タイトルの通りである。勘弁してほしい
今年に入って一番聴いたアーティストは誰ですか? という問いに現時点で答えるとするなら間違いなくナナヲアカリだと思う。いやだめだちょっと呼び捨てが出来ない。ナナヲアカリちゃん、と呼ばせてほしい。
この場を借りて懺悔させてほしいのだが、今年に入るまで僕はナナヲアカリちゃんの「ナ」の字も知らなかったのだ。それが今ではApple Musicで聴ける音源全部聴いてYouTubeで観れるPV・ライブ映像全部観て、カルボナーラを作って、動物とマイメンになって、終いにはツイキャスまで覗く様になってしまった。これは本当に面倒臭がりの僕としてはすごいことだ。ここまでハマったアーティストは本当にひさびさである。マジでTHE PINBALLSやCRYAMY以来かもしれない。
最近は聴くものに困るとフライングベストを聴いているし、週初めの月曜日は最新作の「マンガみたいな恋人がほしい」を6曲全部鼓膜に叩き込んでから職場に向かっているし、ことあるごとにナナヲアカリちゃんのTwitterを眺めては悶絶している気がする。いや最後はちょっと大げさだけど、マジで毎日のルーティンにナナヲアカリちゃんタイムがある。レスラーが物事の節目節目に煙草を刻むように、ナナヲアカリちゃんを日々の節目節目に刻んで生きている。これは最早常備薬に近い。彼女の声を摂取しないとまっすぐ歩けなくなってしまった。ハイレヴェルなヤク中みたいなこと言いよる
とにかく今までの人生においてハマってきたアーティストと比較しても、初聴から自分の音楽嗜好に浸食していく速度が段違いに速い。マジで速い。じわじわとその深さにハマっていくわけではなく、一気に好きになるタイプ。そういう点ではユニゾンとかヒトリエと似通った部分はあるなあと思う。とにかく即効性が強い。
そんなわけでこの記事ではナナヲアカリちゃんの魅力を語ろうと思うんだけど、もうね、Twitterのフォロワー数10万人、YouTube公式チャンネルの登録者数44.5万人(2020年5月現在)の大人気歌手に対して、知って数ヵ月目の僕が語れることなんてたかが知れてるので見当外れなこと言っても多めにみてくれるか、他にこんな魅力があるんだぜってことがあればぜひ教えてほしい
ダメさ
ナナヲアカリちゃんの一番いいとこはダメなとこです。wikipediaにもファンから「ダメ天使」と呼ばれてるって書いてあるしこれは多分明記したって怒られないと思う。ダメなとこがいい。本当に。
いや実際は普通に賢い真人間だと思うんですよ。行動力もあるし親友と呼べる友達もいるっぽいしギターも弾けるし作詞も作曲も出来るわけで、僕なんかよりずっと賢いしきちんとしてると思うんですけど、その自覚しているのであろうダメさを、隠すことなく武器として全面に出してるのがとてもいい。ほんとに、いい。めちゃめちゃいいキャラクターを持ってるなって。
女性のポップソングシンガー・アニソン歌手ってどうしてもキャラクター商売な部分があるじゃないですか。面白さとか、ミステリアスさとか、隠れオタクとか美人かどうかとか、あとはどんなアーティストと関わっているかとか。声優と兼業だったらどんな役をやってるかとか、他の声優との絡みとか。単純な声の質とか歌唱力と同じくらい、その人がどんな性格で、どんな属性を持ってて、どういう立ち振る舞いをするのか、平たく言うのであればどんなキャラなのかっていうのが人気に密接に関わるっていう側面が少なからずあるわけで。まあほとんどアイドルですよ。
アニメソング歌手、って括りだけで文字通り星の数ほどのアーティスト・声優がひしめき合っている中で、重度のオタクですとか声が可愛いとかそういう生半可なキャラ付けしててもすぐに食われるんですよ。これはどんなジャンルの音楽だって同じだと思うけど、その界隈に自分より優れた同系統の個性を持っている人がいたらすぐにその人の下位互換のレッテルを貼られるわけで。特に今のご時世は流行り廃りが激しいからなおさら強めの個性が求められる。何かしらのタイアップやらネット上での一瞬のバズりで知名度を上げたところで、そこに魅力的なキャラが伴ってないとお話にならない。若い女性のシンガーなら尚更である。顔が可愛い子ばっかりでほんと大変だよな。
ナナヲアカリちゃんのいいとこ、というか強みは、そのキャラ付けの部分で「ダメさ」を惜しみなく前面にどかーんと出しているところだと思う。ダメであることに真摯。
働きたくはないし されどもお金ないし
かといや布団から出たくはないし
お釈迦になる――ナナヲアカリ
まあこの曲の歌詞書いたのはみんな大好きNeru氏なんだけど、他の曲でもなんでもこういう歌詞を当たり前に使えるキャラ作りに成功してんのはめちゃくちゃ良いよなって思うんですよ。
このくらいの年齢の女性歌手の歌って、もっと希望とか未来とか友情とか、そういう元気でキラキラしたものを主軸にしがちだと思うんですよ。ダウナーなテーマでもよくて失恋とか、若さゆえの懊悩とか、そんな感じ。それが悪いってことではなくて、ていうか普通はそうであるべきなんだろうけど、決してそれしか歌っちゃダメってことではない。いや、それどころか今のこのご時世、どっちかっていうとネガティブな題材の方が受けてる気すらするぞ。女性歌手のみなさん、もっと心に負った傷とか歌にしていいんじゃないでしょうか
彼女はその点で他の同業者と明確な差別化をしている。ナナヲアカリちゃんめっちゃ可愛い顔して歌ってるワードが五十嵐隆。五十嵐隆にうま味調味料とサブカルとカワイイを鬼のように添加したら多分ナナヲアカリちゃんが爆誕する。インターネットもといSNSが生活の一部として当たり前となった世代、のナイーブな部分を的確にぶっ刺す言葉選びがとても秀逸。
チューリングラブとか、ワンルームシュガーライフとかあの辺の、ナユタン星人が作った中毒性激強なポップで可愛くてBPMが早いダンスビート、つまり俺たちの好きな奴をアニメタイアップでうまーく当てて、興味を持ったところで持ち前のダメさと可愛さのダブルパンチで叩き落す。この即死コンボよ。あざとい、悔しい、でも聴いちゃう……
曲、めっちゃいい
そしてそんな味の濃いキャラに負けじと曲もいいんだなこれが。そりゃだって作ってるメンツがもうやばいもん。
米津玄師、そしてヒトリエあたりのニコニコ出身のアーティストがシーンに風穴を開けてから、邦楽ロックとボーカロイド及び歌い手、そしてアニソン歌手の垣根がぶっ壊されて境界が曖昧になった今日の邦楽シーンは、高校時代ボカロを聴き漁ってた身としては滅茶苦茶楽しいんだけど、そのごちゃ混ぜになったシーンでも台頭してきたのがやっぱりボカロP、もとい彼らが主催のグループではないかと思うわけで。
2~3年前くらいから明らかに目立つようになったボカロ出身のクリエイターたち。もう名前を挙げたが米津玄師にヒトリエ、ヨルシカ、PENGUIN RESEARCH、ネクライトーキー、サイダーガール、須田景凪などなど挙げればきりがない。最近ではYOASOBIとか空白ごっことかもそうだし、ずっと真夜中でいいのに。にも編曲にボカロPがガッツリ関わってたりする。どこもかしこもボカロPだらけ。
泣く子も黙る超有名PであるNeru氏の曲にて産声を上げたナナヲアカリちゃんも言うなればこの括りに入るアーティストなんだけど、彼女は別に一人のクリエイターがバックについてプロデュースしているわけではなく、色んなクリエイターが彼女の曲を作っている。どっちかと言えば三月のパンタシアとか、ちょっとクリエイターのジャンルが変わるけどLiSAとかに近い。いろんな人が彼女の曲を作っているわけだから、振り幅がとても広いわけですね。
ボーカロイドという何でもありな世界にて育まれた個性バリバリな面子がバカスカ曲提供してるっていうんならそりゃ強いよねって話。ざっと挙げてもNeru、DECO*27、ナユタン星人にバルーンに石風呂にみきとPに、最新作では煮ル果実も加わっている。錚々たる、なんて言葉が陳腐に聞こえる。王下何武海ですか?
中毒性の高い電波ソングからバチバチのロック、無機質な打ち込み曲にアコースティックなバラードまで幅広く持っており、それらすべてが本当に良い曲だらけ。歌い方も曲によってカッコよさ・可愛さ・ゆるさ・だるさをそれぞれ使い分け、色んな表情を見せてくれる。根底にある「ダメ天使」というキャラは崩さずに、その上でやりたいほうだいやっているのだ。
ナナヲアカリちゃんという個人はそのままに、「ナナヲアカリ」という一つのコンテンツがあり、その枠内でクリエイターが各々好き勝手やって、それをナナヲアカリちゃん自身がアウトプットしている感じ。でも自身のキャラがしっかりしているから、決して「歌わせられている」という感じはせず、ちゃんと彼女の曲になっている。好き勝手やってても芯はブレない。
そういうわけで彼女が今まで出した曲を紹介したいのだが、全部紹介すると流石に腱鞘炎になるので、今回は厳選して5曲を紹介する。気になったのならもう全部聴けばいいよ。
1.ダダダダ天使
まあこれは入れないとダメだよねって曲。自己紹介ソングですね。
味の濃いメインリフと4つ打ちダンスビート、彼女の十八番であるボカロを彷彿とさせる早口、ライブ映えするコールもふんだんに盛り込んだ大変中毒性の高い一曲。Vtuberとか歌い手がこぞってカバーしており、昔ながらの音MADもちらほら見かける。時代が時代だったらニコニコ動画でもコスりにコスられてただろうね。
僕はチューリングラブをブックオフの店内放送で聴いてからナナヲアカリちゃんを知ったんだけど(何だこの曲って思って必死で歌詞を覚えて検索した)ハマったきっかけはこの曲である。YouTubeでこの曲のライブバージョンを聴いてからドハマりした。もっとキャピキャピしてるもんだと思ってたら結構ガッツリとバンドで面食らったのだ。ギャップに敗北してしまった。
1:15のコールに合わせて足上げるとこめっちゃ好き
この曲が好きだったらナナヲアカリちゃんを聴きこむと幸せな音楽体験が出来るのではないでしょうか。は? この曲が好きじゃなかったら? 我慢して聴いてたらどうせ好きになるので四の五の言わず聴いてください。音楽とは洗脳です
2.シアワセシンドローム
ダダダダ天使もだけどこれもナユタン星人作曲。お前ナユタン星人が好きなだけじゃねえかって言われそう。まあいっぱい作ってるからね
ナナヲアカリちゃんの曲で特徴的なのは、いくつかの曲の間奏部分にポエトリーと称される、ラップのようなそうでないようなセリフが入ること。その曲の2番を全部食ってしまうほど長いものもあれば、ラスサビ前の間奏にちょろっと含まれるだけのものもある。シアワセシンドロームは結構長めのポエトリーが入っており、ここの「まあ もう とにかく疲れたんだってば」が好きすぎて、それが聴きたいがために何回リピートしたか分からないってくらいリピートした。
ナナヲアカリちゃんはほんとに何というか、血肉の付いたボーカロイドというか、おおよそ人間が歌う歌じゃないよ、っていう詰め込み方した曲を涼しい顔で歌う。滑舌が異次元。普通にしゃべってる時はちょっと舌足らずにすら聞こえるのになんで歌う時はべらべらなんだろう。ふしぎ。わざとやってんのかな、それならそれで可愛いけど
3.kidding
僕はまだナナヲアカリちゃんがインディーズのころに出した音源で、YouTubeにもApple Musicにもない曲は本当に一切聴けてないので、彼女が作曲した曲に関してもメジャー後に出したものしかまだ聴いてないんだけど、今現在聴いた中で、ナナヲアカリちゃんが書いた曲で一番好きなのはこの曲。
フライングベストとかいう、収録されている曲のBPMで平均取ったらめちゃくちゃな値を叩きだしそうなくらいに早い曲が揃いに揃った1stアルバムの中でも異彩を放つ、ゆったりとしたアコースティックなバラード。前後の曲と比べてもびっくりするくらい静か。前後の曲が特別うるせえってのもあるんだけど。
ともすれば味が濃すぎて聴き疲れてしまうあのアルバムの中で、ふっと肩の力を抜いて聴けるこの曲は、なんというかとても映える。そして歌詞もいい。
ほら 何もしなくたって お腹は減るのさ
kidding――ナナヲアカリ
部屋の底で水もなく溺れているような閉塞感が満ちた詞を、気だるげでゆったりとした声で歌うこの曲を聴くと、別に頑張らなくてもいいやって思える。肩の力抜きすぎて肩をどっかで落っことしたって、もう別にいいやって。頑張るのって疲れるんですよ。ネットでも現実世界でも、頑張るのはとても疲れる。
こないだのツイキャスかYouTubeライブだか忘れたんだけど、その時弾き語りで聴けて大変うれしゅうございました。個人的にはCD音源より弾き語りverのが好きだった。いつかライブで聴けたらいいな。
4.Youth
出ました個人的二大巨頭の一角。今年に入っておそらく一番聴いてる曲です。大好き。何も言うことがない。ただひたすらに好き。
無機質で薄味なバックの演奏に、これまた気だるげな歌。Youthというタイトル通り、若者の憂鬱というか、先の分からなさ? 憂い? みたいな、どうにもならない、どうしようもない、けどまあ多分大丈夫、みたいな曖昧を曖昧なまま形にした、マジでどう表現したらいいかわからない独特の気持ちいい浮遊感のあるサウンド。とてもいい。夜に聴いても朝に聴いてもいい。どっちかというと夜の曲。深夜誰もいない街中をゆらゆらと歩きながら聴きたい。
彼女の親友について歌った曲らしく、それについてのインタビュー記事があるから歌詞に関しての考察とかは記事見ながら適当にやればいいと思うんだけど、この曲はマジでもう聴き心地が良い。歌詞も良いけどそれよりなにより聴き心地が良い。さっきから連呼してるけど聴き心地って何だろう
5.眠らない街、眠りたい僕
今まで上に書いてること全部忘れてとりあえずこの曲だけもう聴いてくれればいいよ
二大巨頭の一角にして個人的に最強の一曲。今んとここの曲が一番好き。やっばい。
重ためのギターサウンドにゴリッゴリのベース、ストレートに陰鬱な歌詞の世界観、それだけでも百点満点なんですけどなにより声がいい~その声でそのサウンドを後ろにその歌詞を歌うのはもうだめですよ、癖が詰まってるよ癖が ランダムにどれかの能力が二段階上昇してしまう
これはもう好きなところしかないから特筆も何もないんだけど、あえて言うならサビの入りの「くだらないな」のとこでがなり声になるというか、ちょっと巻き舌っぽいの入るのめっちゃ良くないですか。ナナヲアカリちゃんの「カッコいい」の部分が超出てる。
ちなみに、この曲と上のYouthはどっちもキタニタツヤ(こんにちは谷田さん)作曲。俺の身体中のツボを知り尽くしている。日向一族かよ。
というわけで5曲紹介でした。他にもんなわけないけどとかハノとか月だけが聞いているとかメルヘル小惑星とか語りたい曲はいっぱいあるけど、YouTubeにMVがたくさん上がってるから聴けばいいと思うよ。僕が何キロバイト文章を紡ごうと再生ボタン一回押す方が分かりやすい。興味を持つきっかけにでもなったらなと思う
顔が可愛い
顔が可愛い。見りゃ分かんだそんなことは。
でもこの顔の可愛さはそれが主体ではなく、あくまで音楽の付加価値的な意味としてのあれであって……みたいなことを長々と綴ろうとしたんだけど、ちょっと聴いてほしい話がある。
僕の昔話なんだけど、高校生の頃同級生にももクロ好きな友達がいたんですよ。
スマホの写真フォルダに推しの子(ピンク)の画像をしこたま詰め込んで、きたねえウォークマンに詰め込んだ音源を無理やり聞かせて、文化祭では体育館のステージでももクロの曲でオタ芸やって……と、ありとあらゆる手段で僕に「ももクロはいいぞ」とガンガン勧めてくる、オタクというにはちょっと過剰に活発な、今風に言うと「陽キャ」なオタクだった友達が。僕はぶっちゃけ当時女性アイドルグループに過度な偏見を持ってたのでどれだけ勧められても聴かなかったんですけど。
「顔とかアイドルって仕事に本気なとこもいいけど、なによりマジで曲が良いんだ」って何かと熱弁してて、正直なんだコイツどうせ顔目当てのくせに正当化しやがって気持ち悪ッて思ってた節があったんですけど、今僕がその状態に陥ってて焦った。いや顔は、顔はもちろん良いけど僕はあくまで彼女の音楽に惚れてだね……みたいな、誰のためか分からない弁明をしかけてマジで頭抱えた。
あのときは辛かったんだねアキラくん。緑の子が辞めた時めっちゃ煽ってごめんね
おわりに
というわけで、今年に入ってハマったアーティストランキング堂々第一位のナナヲアカリちゃんを盛大にプッシュする記事でした。何か名前は知ってるけどまだ聴いたことない、っていうそこのキミ、女性のピン歌手とか歌ってる題材の温度感が違いすぎて聴けね~とかなってるそこのキミ、多分そういう奴ほどハマるアーティストだからとりあえず聴いてみよう
個人的には上にも書いた「眠らない街、眠りたい僕」や最新EPに収録されてる「ヒステリーショッパー」みたいな、彼女のカッコいい・殺伐とした部分がガッツリと表に出たゴリゴリのロックソングをもっと聴いてみたいな~と思うので、そういう曲が今後たくさん出てきてくれたらめっちゃ嬉しい。
今後の話だけど、チューリングラブとかいう聴くヘロインみたいな曲がものすごい勢いで再生数伸ばしてるのを見ると、まだまだ人気は衰えないどころかもっと加熱するのでは、と思う。曲のセンスとか、詞の世界観とか、彼女の容姿とかキャラ付けとか、本当に今後のシーンをガッチリと掴んでる気がしてならない。全国のアリーナをまたにかけて、ダメ天使がネガティブソングを熱唱する未来もそう遠くないのかもしれない。早いうちに生ライブでの彼女の姿を見てみたいなーと思う。まあその最新のライブツアーがこないだ中止になったけどな。さっさとコロナ終息してくれ~頼むよ~
彼女がもっと人気が出て、もっと大きなステージで、もっと多くのファンの前で歌う未来が来たら、それこそ今の楽しい音楽シーンすらも滅茶苦茶にぶっ壊して、もっとわけわからなくなるんじゃないかなって勝手にワクワクしてます。このまま思うがまま突き抜けてほしい。