愛の座敷牢

無料で読める文章

キタニタツヤ "Hugs Vol.5 Tour"@2023.3.12 名古屋DIAMOND HALL【w/ヒトリエ】 ライブレポート

 

 

 キタニタツヤの主催の対バンツアー「Hugs vol.5 tour」の名古屋DIAMOND HALL公演に行ってきました。この記事はそのライブレポートになります。

 

 前置きここまで、以下本文

 

 

 

 

 

 

 見た瞬間ノータイムで申し込んだ。当たった。

 わたくしが2022年、幾度もリピートしたアルバムランキング断トツの第1位がヒトリエの「PHARMACY」であり、最も聴いた時間が長かったアーティスト第1位がキタニタツヤである。昨年の僕はこの二組の音楽を聴いて毎日の地獄を乗り越えてきたといっても、まあそれはさすがに過言なのだが、とにかくこの二組の音楽を聴かない日は無かったように思う。本当にアホみたいにFlashback,Francescaしたし、狂ったように散らばった愛の吸い殻に舌打ちした。幾度も幾度もFlight simulatorしたし、何度だって君のいない春を歩いた。

 そんな二組の対バンである。名古屋で。なんで名古屋なんだよ福岡まで来いよ

 そう言いたい気持ちも「日曜開催」の情報だけでとりあえず吹き飛んだ。許した。とりあえず申し込もう。その後のことは当たってから考えよう。そう決めて、オフィシャル先行に自分のクレジットカードの情報を叩きこんだ。自分でも、いつか気付かず詐欺に遭ってもおかしくないフットワークだと思う。

 

 

 3月12日日曜日、早朝。ほぼ満席のプロペラ機(何気に人生初だった)でぎゅうぎゅうになりながら中部国際空港に到着。今でもなぜ名古屋空港に飛ばなかったのか不思議でならない。こんな感じで、今回の旅路は本当に事前リサーチをさぼり過ぎたせいで、これまでで一番行き当たりばったりになってしまった。それでも非常に楽しかったので良い街です名古屋

 初めての愛知県だというのにホテルも何も予約しておらず、最悪ネカフェに泊まればなんとかなるやろの精神でいたので、とりあえず何も知らずに名古屋までの特急「ミュースカイ」に乗車。全席指定席というアナウンスで焦り散らかして冷や汗をかきながらデッキで棒立ちするも、車内で車掌さんにお金を払い、事なきを得る。

 名古屋から地下鉄を使ってダイヤモンドホールのある栄に向かい、会場を確認してから栄近辺を散策することにする。途中でデパートのレストラン街みたいなところに入り、名古屋コーチンを使っているという触れ込みの親子丼を食べた。親子丼といい味噌カツといい、名物として食すものがことごとくかなり甘めの味付けで、ここで数年暮らしたらすぐ糖尿病になりそうだなと思った。それもあってか胡椒の効いた手羽先がとても美味しかった。あとマジでどうでもいいけど箸を忘れられる事件が旅行中2回ほど発生した。潜在的に名古屋人に嘗められるオーラが出ているとしか思えない。

 その後は時間まで、栄の書店をひたすら物色する不審者と化していた。とくにbibliomaniaというめちゃくちゃアングラな書店が品揃え・店内の雰囲気ともにあまりに最高だったので、ここ目的で名古屋に遊びに来てもいいなと思った。我が家の積読を片したら爆買いしたい。サイトも古き良きフラッシュ時代の産物って感じで最高。

 

 先行物販でTシャツを一枚買い、自分の整番と睨めっこしてだいたいここらへんだろ~くらいのところに並ぶ。製番がわりと近かったお兄さんと、踊り場近くの自販機前で「キタニ×ヒトリエは最高」「新生ヒトリエはゆーまお曲が至高」「結局追悼会のライブは超えられない」「なんでスマホドラえもん読んでるの?」みたいな話をした。ライブ開演までの待ち時間に誰かと話すのも、まったく初対面の方とここまで話が弾むのも初めてだったので印象的だった。連絡先は交換しなかった。チキンなので。お兄さんはイケメンでイケボでめちゃくちゃ優しい良い人だった。一生苦労することなく人生を全うしてほしい。

 都市部のビル街にあるライブハウス特有のやたら長すぎる階段を登らされ、ドリンク代600円を支払ってフロアへ。「今日は誰を見に来られましたか?」の質問には、数瞬の逡巡の後「ヒトリエ」と答えた。キタニタツヤが本日の主役なのは重々承知ではあるが、その対戦相手がヒトリエでは無かったらおそらくここまで来ていないので

 製番は真ん中くらいだったが、手持ちの荷物をロッカーに叩き込んで身軽になっていたことが幸いして、わりと前の方の下手側に陣取ることに成功。前回ヒトリエのライブを見た時は上手側だったので、今回は真正面からシノダ氏を拝むことにした。フロアには今回の”Hugs”の対バン相手である、indigo la Endヒトリエアジカンの音楽が入れ替わりながら流れ続けていた。

 

 

【先攻:ヒトリエ

 

「キタニのライブは撮影OKだけどゲストはダメだよ~」的なアナウンスが流れて、少ししてから客電が落ちる。歓声。ああそうか歓声解禁されたんだ、とここで気付く。本当に久しぶりに、客の声でライブハウスが揺れるような感覚を覚えた。数年前はこれが当たり前だったんだよなあ

 去年のライブで聴いたインターネットっぽい曲に合わせてゆーまお、イガラシ、シノダの順に入場。それぞれが楽器を構えて重厚な音を叩きならし、開幕。音が、背筋と肌に、ひりつくような、灼けつくような感覚。歓声も相まっていつも以上に、非現実にとばされたような心地になる。福岡で見ようと鹿児島で見ようと東京で見ようと、名古屋で見ようと、きっと北極で見ようとアフリカのサバンナで見ようと、ヒトリエはいつも、どこでも最初の一音から最高に、非現実的なまでにカッコいい。

 

シノダ「ヒトリエです、よろしくどうぞ! 挨拶代わりに3分29秒ください!」

 

 からのドラミング、からのピックスクラッチ、からの「哀願しても懇願しても、変わらないや もう」述べ口上100点、イントロ1000点、ステージング測定不能。これだけで、これだけでチケット代の価値がある。飛び跳ねる観客、うねるアンサンブル、異常なまでに息ぴったりの同期音源。馬鹿みたいな音圧と想像を絶するテクニックで、有無を言わさずにフロアを支配する"3分29秒"。完全に、主役を、喰いに来ている。Aメロで巻き起こるクラップも何も、耳障りにすら感じない。ここには、俺と、ヒトリエしかいないのだから

 そのままなだれ込むように"ゲノゲノゲ"へと続き、コミカルでやるせない歌詞とバキバキのロックンロールの融合、その新境地をまざまざと見せつけられる。相変わらずの間奏ソロパートの巧みさよ。今宵も俺の中の巨匠が顔を出してしまう。そしてそこからギターソロ、から追撃の”ハイゲイン”! このフロアに存在する人間の体力を、自分たちの持ち時間だけで奪いつくしてやる、キタニまで一滴の体力すら残させない、そういう意志すら感じる、三人の鬼気迫る暴力的なまでのパフォーマンス! 赤青の点滅を繰り返す照明と音圧で目眩をおこしかけた。あまりの熱力に窒息しそうだったし、実際僕が気付いていないだけで多分この後の転換中に人が救急車で運ばれている。

 

 手早く、しかし強烈に三曲を済ませて、転換。おそらくキタニ目当てで訪れたであろう観客のどよめきが聞こえる。勝手にほこらしくなってしまう。俺は、このバンド、何回も何回も見てきたんだぜ、そういう精神のマウントをとってしまう。嫌なファン

 

シノダ「改めましてヒトリエです! すげーな、こんなパンパンのダイヤモンドホール見たことない。キタニタツヤ凄すぎワロタ」

 

 今日のシノダさんは汗の話を全くしない代わりに同じ話題を何回かリピートするタイプのMCだった。「パンパンのダイヤモンドホール」「キタニに呑み代をおごってもらった」だいたい、この二つだけ。ゆるい。しかし見るごとに話し方や話の展開が明瞭になってて、どこまで成長するんだこのフロントマンは……みたいな気持ちになる。

 

シノダ「Hugs tour インターネット代表として呼ばれました、よろしくお願いします」

 

 から繋がるのがそのインターネット代表感から一番遠い位置にありそうな曲調の"風、花"なのが非常に良い。とはいえ今回も相変わらずジャズマスターによる演奏で、原曲のポップさを食い散らかしそうなほどにロックで最高に良かった。

 演奏後、シノダさんがギターを置きハンドマイクにに。お? SLEEPWALKか? と思ったらまさかのイントロが。腹のそこから響くベースと怪しげな同期音源。ここで予想外過ぎる”RIVER FOG,CHOCOLATE BUTTERFLY"である。何気にライブでは初対面で本当にびっくりした。マジでやるのか、と

 いや新生ヒトリエになってからは定番曲とまではいかずとも、それなりの頻度で演奏されている曲だというのはもちろん把握していたが、さすがに呼ばれる側の対バンでカップリング曲をやるとは夢にも思っていなかった。最高過ぎる。今日一のサプライズ

 丁寧に歌い上げられるサビの美メロにぶっ壊れたような間奏、アウトロの世界一泣けるギター。全部最高、完全無欠。この日のこの曲の演奏の音源を余すことなく俺の葬式で流してほしい。これを聴かせるためだけに俺の葬式に日本国民全員来てほしい。俺の遺体なんてどうでもいい、これを聴いたらすみやかに帰ってほしい

 そしてそのまま"Neon beauty"。ここまで聴いて思ったが、ボカロ畑のアーティストが対バン相手だとしても、無理にボカロPとしてのwowaka(現実逃避P)時代の曲をラッシュするようなセトリじゃなくてよかったなと思う。あくまで見せるのは自分たちの現在地。その潔さが良かった。まあボカロラッシュでもぎゃーぎゃー騒いだとは思うけど

 伸びやかに歌い上げて、転換。こんなにパンパンのダイヤモンドホールみたことない。キタニはすげえ男だ、飲み代も奢ってくれるし、みたいなこと言ってた。奢ってもらうシノダさん可愛くていい

 

シノダ「キタニタツヤは天才なんですけど、うち(ヒトリエ)にも、天才がいまして」

 

 ここで爆発的な歓声。わかる。

 

シノダ「そんな天才が作った曲を、今からやりたいと思います」

 

 からの高速ドラム、そのフレーズはもう耳馴染みしかない。

 

シノダ「そんなもんかダイヤモンドホール? そんなもんかダイヤモンドホール!? ……言いたいことがあるなら、トーキーダンスで踊りませんか」

 

 ハイ、勝ち! 問答無用で、俺達の勝ち! もうそんな気持ちだった。そらもう、踊るよ。脳も血液も沸騰するよ。歓声も解禁されてるんだからテンションのブレーキも壊したよ。おしまい、おしまいです ここが、この瞬間が我が人生の頂点といっても過言ではない そんな気持ちにさせてくる"トーキーダンス”あまりにも最高だった。センキューマイガール、センキューフォーEarth

 ギターのキメの度に「ヨッ」「アヨイショ」みたいな声入れるシノダさんが印象的だった。最高、最高です、これ以上はありません、とか思っていたら、曲終わりからほとんど間髪いれずに、あの曲の、あの部分を、吠えるように歌う声

 

シノダ「歌える奴は歌ってくれ、wowakaより、愛を込めて」

 

 そこから"アンノウン・マザーグース"は反則だろ……人の生の最高到達地点を、縁石でも跨ぐかのように数分で飛び越えるの本当にやめてほしい、やめないでほしい  追悼会以来の歓声ありアンノウン・マザーグースである。泣ける。本当に。

 今回の彼らのセトリで唯一のボカロ曲ということもあって、会場の熱量もこれまでとは比にならなかったような気がする。みんなで歌いました。僕はアンノウン・マザーグースだけは一緒に歌うと決めてるタイプのヒトリエ大好きおじさんなのでちゃんと声を出しました。去年鹿児島でヒトリエを見た時は、いつかこの曲を一緒に歌える日がくるといいな、なんて思ってたけど、意外と早かったし、それでもちゃんと感動した

 誰も知らない物語を口ずさみ終わった後、シノダさんがぼそりと「こんなに歌えると思わなかったな。まあでも、キタニタツヤ聴いてるようなやつが歌えないわけないか」と言ってたのすげえよかった。そらそうよ

 

シノダ「キタニタツヤにこんなパンパンのダイヤモンドホールに呼んでもらえて、飲み代も奢ってもらえて(2回目)、ヒトリエというバンドを誇りに思います。本気で歌います」

 

 からの"イメージ”。確実に”殺し”に来てるセットリストである。イガラシさんのサビでのコーラスが綺麗すぎて鳥肌が立った。曲展開が進むごとに少しずつ厚みを増していく伴奏と、それを最大限に爆発させる2サビ終わりのギターソロがあまりにも完璧で、自分がこの曲を、このバンドを好きでいることが勝手に誇らしくなった。

 

 曲が終わり、次が最後の曲です、と一言。「え~」の声を上げる観客に苦笑しながら「しょうがねえだろ」と返すシノダさん。

 

シノダ「しょうがねえだろ、キタニタツヤが待ってるからよ、ハハハ……ハァ?」

 

 一挙一動一言一言がいちいちおもろい。

 

シノダ「今我々もワンマンやってて、4月13日に名古屋クラブクアトロでやります。これ(本日のダイヤモンドホール)くらいパンパンにしてくれ」 

 

シノダ「最後に、ヒトリエより愛を込めて! ステレオジュブナイル!」

 

  いや~最高ですありがとうございます、本当に。

 というわけでラストは"ステレオジュブナイル"! こんなん聴いてくれんのお前だけ、のその「お前」が、ライブハウスで聴くといつもたくさんいるの、本当に気持ちいい。世界一カラフルな照明が似合う曲と言っても過言ではない。ヒトリエみたいな音楽が好きで日々バンドを追っている僕みたいなリスナーからすれば、天啓みたいな曲である。末永く愛されてほしい。

 俺たちが愛するバンドは大器晩成のうわさのスーパーミュージシャンにも匹敵、凌駕するスーパーロックバンドということを知らしめて無事終了。相変わらず最高のステージでした!

 

 

 

【後攻:キタニタツヤ】

 

 開演前にスマホを取り出す観客が多かった。撮影・録音OKなので当たり前ではあるが、そもそもそういうライブが初めてなので結構新鮮だった。僕自身は撮影するかどうか結構迷ったが、今回は見送りにした。集中できる気がしなかったので。

 音出し、事前の確認を終え、ほどなくして客電が落ちる。楽器隊の面々から入場して、最後にキタニ本人が入場。ツアーグッズの緑色のロングTシャツを着ていた。特に礼をすることも笑みを見せることもなく、沈黙。微かにノイズのような音が聞こえたかと思うと、重たいギターの音からまずは”聖者の行進”!

 キタニをライブで見るのは初めてだったがめちゃくちゃ歌が上手かった。あと客を煽動するのが馬鹿みたいに巧み。シンガロンさせる部分とさせない部分を上手いこと使い分け、客に適度に参加を促しつつ、魅せるところは自分で魅せる。長髪とピンボーカル特有の佇まいもあって、ロックスターというよりは"教祖"のような印象を受けた。僕はライブにおける一体感を強要されるのが苦手なのだが、キタニのそれはそんなに拒否反応が生じなかったのが不思議だった。どうやらそういう煽り方にも、本能的に不快なものとそうじゃないものがあるらしい。あたらしい発見

 そのまま去年死ぬほど聴いた前奏から繋がるは”PINK”。大好きな曲なのでめちゃくちゃ嬉しかった。これに関しては何も言うことない。最高に良かった。舌打ちもえっちだったよ。下手に間奏で観客に呼び掛けたりとか、そういうのが無くて良かった。カッコいいところはただただカッコいいだけだった。

 そして間髪入れずに”永遠”。EPのカップリング? でいいのかな? これもBLEACHの千年血戦編にめちゃくちゃマッチする壮大な楽曲。間奏のWoooの部分を歌った。  

 Rapport、タナトフォビア、スカーとBLEACHの世界観に完璧に合致する曲を3曲も作りながら、まだこんな曲の引き出しがあるのはさすがに天才と言わざるを得ない。引き出しがたくさんあるのか引出しの一個一個が尋常ではなくデカいのか定かではないが、ともかく今度からキタニタツヤのことは引き出しマンと呼ぼう

 

キタニ「お前らの声聴きたいわ」

 

 そんな引き出しマンの4曲目は代表曲”悪魔の踊り方”。結構(4割くらい?)客側が歌った気がする。ステージを右に左にと動き回るキタニが差し出すマイクに向かって、強い言葉を飛ばす観客。キタニの視点からは弱く見えたのかしら

 ライブハウスで聴く悪魔の踊り方による煽動の効果は凄まじく、いくらヒトリエが会場のボルテージを高めようとやはり今日の主役は彼、と言わんばかりの説得力があった。

 そして少し間を開けて今度は"パノプティコン"! これもミニアルバムでめちゃくちゃリピートした曲なので素直に嬉しかった。メロディに対する歌詞の乗っかり方とサビのリズムが好きすぎる。まったく救いようのない歌詞なのに満面の笑みで踊ってしまったことに罪の意識すら覚えたが、そんなの関係ねえと畳み掛けるように"化け猫"! 最近めちゃくちゃリピートしている曲だったので、これもまた僥倖だった。

 2サビ後、一回落して軽いラップパートに入る構成本当に、現代ポップスの旨味の上澄みだけを抽出しました、みたいな秀逸さを感じるんだけど、なんでこんなに騒がれてないのかが謎なんだよな これマジで好き。生で聴くとエロさ10割マシで余計にグッドだった。俺が女だったらもうダメになってる。出待ちとかしてる。

 

 立て続けに6曲を披露してようやくまともなMC。「RIVER FOG,CHOCOLATE BUTTERFLYの時の客の反応が良くて、こいつらヒトリエ詳しいな、古参マウント取れねえ」みたいな話してた。生放送でも思うがキタニは話がおもろい。

 

キタニ「シノダさん名古屋長いけど言っていいの? 名古屋マジ客来ねえんだよ!」

 

 これめっちゃ笑ったけど普通にびっくりした。メロコアの国だからか? もう名古屋なんか見捨ててずっと福岡に来てほしい。福岡でもっかいやろうこの日の対バン。俺がZeppもサンパレスもマリンメッセも全部抑えとくから。頼むわ

 

キタニ「まあヒトリエHugs Vol.5 Tourのインターネット代表と言うことで、確かに我々ニコニコ動画インターネット老人会ですけれども! 今日はみんな、キタニタツヤのライブ、ってだけじゃなくて、キタニタツヤとヒトリエの対バンだから来てくれたんだよね! 名古屋を滅茶苦茶にするためにヒトリエを呼びました、よろしくお願いします!」

 

 そんな最高のMCから続くは"Ghost!? (Bad Mood Junkie ver.)"。原曲のGhost⁉︎はサックスやピアノの音が特徴的だが、こちらはバンドサウンドが強めなスタイルとなっている。これは個人の好みだが個人的にはBad Mood Junkieバージョンの方が好き。よりロック色が強く感じられるのがたまらない。通常版Ghost⁉︎はどちらかと言うとホールとかアリーナとかで聴いてみたい感じはする。

 伸びやかにラストを歌い終えた後、ベースを抱えるキタニ、をよそに聴き馴染みの或るビートが鳴らされる。BIPOLAR収録曲が多いもんだと思っていたからまったくノーマークだったが、考えてみればインターネット老人会にここまで相応しい曲もあるまい、ということでキラーチューン”芥の部屋は錆色に沈む”! もともとこんにちは谷田さん名義でのリリースが初出であるこの曲、この曲がニコニコ動画に投稿されたころに彼をちゃんと認知したかった……バキバキのオルタナロックが肌に染み渡る 高い化粧水のように

 2サビ明けのキタニ自身によるベースソロがヤバすぎた。誇張抜きで会場が揺れてた。地震学に詳しくないからなんとも言えないが、マグニチュード換算で8万くらいはあったと思われる。めちゃくちゃテンションが上がった。

 

キタニ「みんなで歌いたいと思って作った曲です」

 

 そして、このオルタナの熱を受け継いだままのフロアにもたらす名バラード、令和のこの時代において、結婚式で尊いリア充の男の側が歌うべき曲ナンバーワンソングとして(俺の中で)名高い"プラネテス"! やはりこれきっかけで人気がさらに加速したみたいなところあるんだろうか。何も言うことなくめちゃくちゃいい曲なのでコメントに困る。「あのムーンリバー渡って~」のところをみんなで歌った。

 そのバラードの流れを崩すことなく”ちはる”。単純に季節にぴったりだし、薄桃色の照明が美しくも荘厳な曲調に合ってて、全フレームマジで"絵画"だった。チェンソーマンが、鬼滅が、ぼっちざろっくが、神作画だなんだと騒いでおりますがね、本当の神作画は3月12日の名古屋ダイヤモンドホールなんで。マジで。全員エアプ

 そしてその後ほとんど間を開けず、今度はギターを構えたかと思ったら、あのどことなくサイレンっぽさのあるイントロから"夜警"が始まる。ギターもベースも出来て曲も作れて編曲もお手の物平成生まれとか、マジでそこにいるだけで僕の存在価値を全否定している気がしてならない。ハイスぺ過ぎて腹立つ。でもカッコいい。くやしい。

 アルバムで聴くと他の曲の威力が強すぎてちょっと食われがちかな~とか思ってたけどマジでカッコよかった。ライブ版夜警最高。今度からライブ版夜警を聴いたことがある男マウントをとっていこうかな

 そしてそして上がってテンションそのままに今度は”トリガーハッピー”! ここまで聴いてなんとなくみんなで歌えるような曲を多くセトリに盛り込んだのかな、とか思った。声出し解禁されたんだったらまあそりゃ、そっちのが楽しい。どの曲も聴きごたえ満点のキラーチューン揃いなので、ゆったりしてようがバキバキだろうがどっちにせよ楽しい。しっかりとシンガロンまでやって終了。そしてピンボーカルで歌っていたキタニがまたギターを構えて

 

キタニ「次で最後です。アンコールはありません。ありがとうございました

 

 さらっとした前置きから劈くようなギターストローク、なだれ込む本日の大トリは"スカー"! 今のキタニによるギターロックの最高到達点のような一曲、テンションが上がらないわけない。というかライブが始まってから、テンションが「下がる」瞬間がない。青天井ぶち抜き、大気圏突破、オーバーフロー、俺達卍最強卍 2時間ずっとそういう感じ 人のテンションに、上限はない 人は皆、スポンジボブのハッピーセットのCMに出てた子供みたいな感情になり得る。俺はあの瞬間、スポンジボブに魅入られた子供そのものだった。実質キタニはハッピーセットのふろく

 間奏のちょっとしたギターをキタニが弾いてるのみて「カッケエ~~~」って声が出た。最後の秋好氏によるギターソロも鬼のようなカッコよさであった。この世のカッコいいがあの日あの瞬間、栄町のライブハウスに凝縮され、そして結実していた。世界はああいうところから始まるんだな、と思った。

 

 叩きつけるようにアウトロを弾き終え、小さく「またね」と言って去っていくキタニのカッコよさよ。そのまま客電が点灯し、まばらに観客がフロアの外に出ていく。とんでもねえライブを観たなあと若干放心状態だったが、スタッフに促される形で外に出た。

 両バンド共に無理にwowakaの話題を出すことが無かったのが本当に良かった。ただ純粋に力と力の、カッコよさと泥臭さとソリッドさのぶつかり合いを見せつけられた、その清々しさが心地よかった。変に湿っぽくならず、頭空っぽにして楽しめた。

 自分の信じたバンドは今日も今日とて最高にカッコよかったし、自分がここ何年かでハマりにハマったアーティストも自分の想像を優に超えたカッコよさを見せつけてくれた。本当に楽しい対バンでした。また相まみえることを、そして僕がその現場を目撃できることを心から願っています。

 

 

タニタツヤ "Hugs Vol.5 Tour"@2023.3.12 名古屋DIAMOND HALL【w/ヒトリエ

セットリスト

 

ヒトリエ

01.3分29秒

02.ゲノゲノゲ

03.ハイゲイン

04.風、花

05.RIVER FOG,CHOCOLATE BUTTERFLY

06.Neon beauty

07.トーキーダンス

08.アンノウン・マザーグース

09.イメージ

10.ステレオジュブナイル

 

タニタツヤ

01.聖者の行進

02.PINK

03.永遠

04.悪魔の踊り方

05.パノプティコン

06.化け猫

07.Ghost!? (Bad Mood Junkie ver.)

08.芥の部屋は錆色に沈む

09.プラネテス

10.ちはる

11.夜警

12.トリガーハッピー

13.スカー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけ

 終演後のロッカー前にて

 

 

観客「ヒトリエ正直一曲も分からなかったけどさあ……」

俺様「😠😠😠」

観客「アンノウン・マザーグースえぐかったわ!!!」

俺様「😊😊😊」

 

 

 楽しかったです名古屋 また来ます