愛の座敷牢

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領域展開しようぜ!

 ひさびさのビンゴ記事です。前回はこちら

 そろそろむずかしいお題しか残ってない。

 

 

※注意

 以下は少年ジャンプ連載の陰惨battle漫画『呪術廻戦』を読んでいないと全く理解の出来ない記事です。読んでない人は今すぐに読むか、我慢してこの記事を読んでください。

 

 

 という他者に面倒を強要する「縛り」によってわたくしの術式効果を底上げしたところで、今回のお題に移りましょうか。もうそのまんまです。

『領域展開:(アルバム名)』ですって!

 あーあ! こんなアダルトな記事しかない、アダルトな読者しかいないブログでジャンプネタなんてもうねえありがとうございます本当に。当方、週刊少年ジャンプを購読して早15年の根っからのジャンプ大好き27歳です。ジャンプより付き合いの長い友達がいない

 というわけで、ここから先は呪術廻戦を現在連載分まで読んだ人しかいない、という前提で話を薦めるのでよろしく頼みます。「そんなん知らんからフィーリングで読むわ」という世界一無謀な方向けに一応簡単に説明しておくと『領域展開』というのは、呪術廻戦に登場するキャラの中でもトップクラスの戦闘力を有する奴らしか使えない、呪術廻戦の戦闘における「奥義」です。BLEACHにおける卍解、ワンピースにおける覇王色の覇気、ポケモンにおけるメガシンカダイマックス もう分かったね、出したら大体勝てるし出されたら大体負けるやつだよ

 説明終わり! こっからはノリで書くからよろしく

 

 

 

 

 

 領域展開

 

 

 

  

 ズギュウウウウウウウウウン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1.展開

 

 術式を展開すると、術者の頭上に両脚で電球を掴んだミミズク型の式神と、巨大な右の掌型の簡易領域が出現する。掌型の簡易領域は術者の足元に出現し、術者の動きと連動して、術者を乗せるような形のままで動く。ミミズク型の式神は術者の意志に従ったり、従わなかったりする。ごくまれにミミズク型の式神は逆さづりになった投手(バスケットシューズを履いている)になったり、森鴎外マーティン・スコセッシを雑にコラージュしたような肉人形になったりする。後述する式神の能力自体は変わらない。

 掌型の簡易領域は殆ど「シン・陰流」の簡易領域と同等の性質を持ち、他者の領域によって付与された術式の必中効果を中和できる。この簡易領域内は他者が自由に侵入することが可能。領域内は約49分間で1ループする謎の音楽が大音量で流れ続けている(術者の鼓膜は呪力によって適度に守られる)

 この「領域内で流れている音楽」が術式の根幹であり、ミミズク型の式神はその音楽の術式を増強するためのいわば「スピーカー」、電球は音楽に合わせて自在に色を変え光り輝く「スポットライト」と言える。延々と鳴り響く音楽と明滅するフラッシュによってテンションの上がった術者本人のバフと、何が何だか分からない相手への視覚・聴覚へのデバフがこの術式の基本仕様となる。

 ミミズク型の式神は術者が命令をしない限り、術者を中心とした半径1.1kmの範囲内を自由に飛び回り、件の音楽を大音量で流し続ける。その音量は式神に近づくほどに上昇し、最大で150dBにもなり得る。これは常人では鼓膜が破れる音量である。それを守るために耳に呪力を集中すると、今度は術者の徒手空拳に対応しづらくなるという地味な厄介さがある。また、後述する術式の効果は聞こえる音楽の音量が大きければ大きいほど上がるという性質があり、相対する人間(以下「対象」と記述する)は術者本人とミミズク型の式神双方の距離感を意識して戦闘を継続しなければならない。

 

 

2.術式"Catcher In the Spy"

 

 この術式は前述の通り「49分間で1ループする謎の音楽」が核となっている。術者の領域、そしてミミズク型の式神から鳴り響くこの音楽は、原則として「やたら高い声のボーカル」「おおよそ1人で弾いているとは思えないエレキギター」「ウザいくらいに主張の強いぶりぶりのベース」「死ぬほど上手いドラム」によって構成されており、聴き馴染みの無い人間からすれば「騒音」としか判断されないようなものであるが、そういうことを素直に言うと術者が激昂して大変なことになる。

 この「49分間で1ループする謎の音楽」は12のセクションに分かれており、分割されたセクションのひとつひとつを「曲」と呼ぶ。この「曲」はそれぞれ雰囲気が全く異なり、術式の効果そのものも大きく変化する。この「曲」の順序は術者によっても変えることは出来ず、「曲」を早送りにしたり、スキップしたりすることも出来ない。また術者がその「曲」それぞれの術式効果を自由に扱えるわけではない。あくまで術式の効果は「曲」の進行に依存する、いわば「イベント」のようなものであり、この術式は「曲」の進行によって発生するイベントを、術者と対象に強制する術式と言える。

 この「曲」にはそれぞれ盛り上がり、いわゆる「サビ」が存在し、それが流れている間は術者の呪力が無尽蔵に溢れ続ける状態となる。ただし、この効果は相手が「サビ」を認識すると相手にも適用される。こういう部分は「坐殺博徒」とよく似ている。

 以下に「曲」ごとの術式の効果(イベント)を一部記載する。

 

 セクション1

 長さは2分54秒。 術式を展開したと同時に流れ出す楽曲。重厚かつ疾走感のあるギターの音色を基調としたスピーディな曲。

 

 0:00 術者後方に巨大な赤子の頭部が現れ、ニタニタと笑う。

 0:20 赤子の頭部が5つに増える。もう笑っていない。

 0:30 無作為の地点に学生服姿の森鴎外マーティン・スコセッシが出現する。

 0:41 上記二人が楽しそうになる。

 0:46 尋常ではないくらい退屈なテレビ番組が放映される。

 0:55 ホワイトアウトする。上記の登場人物がすべてリセットされる。

 1:00 どこからともなく現れた銃火器が対象を蜂の巣にする。

 1:09 一定のIQを有する人間を対象にしていないテレビ番組が放映される。

 1:22 なんかめっちゃ光る。

 1:26 銃声。

 1:31 どこからともなくぬるま湯があふれ出し、対象が身体を冷やす。

 1:36 DA☆

 1:50 霊媒師が今日の運勢を教えてくれる。信憑性は朝の占い以下。

 1:54 対象の頭の上に水晶が乗せられる。楽しそうにしなかった場合、死ぬ。

 2:07 忍者が現れる。特に害はない。

 2:17 砂嵐の画面を観ている方が有意義な時間を過ごせるテレビ番組が放映される。

 2:23 上記のテレビ番組の音量が200dbを超える。

 2:31 なんかめっちゃ光る。

 2:36 銃声。

 2:43 どこからともなくぬるま湯があふれ出し、対象が身体を冷やす。

 

 

 セクション6

 長さは3分26秒。中盤で流れる曲。どことなくとぼけた雰囲気のリズム隊と、その中で軽快に鳴り響くギター、そしてなにより後述するイベントの理不尽さが特徴的な曲。

 

 0:11 術者後方に自由の女神が現れる。

 0:15 おもむろに唐揚げにされる。

 0:28 上記への疑問を呈した場合、上空から身体を打ち付けられて即死する。

 0:33 バスケットシューズを履き潰した投手が、マウンドにて華麗に倒立を決める。

 0:41 上記全てが主審判断によりなかったことされる。0:28で死んだ場合も生き返る。

 0:44 ハリクマハリタ。少女時代への憧憬。

 0:56 時間遡行、もしくは跳躍。数秒~数分前に巻き戻ったり、数秒~数分後にジャンプしたり、何も起こらなかったりする。ポンコツで無様である故の、仕様

 1:11 道理摂理蹴っ飛ばされ、異論を全てシャットアウトされた後に、どうしようか?と問われる。明確な回答がない場合、死ぬ。

 1:21 自由の女神像が崩れ、代わりにたくさんの野生生物がそこら中からあふれ出る。

 1:28 愛とチョコレートが配布される。拒否した場合、死ぬ。

 2:14 時間の法則が乱され、全ての秩序が崩壊する。

 2:23 地球のどこかのコールセンターに通話がつながる。明瞭な質問が出来ない場合、死ぬ。

 2:43 時間遡行、もしくは跳躍。数秒~数分前に巻き戻ったり、数秒~数分後にジャンプしたり、何も起こらなかったりする。ポンコツで無様である故の、仕様

 2:58 時間遡行、もしくは跳躍中に時空の壁にぶつかったりぶつからなかったりする。ぶつかった場合、三次元と四次元の狭間の空間に取り残され、この世から「存在」そのものが消える。非常に危険

 3:10 Bon voyage. 特に理由は無いが、死ぬ。

 

 

 セクション10

 長さは3分46秒。全セクションの中でも特に際立ったゴリゴリ感と、色んな意味で血の気の多いイベントのラッシュが特徴であり、必ず相手を殺すという意志が感じられる特に危険な曲。

 

 0:07 "Who is normal in this show?" の絶叫と共に、術者の後方に巨大なルーレットが出現する。以降のイベントはルーレットの出目によってダメージが大きく変わる。

 0:21 無数の紙幣がばら撒かれる。どこからか怒号、ボスを呼ぶ声。

 0:34 四方八方から新鮮なトマトが投げつけられる。出目が悪いと死ぬ。

 0:40 術者、相手、ルーレットの均衡が崩れ、術式が一瞬不安定になる。これは術式の使用上どうしても起こるバグのようなものらしく、端的に言うと「謎」

 0:46 SHAKE!

 0:55 以上を全て成り行きに任せることで術式を安定させる。

 1:00 信じられない勢いでルーレットが回転し、ボールが1個投げ入れられる。赤のポケットを「天国」黒のポケットを「地獄」とし、ボールが赤のポケットに入った場合術者に、黒のポケットに入った場合相手に、無限の「退屈」が押し寄せる。

 この「退屈」は強烈な時間感覚の延長、雑に言うと五条悟の「無量空処」に性質は近く、この「サビ」が終るまでの数十秒間を数年間に感じるほどに体感時間が延長し、その間全くの身動きが取れなくなる。コンマ数秒の駆け引きが勝敗に直結する術師同士の戦闘においてはあまりに致命的な時間であり、決まればほぼ勝ちと言える。

 救済策として「退屈」に呑み込まれた約10秒間以内に、この「退屈」が無作為に提示する問いに、揺るがない条件・確かな理由を挙げて解答することで硬直から逃れることが出来る(この解答時間は硬直時間に含まれず、正確な解答が出来た場合はボールがポケットに落ちた直後の状態に戻る)。ただこの「問い」は大抵理不尽なので、初見では大抵確定で硬直する。術者もたまに解答をミスってスタンする。

 1:26 今夜も駄々騒ぎが始まる。出目が悪いと死ぬ。

 1:36 巨大な掌で転がされていたダイヤモンドが無作為な方向に超高速で射出される。出目が悪いと死ぬ。

 1:46 相手が女性だった場合無条件の攻撃権が与えられる。

 1:50 ルーレットの出目によってプレゼントが配布される。出目が悪いと死ぬ

 1:55 すっごいエリート然とした、財が有り余る殿方が現れる。出目が悪いと圧倒的財力で撲殺される。噂ではこいつが「ボス」らしい。

 1:58 常軌を逸した勢いでルーレットが回転し、ボールが1個投げ入れられる。赤のポケットを「天国」黒のポケットを「地獄」とし、ボールが赤のポケットに入った場合術者に、黒のポケットに入った場合相手に、無限の「退屈」が押し寄せる。

 今回は与えられた時間内に質素と善行を重ね、その行いを褒められた際に謙遜することが出来れば硬直を免れる。与えられた時間と求められる善行のノルマはランダムに決められ、育ちが良いほど高いレベルの質素と善行を求められる。

 2:21 大人を嘗めるな、と一喝される。出目が悪いと死ぬ。

 2:24 気楽な駄々騒ぎが始まる。出目が悪いと死ぬ。

 2:41 on the bassのfakest beat! 出目が悪いと死ぬ。

 2:45 on the drumsのclever shors! 出目が悪いと死ぬ。

 2:49 same timeでchaotic show! 出目が悪いと死ぬ。

 3:02 OK people one more time? セクション10内のイベントで任意のものをもう一度繰り返す。

 3:03 おおよそ正気とは思えない勢いでルーレットが回転し、ボールが1個投げ入れられる。赤のポケットを「天国」黒のポケットを「地獄」とし、ボールが赤のポケットに入った場合術者に、黒のポケットに入った場合相手に、無限の「退屈」が押し寄せる。

 3:29 三度目の駄々騒ぎが始まる。もうこの辺からわけがわからなくなる。

 3:31 対象が「若人」だった場合、花盛りなので許される。それはそれとして出目が悪いと死ぬ。

 

 

 

3.領域展開"既勃発事件"

 

 掌印は弁才天印。

 領域展開を行う上でのこの術式特有の「縛り」として、流れている音楽を相手が聴いていることが一つの条件となっている。何らかの理由で相手が聴覚機能を遮断・喪失していたり、強い呪力によって耳を守っている場合、領域内に閉じ込めることは出来ない。この「縛り」を代償に、この術式は領域を展開せずとも「イベント」によってある種、その空間を支配しているかのような攻撃と、後述する多様な生得領域が可能となっている。

 この術式の領域は、今現在流れている曲のイベント情報を生得領域に添加することで、その「曲」を素体としたものとなる。セクション1の状態で領域を展開すればどことなく近未来なビル群が立ち並び、セクション8で領域を展開すれば宇宙空間に鉄道が走っている様な空間となる。

 領域展開中は12曲ではなく領域展開していたそのセクションが単体で無限にループするため、領域を解除するまでその曲のイベントを何度も繰り返すことになる。その仕様上、術者からは「リピート再生」と呼ばれたりする。一度そのセクションで領域を展開した場合、一度領域を解除するまではセクションは移行しない。

 この術式に付与される必中効果は相手に攻撃判定が発生するイベント全般であり、セクション1の銃火器乱射、セクション10のトマト投げつけ、セクション12の自動車急襲などが該当する。ただ、術者もろとも対象を致死性のイベントの数々に理不尽に巻き込んで攻撃する術式という関係上、音楽を聴いている以上ある程度の必中効果をすでに有しているため、その点では比較的恩恵は薄いともいえる。この領域の真髄は、そのセクションを文字通り「自在に」操れることにある。

 通常この術式において、セクションそのものを弄ることは術者にすら出来ないが、術者は領域内においてはそれが可能となる。具体的に言うと巻き戻しや早送りの使用である。

 セクション4の焼却炉放り込み攻撃、セクション7の隕石落下爆撃、セクション11の呼び出しボタンによる降神など、この術式の音楽には強力を通り越してもはや理不尽とさえ感じさせるイベントがちらほら存在するが、巻き戻し効果を使用することでその全てを無制限に、何度もお見舞いすることが出来る。またそこまで効果の薄いイベントはスキップすることで、手早く強力なイベントの乱打に移行することが可能であり、狙ったセクション内で領域を展開すれば文字通り一方的な蹂躙が開始すると言っても過言ではない。また「音」を主体とする術式である以上、相手が聴覚で認識していればそのままこの領域に引きずり込めるため、領域同士の押し合いにめっぽう強いという利点がある。

 余談だが、この術式の非常に珍しい特性として、特定の場所にて領域を展開すると、既存の12セクションの順番が通常と変化した上で、新たな曲がいくつか追加されることがある。その「場所」は全国に26か所存在し、術者はそれを「聖地」と呼んでいるらしい。「聖地」で領域を展開した場合はセクション単位でループすることなく、単純に普段の術式が強化されるような形になる。

 

 

4.弱点

 

 このように非常に強力かつ多彩で、なにより理不尽極まりない術式ではあるが、その特殊性ゆえにいくつかの明確な弱点が存在する。

 まず、この術式がすべて「音」を根幹としていること。

 狗巻家相伝の術式「呪言」がそうであるように、言霊、音に特化した術式の宿命として、耳から脳にかけてを呪力で守られると術式効果そのものを無効化される。これは領域展開時でも例外ではなく、そもそもこの音楽を聴いていないと領域に引き込むことも出来ない。だからこそ「呪言」は対呪霊に特化した術式とされるのだが、この「Catcher In The Spy」は「呪言」と同じような性質を有しながらもどこまでも対術師に特化した術式であるため、かなりちぐはぐだと評される。なので、手練れの術師には比較的容易に対策されがちではある。

 また、耳から脳にかけてを呪力で守るという対策の他に、聴覚を意図的に遮断するという対策も有効である。過去にこの術式と相対した際には自ら鼓膜を潰して対策を講じた術師も確認されている。反転術式の使用が可能な術者は一時的に自らの聴覚を自身の手で物理的に遮断することで、この術式に対応することが可能。

 ただこの弱点は術師側も深く認識しており、それをさせないために徒手空拳や呪具などで間を潰し、多角的な攻撃で攻め立てることで相手の呪力操作を不安定にさせ、術式に上手く引き込むように立ち回る。

 

 また、性質上この術式は、術者自身も完全なコントロールが出来ない。

 前述の通りこの術式は、セクションの進行によって発生するイベントを、術者もろとも相手に強要する術式である。術者は術式で発生するすべてのイベントを把握しているとはいえ、イベントの中には対処法が術者自身でも「気合で回避する」以外の選択を取れないものも存在するし、セクション10にいたってはルーレットの出目次第では術者自身も問答無用で死ぬ。この術式の初見殺し性能と圧倒的な理不尽さは、術者もこうして巻き込むことによる「縛り」によって成り立っている部分があるためどうしようもない。

 

 そして最大の弱点として、セクションごとのスキップが出来ないことが上げられる。

 理不尽の極致点であるセクション6、殺傷能力の臨界点であるセクション10と、術式に巻き込めさえすれば一瞬で叩き潰すことが出来るセクションもある一方、陽気で快活だが危険性は低いセクション3、どこまでも優しいセクション5、一般人が死ぬまで追いかけて来るだけのセクション9など、セクション全体を通しても殺傷能力が低いものもあり、そのセクション中はイベントに期待が出来ないため、術者自身の攻撃のみで立ち回る必要がある。

 特に殺傷能力の高いセクションは2・6・7・10・11が該当するが、セクション2に到達するまで約3分、セクション6に到達するまではなんと21分の時間を必要とする。「サビ」突入状態の呪力の無尽蔵化によって実質的に不死身となることなどを利用すれば、戦闘時間を意図的に長くすることも不可能ではないが、術式の詳細を理解している相手術師が危険性の低いセクション中に畳みかけることは定石であり、不利な事にはかわりない。特にセクション5は全体通しても相手に害を与えるという意志が全く持って感じられない上にその長さも約6分間と全セクションの中でも一番長いため、ここで攻め立てられると非常にもろい。

 領域展開時もその時に流れている「曲」を生得領域に反映する為、任意のセクション中に領域を展開しないと術者の思ったイベントが発動できない欠点があり、例えばセクション10を領域として使用したい場合は、術式の進行がセクション10にいたるまで待たねばならない。

 

 このように、極めて理不尽な術式ではあるが、その理不尽に至るまでがなかなかに困難であり、最大限にこの術式を運用するには術者本人の素の強さが肝要であることが分かる。非常に扱いの難しい術式といえよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 記録

 20■■年■■月■日  ■■県■■市

 

 任務概要

 同県における一般人の連続廃人化事件の調査

 

 任務担当者

 ■■■■(当時準一級呪術師)

 

 15:35 近辺の調査によって、残穢から呪詛師【検閲により削除】によるものだと断定

 16:00 呪詛師【検閲により削除】の情報を担当者に開示。

 16:35 ■■市■通りアーケード街において呪詛師【検閲により削除】を確認。

 16:42 近辺の補助監督によって”帳”が下ろされる。

 16:44 戦闘開始。

 16:50 呪詛師【検閲により削除】が術式を展開。

 17:11 呪詛師【検閲により削除】が領域を展開。記録されている術式効果との相違点が確認され、この場所が「聖地」であることを特定。担当者は簡易領域で中和しようとするも、”分からず屋には見えない魔法”によって視覚情報を乗っ取られ、領域に引き込まれる。

 17:12 そのエネルギッシュかつソリッドなパフォーマンス、たった三人のトライアングルで掻き鳴らされているとは到底思えない重厚なサウンド。圧倒的ステージングでこの場を支配する彼らの音楽からもはや逃れる術はなく、始めは懐疑的だった心も次第に支配されていく。ハイトーンなボーカル、エッジの効いたフレーズライン、主義主張の逞しいベース、異次元のテクニックのドラミング。三者三様のストイックな佇まいに、ロックバンド有するロマンがこれでもかと凝縮されている。

 ”シャンデリア・ワルツ”でヒートアップしたフロアの熱を受け継ぐかのように披露される"蒙昧termination"では毒々しくもリズミカルなビートが観客を揺らし、"WINDOW開ける"のどこまでも音楽に対して愚直に真摯な姿は観客の身体だけでなく、心も同様に震わせているのは言うまでもない。そしてエモーショナルな空間を切り裂くようなギター、炸裂する”シューゲイザースピーカー”!! もはや言葉はいらない、俺達はこのあまりに激烈な音楽の奔流に、振り回されるだけの、ただの、木片――――

 19:48 "帳"が破られる。

 20:01 補助監督が担当者を発見。よだれを垂らし、どこか恍惚とした状態で立ち尽くしており、専門医はこれを呪詛師【検閲により削除】の術式の能力だと断定。

 呪詛師【検閲により削除】の姿は確認できず、逃走したとみられる。