【00.What is Montage?】
ご尊顔を1個パチリ
ヒトリエの記事かな? それともフォーリミの記事かな? と思った方は申し訳ない。泣く子もオラつく中野初のやべー奴らこと、UNISON SQUARE GARDENの記事である。ひいてはCatcher in The Spyの記事である。というか全編Catcher in The Spyの記事である。どうでもいいけどこいついつもCatcher in The Spyの話してんな……
なんと本日2020年8月26日でCatcher in The Spyは発売6周年を迎えるそうだ。おめでたいですね。何よりもおめでたい。宇宙の誕生よりもおめでたい。国際的に祝日に制定してほしい。
このリリースされた瞬間地球上全てのアルバムを過去のものにした伝説を持つ宇宙的大ヒットアルバムがこの地球上に爆誕してから、もう6年が経過しているというのだ。Catcher in The Spy、6歳。来年から小学生である。かわいいね。こんなに年月が経っているというのに人類はまったく成長の兆しを見せず嫌になる。もっとこう、背中からホチキスとかバズーカとか孫の手とか、そういうアヴァンギャルドなのが生えればいいのにね。肩甲骨て。無印良品かよ。
というわけで栄えある我らがCatcher in The Spyのお誕生日、盛大にお祝いでもしようと思いたったのだが、さて何をするかと考えた結果こうしてキーボードを叩いている次第である。Catcher in The Spyの「py」にでも掛けてアップルパイでも焼くか?? とか一瞬考えたが、そもそも僕はアップルパイなんて焼けないし大前提としてウチにはオーブンがない。あったとしてもアルバム発売記念日におもむろにアップルパイを焼く奴はファンというよりはただのアップルパイが好きな人である。第一僕はアップルパイが苦手だ。というかそもそもりんご自体そんなに好きではない。アップルパイが苦手なのにアップルパイを焼く奴はもうファンでも何でもなく、ただSNSでちやほやされるためにりんご農家の込めた丹精を一切の容赦なく踏みにじりに行く、悪鬼羅刹も魑魅魍魎もディオニスも裸足で逃げ出すほどの、暴虐極まりない承認欲求の塊である。そうして苦労して焼いたそこそこな出来のアップルパイの写真をSNSに上げたところで、「Catcher In The おっぱい」とか言いながら乳首をCDで隠した巨乳の自撮り垢にすべてにおいて敗北して世間から見捨てられて職を失い友を失いやがて家族とも離れ離れになって一人遠い異国の地にて病院の窓から枯れ葉一つ付いていない細い木を横目に見ながら虚しく死ぬのだ。人生とは時間の浪費である。この結末も、この文章自体も。
絵も描けないし楽器も弾けないし字も汚いし声も歌も凡庸、アクセも作れなければ音楽の専門知識も有さず、そもそもそれを人前にドヤ顔で披露できるほどの実力を得るための努力も出来ず(過程を飛ばして実力だけもらえるのなら喉から千手観音がまろびでるほど欲しい)ついでに5000兆円ももたない、食パンの袋を留めるあの内股気味なプラスチックに背丈しか勝てるところがないクソザコの最後の逃げ場が文章である。何も成せぬド素人が何かに愛が伝えたければ文章を書くしかないのだ。
Catcher in The Spyもこんな前置きの長いバカに約6年も飽きることなく好かれてさぞうんざりしていると思うが、今日くらいは祝ってもそんなにバチがあたらないと思うので盛大に祝わせてもらおうと思う。書くぜ~超書くぜ~~
というわけでここ5日間くらい何を書こうかかなり迷ったのだが、本当にいろいろな案が出たのでそれらからいくつかテーマを厳選して、それぞれのテーマに沿ってエッセイのような、そうでないような、というかただの妄想のような文章を書いてまとめてみた。タイトルの"Montage"とはそういうことである。いろんな断片の切り貼り。つめあわせ。
そこそこ真面目に書いたものもあれば、こいつは何を言ってるんだ? と自分の文章に首を傾げたくなるもの、ただの感想、どう考えても中身のないものなどよりどりみどり(よりどりみどり?)な12編を書き下ろした。今回何となくだが自分なりにそれぞれ気色の異なるものが書けたような気がしているので、どことなくアンソロジーな雰囲気が出ている。1人でCatcher In The Spyのアンソロジー。書いてて悲しくなってきた。
全編一気に読むもよし、1日1編ずつ読むもよし、読まないもよし、読んだ後僕のTwitterをフォローするもブロックするもよし、煮るなり焼くなり崇め奉るなりどうぞお好きにして頂ければ幸いであるが、読み終わっても終わらなくてもそんなの別にどうでもいいので今日1回はCatcher In The Spyを通しで聴いてほしい。そして僕にCatcher In The Spyの好きなところを教えてほしい。語ろうぜ
というわけで前置きが長くなりましたが以下本文
(イヒヒヒヒ……ウフフ アヒヒ ウフフ(ンフフ) ウフォアハハハハ(ヒィハハハハ) ハ イヒヒ……アハハハ…………)
「Catcher In The "Montage"」
【01.顔】
Catcher in The Spy収録の12曲の中で、アルバムの核、もとい顔となるのはどの曲なのだろうか。曲者も曲者が揃いに揃ったこの極めて濃厚なアルバムの中で、万人の異論も違和感も無く「主役」の看板を張れる曲。大学でCatcher in The Spyについて専攻している学生諸君を毎年悩ませる、未だ結論の出ていない大変に難しい問いである。
どの曲が欠けてもCatcher in The SpyはCatcher in The Spy足り得ない、ということを大前提に置きつつも、やはりユニゾンのアルバムにはそれぞれ「コンセプト」のようなものがあり、そのコンセプトに沿って収録される楽曲も曲順も決められているのだと思うと、それに一番合致した曲こそが核と言えるのではないか。「CITSで一番好きな曲はこれだけど、アルバムの顔は【○○】だよね~」のような、日常何気なく行われる会話の中での絶対的な回答を導き出すことは、人類にとっての偉大な一歩足り得る偉大な発見だと思うのだ。詳しくないけどきっと地球温暖化対策とかそういうのに絶対役立つ。
というわけで真面目に考えていきたいのだが、まずCatcher in The Spyという崇高かつ音楽史に残る大傑作であるこのアルバムの、背骨となる「コンセプト」とは何か。個人的にはもう至極シンプルに「なんかメッチャかっこいい」だと思う。泣く子も怒る老人も等しく頭を振り魂を燃やしてしまう、老若男女素人玄人問わず熱くさせる理屈を超えた異次元のカッコよさ。ヤバさ。多彩さとか、ふとした瞬間に見せるやさしさとか、そういうのも大きな魅力ではあるがあくまで副次的なものに過ぎない。まずその尖り方。極端さ。鋭角さ。ここである。血液と焦燥、殺伐と鋭利が束になり、こん棒とエモーショナルを抱えて一斉に殴りかかってくるバチバチ感こそがCatcher In The SpyをCatcher in The Spyたらしめる。
それを念頭に置いて考えると、桜のあととハモナイのシングル曲2つは「顔」ではないなと思う。大事な役回りの2曲だが、Catcher In The Spyの主役ではない。主役を食いかねないほどにギラついた助演である。こらそこ目立ち過ぎです!
同じような理由で君が大人になってしまう前に、メカトル時空探検隊、何かが変わりそう、instant EGOIST、黄昏インザスパイも主役ではない。わかる、わかるよ、書いている僕の心が一番痛いからモノを投げないでください。そういう時こそRADWIMPSの学芸会を聴きなさい。彼らがいないと始まらないんですよ彼らの世界は。
というわけで主役の座は残り5曲、サイレンインザスパイ、シューゲイザースピーカー、蒙昧termination、流れ星を撃ち落せ、天国と地獄に絞られるのだが(ここのラインナップだけで高血圧になって死にそう)独断と偏見で蒙昧terminationには一歩下がっていただきたい。あくまで個人的な話だが、どうも彼は感覚的にちょっと立ち位置が違う。田淵に言っといてなんて言わなかったら分からなかったな、メタ発言はちょっとな……
これにて残り4曲になるのだがここからがまー絞れない。地上最強の切り込み隊長ことサイレンインザスパイか、圧倒的パワーでいきいき笑顔な核弾頭シューゲイザースピーカーか、単純なイントロの力強さなら頭一つ抜けている流れ星を撃ち落せか、世界を煮沸消毒する冥府のテーマソング天国と地獄か。いろいろ考えたんだけと絞り切れなかったのでこの4曲が顔ということでどうでしょうか。もう顔が4個でも12個でもどうでも良いじゃないですか、レポートが0点でもいいじゃないですか、インドの神っぽくて強そうだし
【02.顔・2】
Catcher in The Spyの中で一番モテそうな曲はどれか。
桜のあとが単純に考えれば一番モテそう(画面に映るたびに背景に薔薇とか咲いて小鳥とかと話せちゃうサラサラ王子様系なので)だけど、わざわざ乙女ゲーとしてCatcher in The Spyを選ぶ女子は大抵偏屈なので、Catcher in The Spy狂いの中では桜のあとは意外とモテないのかもしれない。ただ渋谷で12人並んで立ってたら真っ先に芸能スカウトに声を掛けられるのは桜のあとだと思う。それは認める。
Catcher in The Spyの民にモテる顔面をしてるのは【01.顔】でも書いた通り4曲なんだけど、天国と地獄に関しては血の付いたナイフを24時間舐めてそうだから実際にモテはしないだろうなと思う。写真映えがいいのでSNSのフォロワーはめちゃくちゃ多いけど実際会うとやべーやつだからだめだ。大きく露出した左の胸筋から和風の刺青がチラ見えしてる。女子供が近づいたら比喩抜きで食われてしまいそう。
シューゲイザースピーカーは大変に良い線を行くと思うが若干我がつよいところが気になる。彼女の意見を聞かなそうだ。足元が見えるから十分とか言いながら夜間でもガンガン無灯火で運転しそうでもある。まともそうな雰囲気を醸し出しておいてやっぱりどこかヤバイ。尻をぶっ叩いてくれる気の強い女性と幸せになってほしい。
サイレンインザスパイは性格は無論癖ありだが、性格より何より冒頭でも分かる通り子持ちなので、容姿云々以前にそもそものハードルがかなり高い。修羅の道を行きたい女性におすすめである。流れ星を撃ち落せは顔も性格も良いが若干後先考えない質が見え隠れするので、きっと高いディナーを文句言いながら食った後に財布忘れてそのまま逃げてしまったりする。あと些細なことですぐに会社を辞めたり情緒が不安定になるので意外とこの人も難がある。harmonized finale、及び君が大人になってしまう前には……ほとんど満点なんだけど、桜のあとと同じ理由で偏屈どものお眼鏡に今一つかなわない可能性があるのと、俗にいう「優し過ぎる男はモテない」みたいな理屈で都合のいい人扱いをされてしまう危険性がある。なんか書いてて腹立ってきたな何様だコイツ
なんだかんだinstant EGOISTと何かが変わりそうがバランスよく無難にモテてしまうんだろうな、という感想を抱きながら、僕がおなごだったらきっと黄昏インザスパイと駆け落ちしてしまいたいと思ってしまうので難しいところである。Catcher in The Spyはどうなっても人生を狂わせる魔性を秘めている……
あ、蒙昧とメカトルは顔は抜群によくともマジで話が通じないので論外
【03.逓減】
限界効用逓減の法則というものがある。
ものすごーくざっくりかいつまんで言うと「ビールもコーラも一口目が一番美味しい」ということを示す法則で、夏の真昼の冗談みたいな暑さの中飲む、キンキンに冷えたコーラの一口目はまさに天にも昇るような美味しさだけど、飲み続けているうちにだんだん甘さと炭酸がくどくなって、350ml飲み終わるころにはもうコーラなんてこりごりになってしまうあの状態を示すらしい。
人間は与えられる幸福による刺激に「慣れて」いく性質があり、同じ幸福を与えられ続けても次第に得られる快楽が減っていくのだ。ほとんどの財やサービスに当てはまる人類の難題であり、俗にいう「マンネリ」の根源的な法則である。難儀な生き物ですね。アメーバとかを見習えばいいのに。
隠していたのでもしかしたら初耳かもしれないが僕はCatcher In The Spyというアルバムが、6年前に聴いた当初から今まで一切飽きることなく大変に好きなのだ。しかしよくよく思い返せば、初めて通しで聴いたあの時の衝撃はもう随分長いこと味わっていない。無自覚のまま、いつの間にか身体が慣れているのだ、Catcher In The Spyというアルバムの与える衝撃と、快楽に。微かに、しかし確実に、効用が、逓減している。
これは由々しき事態である。この無自覚の逓減が続くと100年後、2000年後にはCatcher In The Spyを聴いても「良いアルバムだな」としか思わなくなるかもしれない。これはまずい。熟年離婚の危機はすぐそこに迫っている。なんとかしなければ。
というわけで、Catcher In The Spy初聴時の衝撃をもう一度味わうにはどうすればよいか。簡単なところから行けば「記憶そのものを失くしてしまう」といったところか。記憶がなければ工夫もくそもない。下準備さえしっかりやれば何も考えずともレベル1快楽からまたリスタートできる。
手段としては筋骨隆々とした御仁に鈍器のようなもので後頭部をフルスイングしてもらう、許容量を超えたトラウマやストレスを味わいまくる、トラックで撥ねられるなどがあげられるが、どれも記憶云々の前に生命に関わりそうなのが玉に瑕である。最後のに至っては目が覚めたらたぶん地球ではなく剣と魔法が支配をする異世界に行くことになる。僕はCatcher In The Spy童貞を取り戻したいだけであって異世界転生がしたいわけではないのだ。
記憶喪失の選択肢はとりあえず置いておくとして、別の案として挙げられるのは「禁止期間を設ける」ことである。与えられる快楽に期間が空くと多少なりとも得られる快楽が増幅する。焼肉も寿司もたまに食うから美味いのだ。というわけで1週間禁止して見たが、みるみるうちに体調を崩してしまったのでこれはボツ。1週間でこれなので、1か月禁止されると自身の聴覚の怨念がサブマシンガンの虚像を作り出して全身にぶっこまれる未来が見える。Catcher in The Spyに心も体もCatcherされている……
他にも「聴覚以外の五感を閉じて聴覚依存度を上げ未知の世界に足を踏み入れる」「ヤバイ薬をキメる」「自分が歌唱した12曲を録音して自身のCatcher In The Spyカバーアルバムを作り、日夜聴き続けることでオリジナルを聴いた時の感動を極限まで増幅させる」など大変独創的かつ有意義な案は挙げられたがどれも今一つ現実性、継続性に欠ける。永続的にあの衝撃を味わい続けたい、というのはやはり贅沢なのだろうか。
もしこんな方法があるよ、という方がいたらこっそりと僕だけに教えてほしい。一緒にノーベル賞を狙おう。
【04.Sなとこが好き】
Catcher In The SpyはまごうことなきドSである。聴くハイヒール、耳で味わうムチ、鼓膜から熱を感じさせるロウソクと言っても過言ではない。サウンド面にしても歌詞にしても、健全でありながら嗜虐に溢れすぎている。癖になるのも無理はない。Catcher In The Spyを掲げ世を行く者は皆等しく憐れな豚である。だからこないだの配信ライブでキャンドルが出てきたときはもう不埒で大変申し訳ないんだけど息がめちゃめちゃに荒くなった。
僕は別にサドでもマゾでもどちらでもないが、ことCatcher In The Spyに関してだけ言えばまごうことなきドМである。文字の大きさで本気度を表現してみた。Catcher In The Spyに調教されてはや6年、今年も敬虔な豚でいられました。
サイレンインザスパイ、シューゲイザースピーカーなどの曲全体から漂ってくる攻撃的な雰囲気、「貴方のバランスなんて聞いてない」の放置プレイ感、歌詞の端々から感じるリスナー側に興味をもたないことを示すフレーズの数々、そのなかで微かに覗かせる甘さややさしさ、をすべて消し飛ばす「あーあ」のゾクッとするような冷たい声……
ライブでシングル曲以外はなかなかお目にかかれないそのレアキャラ感もまた、「お前如きにそうそう姿を見せるほど俺は安くない」と吐き捨てるように言われてる感があって寂しいけど、それはそれで、イイ…………いやよくない騙されんな、未だに根に持っているからな、8月22日の配信ライブ。もっとお顔を見せて!
しかしCatcher In The Spyがライブで披露されるキラーチューンばかりの、オリジナルアルバムとは名ばかりのベスト盤的アルバムだったらありがたみも薄れていただろうし、これくらいの距離感がちょうどいいのかもしれない。もっと聴かせてほしい、でも出来るだけもったいぶってほしい、これを絶妙な塩梅で叶えて「くれない」Catcher In The Spyの、そういうSなところも好き……
【05.真の姿】
僕の部屋にはヘッドフォンがない。というかヘッドフォンを買ったことがない。
なぜならiPhoneを買った時についてくるあのコード付きの白いイヤホン(earpodというらしい)で、ここ10年くらい満足しているからだ。というか普段は家にいるときはイヤホンすら付けない。エアコンや扇風機に負けそうな微妙な音量で垂れ流している。
もともと音質というものにそこまで強いこだわりの無い僕は、earpod以上の音質を求めようとはなかなか思えない。というか、怖い。現状の環境で聴くCatcher In The Spyでこれだけ騒いでいるのだから、メーカーが提示する最高品質のサウンドにて聴いてしまったらどうなってしまうのか、想像するだけで恐ろしい。サイレンインザスパイのイントロで内臓が破裂して死んでしまうのではないか?(ここでいうサイレンインザスパイのイントロとは幼女の笑い声のことです)(幼女の笑い声で死にます)
もしかすると僕が今までわーわー騒いできたCatcher In The Spyの姿は真の姿ではなく、まだ仮の形態だったということなのだろうか。まだ始解だったとでも言うのだろうか。この上に卍解があるとでも言うのだろうか。僕は今までネット上でCatcher in The Spyについて他の人と会話する際、僕だけ違う土俵でお話をしていたのだろうか。他の人はもうすでに最高の環境であのアルバムを聴いて正気を保っていたとでもいうのだろうか。そんなのは人間ではない、バケモンである。怖い。怖すぎる。僕の今までの6年間は何だったんだろう。返してほしい。僕の6年間を返してほしい。僕もバケモンの仲間に入れてほしい。でも今更Catcher In The Spyの真の姿を目の当たりにしたいとは思えない。本当に人に戻れなくなる気がする。しかし考えてみれば、今更人間という矮小で愚鈍な動物に未練などあったかと問われればそんなこともない。……成りたい。バケモンに。最高音質のCatcher In The Spyをキメて、超越したい。快楽の涯を。アッ、ヘッドフォンって1個3万とかするんですか、そうですか……
【06.メカトル時空探検隊】
メカトル時空探検隊が分からない。マジで分からない。
良い曲は良い曲なんだけど収録されている他の曲と表情と輪郭が違いすぎる。曲の雰囲気だけで言えばTK、345、ときてからのピエール中野くらいの違和感がある。歌詞も輪をかけて意味不明だ。どれだけ読んでも何の像も結ばない。履きつぶしたバスケットシューズのままピッチャーマウンドで倒立決められたら主審だって敬語しか出ない。ハリクマハリタとか言ってる場合じゃない。タイムマシンでも何でもいいからさっさと帰ってほしい。開き直るな。ちょっとは反省してくれ。
以前書いたこのアルバムへのラブレターを読み返しても、触れている文字数が他の曲より明らかに少ないのは本当にこの曲だけどうにも咀嚼できてないところにある。疑問すら上空に高飛び、道理摂理蹴っ飛ばしちゃう、で笑って許される範囲をとうに超えている。田淵智也さんもしかして三題噺メーカーとかで歌詞書いた?
「意味が分からない」「常識が通用しない」こと自体ががテーマだとするならもっと攻撃的に、それこそ流れ星を撃ち落せのような傍若無人なギターロックで攻め切ってもいいと思うのに、どこかコメディチックでつかみどころがないとぼけたサウンドになっているのも解せない。豆知識だが「傍若」は単体では意味をなさないそうだ。
ロックバンドに常識は通用しないぜ~常識は通用しないから時空だって超えちゃうぜ、みたいな曲だとなんとか解釈しているものの、やはりどこか釈然としない。やはり君だけは住む場所が違うのではないか、と思ってこの曲を抜いた状態で聴き流すとどうしても、君が大人になってしまう前に→流れ星を撃ち落せ、の流れの圧というか、雰囲気の急変化に戸惑ってしまう。曲単位で考えるとどうしても異色に感じてしまうが、アルバム全体で考えるととても大事な曲なのである。安心感が違う。カラーは異なってもやはりCatcher in The Spyの曲である。
いつかこの曲の真の意義を理解できた時、Catcher In The Spyはもう一段階化けてしまうと思うと楽しみでしかない。メカトル時空探検隊には無限の可能性が秘められている。Catcher In The Spyという途方もない金脈の中でも、一際神秘を感じる存在だと思う。
でも冷静に考えなくても、最後の「相談しよう、ヘイ!」はダサい。気の抜けたドラムもそれに拍車をかけてる。流れ星を撃ち落さなかったら結構な勢いでスベってたと思うので、つくづく持ちつ持たれつですね
【07.国際会議】
今年のCITS国際会議に参加する国はどこだったんだろう。
知らない方のために一応説明をしておくと、CITS国際会議とはCatcher In The Spyの良さを語り合うために世界各国から有名な専門家が集まり、それぞれ溢れんばかりの愛を語り合う大変に権威ある会議である。今年は生憎コロナウイルスの影響もあり大変残念ながら中止となってしまったので、参加国の発表もされていなかったのだ。あの時ばかりは悔し過ぎて泣いてしまった。おのれコロナ……
例年「サイレンインザなスパイになら国家機密を盗まれても文句は言えない(ロシア)」「生きる証拠実感したのは俺(イタリア)」「俺も入れたら五重奏(日本)」など数々の名言・迷言が飛び交うCatcher in The Spyオタク垂涎のこの会議だが、今年はまた新たな国が参加するという情報がリークされていた。新しい国の参加とはすなわち、新しい視点・新しい価値観の到来である。より多角的・多面的に解釈される新時代の愛を目の当たりに出来たのかもしれない。ひいては僕らの見識もさらに広がったのかもしれない。おのれコロナ……
果たして新しく参加予定だった国とはどこだったのだろうか。前提として、今まで日本、ロシア、イタリア、アメリカ、イギリス、フランス、中国、韓国、オーストラリア、インド、タイの11か国が参加していた。こう並べてみると、改めてグローバルな会議である。国家間の摩擦が絶えない昨今の情勢をよそに、これだけ国籍の異なる人間が一堂に会して未だ一度の諍いも起こってないことを思うと、Catcher In The Spyファンの民度がうかがえますね。
ファンの間ではアフリカのどこか、もしくはスペインだったのではないかと考察されている。特に期待されていたのはアフリカの方だ。サバンナで培った驚異的な視力で本質を射抜き、大自然で育んだ自由な思想で固定観念を覆す、Catcher In The Spyへのある種哲学的なアプローチを見せてくれそうな未知の大陸にオタクは極めて大きな期待を寄せていた。スペイン推しはただ「Catcher in The Spanish!」と大声で言いたいだけのアホなので無視してよろしい。
来年の開催が楽しみですね。
【08.ウラシマ効果】
最近知って驚いたのだが、Catcher In The Spyは通しでなんと50分弱しかないらしい。驚異のプレイタイム。体感3分しかないのに。それであの密度。濃縮還元にも限度があるぜ。
そう、体感3分しかない。つまりCatcher In The Spyを通しで聴いた時、自分では3分しか経っていないと思ったのに周りの時間は50分過ぎているのだ。つまり47分の差が、自分と世界の間に生じている。2回通すと94分、3回通すと141分。自分の中では10分も経過していないのに、世界の時間は2時間も進んでいる。次第に世界が早送りになっていく。音楽と同化しずれていく自分を置いて、秒針は異様に早く進み、人は早足に瞬間瞬間を去っていく。Catcher in The Spyと共に幾度も3分を踊っていると、世界は幾度も50分をいたずらに過ごし失っていく。
Catcher in The Spyを300回連続で通して聴いた。ふと部屋の時計を見る。自分の中では5時間が経過したように思っていたが、世界はもう10日も先を進んでいた。聴き始めた当初は天高く昇っていたはずの太陽は幾度も空をめぐり続け、今は西の空を鮮やかな橙に染め上げている。窓の外を見やると、瞭然たる紅の中、一羽のカラスがけたたましく鳴きながら、真っ黒な身体を茜空にはためかせ、やがて見えなくなった。イヤホンを装着しなおし、再び無限の三分間に足を、いや耳を踏み入れる。
幾度も幾度も積み重ねられる3分の体感時間は、聴覚が求めるに従い2分になり、1分になり、やがて瞬きほどの短さとなった。音速で過ぎ去っていく50分が途方もない数積み上がっていく。Catcher In The Spyと踊り続けるその間に、世界は幾度となく無駄な諍いを繰り返し、絶えず甦る難題と対峙し、他人に唾を吐き些細な問題を過度に装飾し、多くの時間と労力を払いながら次第に疲弊していった。
年が変わった。総理が変わった。年号が変わった。法律が変わった。親族がいなくなった。国際情勢が変わった。家が腐り崩れた。戦争が起こった。服が焼け落ちた。戦争が終わった。人類が歩みを止めた。地球はそれでも回り続けていた。
ふと顔を上げた。再生ボタンを押して音楽を止めた。かつて家があったはずの場所には、今はただ一本の木が生えているだけだった。あの日カラスが飛んでいた空にはもう何も飛んでおらず、空気だけがただただ澄んでいた。宇宙の果てまで見渡せそうな青空だった。
見慣れないデザインの服を着た、同い年くらいの少女が隣に立っていた。話している言葉が分からなかった。少女はイヤホンに興味を示しているらしく、自身の耳を触って首を傾げていた。
「―」
Catcher In The Spyというアルバムを聴いている、と言おうとした。だが声が出ない。口は動くが声が出ない。いや、喉は震えている。声は出ているのだ、自身の耳には聞こえなくなっただけで。声だけ違う世界に飛んでいってしまったかのような感覚。
焦る中少女が心配そうに手を伸ばした。少女の指が肩に触れる。瞬間、肩が無数の黒い音符となって崩れ始めた。呆気に取られる少女を目の前にして、やっと自分の身体がどうなったかが分かった。同化していたのだ。Catcher In The Spyというアルバムと。
まもなく全身が崩れてゆく。青い空に自身と同化していた愛すべきアルバムが消えていく。もはや記憶もない。五感もない。しかし未練も悔恨もなかった。ただただ心地よい。
音が世界に満ちていく。世界がCatcher In The Spyと同化する。茫然と空を見上げる少女の耳に、音符が一つ忍び込んだ。
【09.CITSあるある】
・サイレンインザスパイの2サビ前に「こんばんは東京!」と叫びがち
・未だにシューゲイザースピーカーのサビのコーラスがなんて言ってるか分からない
・Catcher In The SpyライブDVDの蒙昧の「たーぶちにいっ↑といてェ~!」が好き
・君が大人になってしまう前にの歌いだしをふと思い出そうとするとなぜか8月~が邪魔する
・メカトル時空探検隊のサビがどうしてもうまく歌えない
・流れ星を撃ち落せの「ヤバイ×4」はライブ映像観てはじめて「ああそこ一人でやるんだ……」となる
・harmonized finaleのギターソロの満を持して感大好き
・天国と地獄の「シャケ」のせいで一時期鮭おにぎりが食えなくなった
・シナプスボンドを商標名だと勘違いする
・黄昏インザスパイの「止まれないなら車に轢かれちゃう」を最初ギャグだと思ってケラケラ笑っていた過去の自分を時折高いとこからひもなしでバンジーさせたくなる
あるあるというか僕の感想である
【10.Which???】
Q.結局Catcher In The Spyは天国なの?地獄なの?
A.地獄のような天国
A.あるいは天国面した地獄
A.地獄の天国コスプレ
A.ペンチで耳を引っこ抜いてから入場できる天国
A.投げつけられたfresh tomatoでびっくりするくらい真っ赤だけどかろうじて天国
【11.心配事】
UNISON SQUARE GARDENが今まで出したオリジナルアルバムの中で、僕が一番愛してやまないアルバムはもうお察しの通りCatcher In The Spyである。では2番目は? と問われれば、迷うがおそらくMODE MOOD MODEを挙げる。理由は単純明快で、収録曲の平均点が半端ではなく高いからだ。というか収録曲の平均点で言えばCatcher In The Spyに勝るとも劣らない。このアルバムの存在は、UNISON SQUARE GARDENという最早誰もが認めるモンスターバンドが、過去の実績に胡坐をかかず絶えずストイックに邁進してきたことを示している証明のようなアルバムである。
彼らは本当に年々楽曲のクオリティを上げている。特にMODE MOOD MODEがリリースされる1年前からはもうなんか神掛かっている。邦楽ロックバンド・スリーピースバンドの限界に、誰に言われるでもなく挑戦し続けている。ストイック通り越して病的なまでに楽曲作成に、ライブに真摯なバンドである。これから先もずっと期待し続けていいと思う。心から思う。だからこそ、アルバムのコンセプトを再びソリッドなロックの方向に舵を切った時が、怖い。Catcher In The Spyを今度こそ超えられてしまいそうで、怖い。
そう、来月発売される新アルバム、Patrick vegeeが怖い。心底怖い。聴きたいけど聴きたくない。
おそらく収録されるであろうPhantom JokeやCatch up,latency、春が来てぼくらといったシングル曲に加えて、配信ライブで先行公開された新曲やこないだ公開された「世界はファンシー」なる何やらヤバい曲(2020年8月26日現在僕はまだ聴いていません)など、もう今の時点で強すぎる手札が揃っている。もうすでに殺しにかかっている。
断片的に与えられている先行情報によれば、Patrick vegeeというアルバムはどうやらCatcher In The Spyのような、どちらかと言えばロックテイストでストイックなアルバムだそうだ。僕はこれを聴いた時に狂喜乱舞した。Catcher In The Spyリリース時とは比べ物にならないくらいに磨き上げられた技術から、そのコンセプトでアルバムを出してくれることが本当に嬉しかった。ただ今は、Catcher In The Spyをマジで超えられたらどうしようという思いでいっぱいなのだ。今の彼らの楽曲制作スキルをそっち方面に注ぎ込んだら、とんでもない怪物アルバムが出来てしまうことなんて猿でもわかる。
アルバム制作に妥協はしてほしくない。ただCatcher In The Spyだけはギリギリ超えないでほしい。このあまりに贅沢すぎるジレンマに悩みながら、最近は処刑台を登るかのように日々を過ごしている。
出来ることなら「Patrick vegeeマジで最高!! ユニゾン万歳!! ただ俺はやっぱりCatcher In The Spyが一番好き!」と言いたい。言いたいが、今回ばかりは本当に超えられてしまうのかもしれない。仮にPatrick vegeeが文句もつけようがないほどにCatcher In The Spyを軽々と超えてしまったアルバムだとして、口だけならCatcher In The Spyの方が好きだとでも何とでも言えるが、嘘のない彼らの音楽を不当に評価する真似はしたくない。
「負けない、どうせ君のことだから」なんて口が裂けても言えない。ほんとにこんな贅沢な悩みを抱かせてくれるバンドは彼らだけだと思う。憎たらしいほどに愛おしい。ただ本当に、Catcher in The Spyには負けてほしくない。マジで応援してる。
【12.6年】
最後に。
高校からかろうじて関係が続いている友人がもうたったの一人しかいないことを考えると、Catcher In The Spyとの付き合いの長さをしみじみと実感する。軽く言うけど6年って本当に長いよ。長いこと僕を救ってくれて、作ってくれてありがとう。これからもよろしくお願いします。