGPS*1の高い曲を聴かされたら脳みそが縮小する自信しかない。ニライカナイってゴリラの楽園だったんだネ

 バンド自体がアニソン方面に強い関係上、ソリッドなロック曲、および正統派に爽やかなポップロックの引き出しは業界でも随一といっていいほどに多い彼等であるが、ここまで振り切った「怪しさ」満点のロック曲はなかなか無い。強いて言うなら"蒙昧termination"や"徹頭徹尾夜な夜なドライブ"あとは最新シングルの"カオスが極まる"あたりの遠縁の親戚っぽさは無くも無いが、今改めて聴き返しても「変異体」な印象が非常に強い。それでも初めてアルバムを通しで聴いた時に、面食らいはしつつも自然と聴けるバランスになってるあたり流石の構成力である。というかこの曲がピクルスになり得るMODE MOOD MODEの懐が規格外過ぎる。

 

 そのイントロから叩きつけるように歌われる最初の人語が「大いなる最古の泉に騙されて」である。いきなり分からん。初っ端から風景に騙されないでほしい。「23:25」でも白鳥の湖に騙されていたが、もうきっとそういういい感じの水辺に弱いバンドなんだろう。そういう解釈で良い。どうにか噛み砕こうとすること自体が無謀 

 その謎多きAメロが過ぎ去ってそのまま「もったいない!」の乱舞なのだが、ここの「もったいない!」×3は果たしてカッコいいのか、曲調に騙されてるだけで割とダサくないか? 問題が浮上する。フィクションフリーククライシスの「自意識がクライシス迷子」の連撃も大概だが、この曲の「もったいない!」のコーラスも負けず劣らずダサい。ダサすぎる。誰が擁護しようと断言するが本当にダサい。もう本当にダサい。でもそれが最高にいい。

 そう、MIDNIGHT JUNGLEの魅力の根源は、アルバムの中でも頭一つ抜けたこの"ダサカッコよさ"だろう。ナチュラルボーン三枚目気質といってもいい。曲調は間違いなくジャンキーでダーティでクールなのに、難解な歌詞に紛れた要所要所のあまりにキャッチ―過ぎるフレーズと変なところでバランスをとっており、この曲の「間違いなく尖っててカッコいいのになぜかとっつきやすい」という、独特の雰囲気を形成している。「煉ってちぎって桜吹雪!」も「テキーラ!」もそう。ついでに言うならサビ直前の「ホゥ!」みたいな声もそう。あれのせいで今日もこの曲に執着する悲しきゴリラが生まれてるといっても過言ではない

 

 若干混じる巻き舌が大変に"そそる"テキーラ! の後も怒涛の攻勢はまだ続き、再度出現するAメロにて呈されるは何やら刺々しい言葉の羅列。

 

オフサイドのホイッスル響いて 容疑者の検証が始まる

スタンドの兄ちゃんもこぞって 責め立てるって何様?

 

MIDNIGHT JUNGLE/UNISON SQUARE GARDEN

 

 ああなんか分かんないけどイライラしてんだろうな、ということだけは何となく読み取れる。というか回りくどくもユーモアたっぷりの表現で上手に消臭しているだけで、2番の歌詞は全体的に非常に攻撃的である。田淵智也の楽曲に滲ませる思想の濃度がもう少し高かったら、今より大分賛否の分かれる仕上がりになっていたことが想像できる。「無礼講のはき違えはkey違い」とかもう、限りなく黒に近いグレーだろと思いながらも、syrup16gの「Heaven」にも似たような表現はあるからまあ……

 

Heaven

Heaven

  • provided courtesy of iTunes

 

key違うまで俺の

心臓は加速しろ

生きているのさえ微妙さ

 

Heaven/syrup16g

 

 セーフでいいでしょう。だいたいこのくらいであーだこーだ言ってたら、この先混沌のジャングルでは生きていけない。そもそも比較対象として持ってくんのがsyrupな時点でどうかというのはナシで

 しかしまあ、改めて読んでも2番の歌詞は攻撃的であり、何より複雑である。何となくテーマとして感じるのはこの国、およびこの界隈におけるしきたり特有の同調圧力に対するディスと、それに対する自分たちのスタンスの表明、といったところか。どの曲でも同じようなことを言っているが、ことこういう自分たちのスタンダードからちょっと外れたカラーのロックソングは、その傾向がより強く感じられる気がする。

 

 でさあ、もうこの話はマジでどうでもいい、ただの"癖"の話なんですけど、この曲の代名詞ともいえるテキーラ!(巻き舌)って2番の終わりには無いんですよ。おいおいテキーラ! の時間がないとかどういう了見だ? 手抜きか? って言いたくなるんだけど、この直後の間奏、ギターソロ前の「ハァ~~~~~~~~drunked!!!!」で、ああ1番でキメたテキーラでだいぶ酔っ払ったんだ、だから2番ではやめといたんだって思えて、そう考えると2番の歌詞がだいぶ思想強めなのもなんか、酔いがまわって一層タガが外れたんだなって感じられてめっちゃいいなって、妄言

 からの三度目の「もったいない!」の乱打! ここにきてまさかの"追い"もったいないである。体力配分を考えていなかったゴリラはもうこの辺で息絶えている。どのライブ映像を見てもこの三回目の「もったいない!」が一番高威力 一番ハイテンション どこを切ってもゴリラ養成塾の名門

 ゴリラ養成塾の名門なのでここで応用問題が出てくる そう 「やめては散り散りになり~」からの歌メロである。不意打ちのように投げつけられる怒涛の展開。今の今まで聴きどころしかなかったのにここにきてさらに深淵に誘われるような心地になる。曲が進めば進むほど知らなかった頃には戻れなくなる。人間だった頃には戻れなくなる。気が付くとゴリラになっている。この文章は無限の猿、もとい無限のゴリラ定理の実験において、シェイクスピア以上の奇跡的な引きをしたゴリラが書いているすさまじい文章である。もうそういうことにしてほしい

 

世界で一番汚くて美しい心

万事最後を迎えるため あと一仕事

 

MIDNIGHT JUNGLE/UNISON SQUARE GARDEN

 

 長きにわたったゴリラの饗宴もこのフレーズで佳境である。厳ついドラムからのシンガロン、山場を2連続させるタイプの大サビ。もうやめてくれ、これ以上開放すると俺は本当のゴリラになってしまう、そう命乞いをするゴリラをあざ笑うかのようにとどめのテキーラでノックアウト。試合時間3分38秒で各小節ごとにダウンを取られた心境はもう「最高」の一言に尽きる。一方的に、勝手に、自分からボコボコにされる、されにいく贅沢

 そしてここまでに炸裂したメロディが、余すことなく全て一級品という隙の無さ。歌詞カード無しに歌詞を聴きとることは難しくとも口ずさんでしまいたくなる驚異的な中毒性が、視覚的な情報すら歌詞以外にろくにない楽曲の、ないはずの奥行きを勝手に感じさせ、やみつきになったゴリラをさらにその深部へと誘うのだ。as known asゴリラホイホイと言っても過言ではない

 

 プレイタイム3分38秒間、どこをどう切ってもクセまみれ。暴力的な個性同士の手加減の無いぶつかり合い、それでも体裁を保ってちゃんとロックンロールに仕上がっているその手腕に舌を巻く。シングル4曲にも決して引けも取らない強烈な個性を武器に、アルバム中盤にこれ以上ない苛烈な起伏をもたらす、密林からやってきた異次元のハードパンチャーである。もはや楽曲がゴリラなのか、聴いている我々がゴリラと化すのか自分でここまで書いてて何も分からなくなってきたが、その混沌もこの曲が無数に持つ強みの一つだろう こういうこと書いとけばなんか上手いことまとまる気がする

 MODE MOOD MODEがポップ・アルバムである以上、この楽曲は決してアルバムの顔となるような、主役の楽曲ではない。最初に書いた通り、あくまでアルバムの調和を助ける強烈なアクセントであり、ハイクオリティなポップネスの大胆な差し色となるような曲である。だからこそ異質で、異様で、得も言われぬ存在感があって、何よりも楽しい。その楽しさを存分に表現できるように自由に書いてみたがいかがだっただろうか

 この記事がMODE MOOD MODEにおける「MIDNIGHT JUNGLE」のように、この素敵な企画に添える素敵な彩りとなれたら幸いである。

 

 というわけで!この記事はMODE MOOD MODE SENTENCEの提供でお送り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 するとみせかけもう少しだけ

 

 

 さて、この記事で僕は一体何回「ゴリラ」と書いたのだろうか。もう「ご」って打つと「ゴリラ」が勝手に予測変換に出てくるようになってしまった。ご苦労様を、ごめんなさいを、筋骨隆々とした霊長類がしきりに邪魔してくる 

 企画に参加することになって毎日、もう本当に毎日MIDNIGHT JUNGLEを聴き続けていたが、この個性と個性のぶつかり合い、混沌の寄せ鍋みたいな曲と四六時中向き合い続けていると、果たして自分が人間だったかどうかすらも疑わしくなっていく。真夜中の密林に侵食された再生履歴。変わり果てた予測変換。寝ても覚めてもゴリラが脳裏でドラミングを繰り返している。車内で、自室で、職場で、幾度も幾度もこのゴリラについて考えている。考えさせられている。多少なりとも地に足のついた考察が脳に芽生えても、再度再生ボタンを押すとその考察は暴力的なイントロに呑み込まれ、テキーラに掻き消されてしまう

 

 

 MIDNIGHT JUNGLE

 

 

 この文字列について考えれば考えるほどドツボにハマっていく感覚 明瞭だったはずの思考に、ナックルウォークするゴリラがその腕でことごとくテキーラ、もとい水を差していく それがまるで己の生業であるかのように

 足を沼に、身体を蔦に取られる心地の中で、幾度もこの曲と夜を遊んだ。思考を進めたり戻ったりしながら、幾度も、幾度も、幾度もこの曲を繰り返す 何度もテキーラをキメる 執拗に「もったいない!」をする かぞえきれないほどの「あと一仕事」を終わらせる YOASOBIの幾田りらの「りら」ってもしかして、などというカスみたいな妄想が思考をさらに迷宮へといざなう

 

 形の無いゴリラと、それに翻弄され続ける僕の永遠のようなデュオのなかで、MIDNIGHT JUNGLE この曲、この文字列、このゴリラの恵まれた体躯だけを反芻し続ける、どこまでも孤独で果ての無い旅 宇宙

 

 

 その中で一つだけ分かったことがある

 この混濁・混迷・混乱極まった思考回路こそが、俺のMIDNIGHT  JUNGLEだと

 

 

 MIDNIGHT  JUNGLEとは――――""であると

 

 

おのれ
【己】
1.
《名》
その人(その物)自身。自分自身。ゴリラ。
 「―の本分を尽くす」
2.
《感》
感情が激した時、怒りの気持で発する語。ゴリラ。
 「―、よくもだましたな」

〖己〗 コ・キ・おのれ おの・つちのと・ゴリラ
1.
自分。自身。ゴリラ。
 「知己・克己・自己(じこ)・利己(りこ)」
2.
十干の第六。ゴリラ。
 「己丑(きちゅう)・己巳(きし)」。つちのと

【己】
ゴリラ〖己〗

 

 別にここの引用に特に意味はない

 

 

 

 UNISON SQUARE GARDENの楽曲の歌詞は難解な、言い換えると「解釈の余地が広いもの」が非常に多いが、この曲もその例に漏れず、極めて捉えどころの無い歌詞である。斎藤宏介氏にテキーラと言わせたいだけの曲、と片してしまえばそれまでではあるが、そこに並べられた言葉とあてはめられたビートに何らかの意味を見出すこと、その曲順に何らかの意図を見出すこと、結果的にそれ自体に答えが出なくとも、それを考えることに意味があるのだと そうしてどこまでも混濁し、当てのない旅路をさまよい続けるその思想の密林こそが、自分だけのMIDNIGHT JUNGLEなのだと

 MIDNIGHT JUNGLEにゴリラもピクルスも感じることの無い人間もたくさんいるだろう。ただ単にロックでカッコいい曲、という捉え方しかしない人も大勢いるだろう。それでいい、それでいいのだ 宴が人の数だけあるように、何人たりともお前のMIDNIGHT JUNGLEを否定できない。鬱蒼とした密林が幾重もの生態系にて成り立っているように、おまえの心は、画一的な概念で捉えられるものではない

 今を生きる人間の数だけ、MIDNIGHT JUNGLEはあるんや――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  わたくしはこのゴリラにそう教わりました

 これこそがこの混沌とした世の中をMIDNIGHT SHANGRI-LAに変えるためのwisdom of BIG natureです

 

 

 

 

 

 

 収拾がついてないって? もうそういう曲だから仕方ない

 

 というわけで、このゴリラはMODE MOOD MODE SENTENCEの提供でお送りしました! ナツさんお誘い頂き本当にありがとうございました! おしまい! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 は、この曲

*1:UhoUho Gorilla Per Secondの略。楽曲1秒間あたりに含まれるゴリラの濃度を示す単位

Catcher In The "Meat Pie"

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 この記事はCatcher In The Spy生誕8周年をお祝いするために、27歳成人男性がミートパイを作る記事である。この記事はCatcher In The Spy生誕8周年をお祝いするために、27歳成人男性がミートパイを作る記事である。誰も読み間違えない様にあえて2回書いた。太字にもした。分かったら帰れ 見せもんじゃねえぞ

 

 

 今年になってようやくディスクレビューだのライブレポートだの真面目な音楽ブログらしい記事を量産して、いよいよ音楽ブログを運営していますと胸を張って言えるようになった矢先に、これである。とうとう音楽にカスリもしてない。こじつけにもちょっと無理がある。まあその、率直に言えばネタが無いんですよ。バースデーの。一枚のアルバムを何度も何度もこすり続けるのも無理がある。

 そもそも何でこんな突飛な記事になったのか、ということの顛末を一応説明しておくと、先月、あまりにも早く訪れる8月27日のプレッシャーに耐えかねたわたくしが、なにかネタがないかと藁にも縋る思いで、愛の座敷牢とかいうインターネットの辺境でひっそりと息をしているキモいブログのCatcher In The Spyについて語っている記事を必死で読み返していたところ、2年前に書いた記事のある一節が目についたことが切っ掛けである。

 

 というわけで栄えある我らがCatcher in The Spyのお誕生日、盛大にお祝いでもしようと思いたったのだが、さて何をするかと考えた結果こうしてキーボードを叩いている次第である。Catcher In The Spyの「py」にでも掛けてアップルパイでも焼くか?? とか一瞬考えたが、そもそも僕はアップルパイなんて焼けないし大前提としてウチにはオーブンがない。あったとしてもアルバム発売記念日におもむろにアップルパイを焼く奴はファンというよりはただのアップルパイが好きな人である。第一僕はアップルパイが苦手だ。

 

「アップルパイじゃなくてミートパイだったら食えるじゃん。ミートパイ作るか」

 

 以上である。脊髄で動き反射で生きているので、こういう短絡的な発想で全ての舵を切ってしまう悪癖がある。このせいでこのクソ暑い夏にわざわざ三回もミートパイを作る人になった。実質イギリス人と言っても過言ではない。

 うちにはオーブンは無いが一応トースターはあり、調べるとトースターでもなんとかなりそうだったこともあって、簡単そうでめんどくさくなさそうなレシピを選んで作ることにした。本当は古いイギリスの小説に出てくるような、ホール状のパイを作ってみたかったのだが、どうにも生地から作らないとダメそうだったので諦めた。そもそも作ったところで食いきれないし。

 なのでこの記事は最初で最後の料理記事になるのだが、前提として僕はあんまり料理をしないし、時折やるとしても「食えりゃいい」くらいのレベルでやるので普通に下手である。袋麺を茹でることを料理と言っていいなら別だが、傍若にフレンチをフライする時間があるなら外食に頼る。その程度の素人なのでお見苦しい部分は多々あると思うが、というかお見苦しくない部分を探す方が難しいと思うが、もしも読むのならその辺はマジで手加減してくれると嬉しい。ポンコツでも無様でも食えさえするならOK、OK! の精神で頼むね

 というわけで前置きここまで、以下レシピ

 

 

 

 

おいわいミートパイを作ろう

 

材料(1個分)

 


(写真を撮るセンスが無さすぎてクッキングシートがメイン食材みたいに鎮座しているが、クッキングシートは食べないので安心してほしい)

 

パイシート:2枚(スーパーの冷食コーナーに置いてる)

ひき肉:豚でも牛でも人でも何でもいい 100gくらいあれば十分

人参:そこまで大きくないやつ半分くらい

玉ねぎ:中サイズ半分

ケチャップ:それなり

中濃ソース:それなり

顆粒コンソメ:あれば(写真はいつ買ったかもよく分からないキューブタイプのものだが、砕いて使った)

塩コショウ:気が済むまで

パイを作るぞ~! と野菜のみじん切りを開始するやる気:あるだけ

 

写真に入れ忘れたもの

卵:1個(卵黄部分だけ使う。白身は捨てるなりスープにするなり啜るなり白い壁に投げつけるなり勝手にしてほしい)

 

その他あったら嬉しいもの

小麦粉:すこし(なくてもいいけどあるなら用意しておいた方がいい)

チーズ:あったらうれしい

スマホ:焼き上がるまでわりと暇なので

 

無くてもいいもの

愛:料理は愛情ではなく科学であるため

地位と名誉:ほしい

ルールブック:それなりに大事だが今回はいらない

 

 

 

作り方

 

・フィリング(中の具)をつくる

 

 調理前にパイシートを冷凍庫から出しておく(解凍のため)

 

 手始めに玉ねぎと人参をみじん切りにする。みじん切りのサイズは好きなようにすればいいが、野菜が野菜としての尊厳と自覚を失くすくらいに滅多切りにした方が主役であるミートが目立つので、なるべく細かくした方が僕は好きである。

 なお僕は料理の下準備の中でもみじん切りと言うのが特に苦手であまりやりたくない。練習しないので当たり前だがいつまで経っても上手くならない。みじん切りした野菜の写真が無いのはそのためである。もし野菜に生まれ変わっても僕みたいな奴にだけはみじん切りされたくない。コツを教えてほしい。通り一遍やってみせてくれ

 

 フライパンに油を引いてひき肉を炒める。

 

 

 色が変わったらみじん切りにした玉ねぎと人参をぶち込む。あんまりこの辺は余計なことを考えなくていい。無心で炒める おいしくなる確証がなくとも、楽しそうにいためるのがポイント 

 

 玉ねぎに透明感が出てくるか、人参が柔らかくなるか、よく分からないけどなんとなく良い感じに火が通ったようなそんな感じがする、そのあたりのころ合いになったらケチャップ、中濃ソース、顆粒コンソメを加えてさらに炒める。塩コショウはこのタイミングで、好みに合わせて入れる。本当は分量は大さじ小さじで表記するのが正しいとは思うのだが、ウチには大さじ小さじという文明の利器がないためすべて目分量である。この調理、そう俺のなすがまま

 

 散らばる具材 写っていない外側はお察しの通り飛び散っている

 

 肝心のフィリングの味付けだが、市販のパイシートはバターやら砂糖やらのせいのか知らないがそのままでも結構甘めなので、わりと濃い目の味付けを意識した方が美味しく仕上がる。下手に薄味に作るとパイ生地に負けて何の味もしない「虚無」が出来るので気を付けよう。僕は初めて作った時この虚無パイが出来て心が折れかけた。

 味見をしながら「あっ、ちょっと濃いかも」と感じたくらいがちょうどいいと思う。まあ貴方のバランスなんて聞いてないので、その辺は適当に調整するといいんじゃないかな

 なお小麦粉がある場合は、火を止める前に小麦粉を適量振っておくとフィリングがまとまってナイフでパイを切った際に具材が不用意にこぼれず済むのだが、うちには小麦粉なんてハイカラなものはなかったのでやってない。出来ればやったほうがいい

 調味料の水分が飛んだらとりあえずフィリングはおしまい。本当はバットか何かに移した方が良いとは思うが洗い物が増えるので、面倒くさい人はそのままの状態である程度冷ましておこう この間にトイレとかいくといい

 

 

 

・パイを焼く準備

 

 パイシートの準備をする。パイシートは1つに付き2枚使う。なおパイと言う料理は見た目以上にボリュームが有るので、調子に乗って2個作ると地獄を見る羽目になる。僕は上述の虚無パイを2個錬成する大事故を犯して以来、ミートパイという料理が少し嫌いになった。これはもはや虚無虚無プリンならぬ虚無虚無パイp

 使用するパイシートのうち1枚に、包丁で良い感じに切り込みを入れておく。写真撮るの忘れたけど後の方でそれっぽい写真が出てくるので安心してほしい。ていうか料理中に動画回したり写真撮ったりするの難し過ぎる。クックパッドにレシピ投稿してる人怖すぎ

 切り込みを入れていない方のパイシートに、作ったフィリングを乗せる。

 

 

 作った分全部1枚に乗せていい。好きなだけ乗せろ 乗せる際に、次の工程で下のパイシートの外側にある程度ののりしろ部分が必要なため、端っこ数センチは何も乗せないようにしましょう 大丈夫、多少高く積もうとフィリングは微動だに微動だにしない なお、チーズを入れる場合はこの時に上に乗っけておこう

 卵黄を1個といてのりしろ部分に塗りたくり、切り込みを入れた側のパイシートを被せて、フォークで淵にぶすぶすと穴をあける。

 

 

 穴をあけると言うよりは、さっき塗った卵黄と合わせて上下のシートを接着させることが目的。どうでもいいけど本当に写真撮るの下手だな、色あせない永久写真を撮るようにもっと気合を入れて撮れよな

 残った卵黄を表面に塗る。これは焼き上がりの見栄えを鮮やかに、鮮やかにするため

 

 

 卵黄塗り過ぎてるように見えるのは気のせい

 

 

・パイを焼く

 

 クッキングシートを敷いたバットの上にパイを乗せる。バットからクッキングシートがはみ出ると危ないので内側に織り込んでおこう

 パイを焼却炉に放り込み、180度で15分~20分くらい焼く。

 

 

 焼却炉が汚いのは掃除をさぼっているからです。写真貼って思ったけどマジで汚いな……

 焼き時間についてだけど、これは正直ネットで色々見てても焼き時間はまちまちで、なおかつ僕の家にはオーブンがなく、トースターで焼いているのであんまり参考にならない。まあ中のフィリングはがっつり火を通しているので、外側さえどうにか良い感じに仕上がっておけば多分、食える。心配ならこまめに表面を見ながら焼くといいと思います

 焼き上がるまで暇なのでスマホYouTubeでも観る。そのうち焼き上がる。

 

 

 焼き上がったものを皿に乗せる。

 えっ? Catcher In The Spy要素はどうしたって? 

 

 

 

 

 

 これはこころが綺麗な人にはふくろうに見える鳥です。

 もうこれでいいだろ

 

 

 

 

 

 終わりに

 

 

 というわけで8周年おめでとうのお祝いとしてミートパイを作る記事でした。

 肝心の味ですが、可もなく不可もなく……といった感じ。三回もつくったくせに。

 これといって別にマズくはないけど、これを店で出されたら値段次第では2度と行かないと思わせられる程度。強いて言うなら、家で食う味気ない破廉恥なおやつとして考えれば上等な部類だと思います。改良の余地はたくさんあるけど改良する元気がない。なんかいいアレンジあったら教えてくれ。

 まあネタに困ってミートパイを作る、というのをTwitterのフォロワーに宣言してしまった結果やらざるを得なくなった経緯はあれど、ミートパイを作ること自体は、まあそんなに楽しくはなかったけど新鮮な経験ではあった。多分この記事がなかったら一生自分でミートパイをつくるなんてことは無かったと思う。こういう機会を与えてくれたCatcher In The Spyに感謝したい。したいか?

 

 あらためて8周年おめでとうございます! 2桁の大台までもう少し