因縁はおおよそ2年前。2017年の12月まで遡る。
片田舎の極悪ブラック企業勤め、将来への展望なんて絶無な社会人生活を送っていた憐れなる22歳であった僕に、音楽ナタリーが今世紀最大と言っても過言ではない核爆弾級の特報をぶっこんできやがったことが全ての始まりだった。
ヒトリエ主催の対バン企画「neXus」第4回にて、対バン相手が我らがUNISON SQUARE GARDENに決まったというのだ。日にちは2018年1月17日・水曜日。場所は東京・マイナビ赤坂BLITZ。ヒトリエ×ユニゾン。僕にとっては考えうる限り一番ヤバい組み合わせである。
自室で寝そべりながらこの情報を見た僕はまず慎重に真偽を確かめ、正座し、舐めるように双方のコメントを読み、日にちを確認し、深呼吸をした後、スマホを壁にぶん投げた。腹の底から声が出た。おそらく人生で一番デカい声だった。行けるわけねえだろいい加減にしろ、と。
九州の片田舎に住んでいながらブラック企業勤め、しかも新人の僕が、葬儀以外の用事で有給休暇なんて使えるわけもない。ましてや平日の東京に行くとなると1日取っても心もとない。どう考えても通しで2日は取らないとダメだった。飛行機や何やらで無理をすれば1日でどうにかできなくもないが、確実にその後の業務と人間関係に支障をきたすし何より送迎の関係で家族に迷惑をかける。東京着後のタイムスケジュール的にもメチャクチャタイトなものを強いられる。ていうかまず平日水曜の東京って時点でどう考えても無理だった。
ヒトリエ大好き、ユニゾン大好き、そんな僕にとってその2バンドの掛け算なんてどう考えても最高に決まっている。この世で一番僕が求めていた組み合わせだと言っても過言ではない。wowakaさんが「いま日本で一番僕自身が見たいツーマン」だのなんだの言ってたがもうマジで、同感。同感ゆえにほとばしる怒り。「筆者の絶対に行けない場所で最高の対バンを開催してしまった罪」で有罪。満場一致で有罪。裁判官が僕に同情して飯を奢ってくれるレベルで有罪。今度からは頼むから福岡でやってくれ。俺との約束だ。
そういうわけで泣く泣く見送り、セトリとライブレポートを見て発狂し(ユニゾンは好きだけどヒトリエはそこまで聴いてない、けど楽しかった、みたいな人のライブレポ見て本気でムカついたりした)、その一件は関係ないけど会社を辞め、以前とは比べ物にならないレベルのホワイト企業に転職を決めた。有給取得のハードルの高さもストーンヘンジから縁石くらいまで下がった。
よっしゃこれでいつでも行けるかかってこいや、と環境を整えたその1か月後に、本当に今でも意味が分からないんだけどwowakaさんが急逝して、願望も希望も予定も何もかもがぐちゃぐちゃのぼろぼろになって、対バンどころじゃなくなってしまった。この時の話は近いうちにまたどこかでちゃんとしようとは思うんだけど、一年経った今でも時折ふと思い出して、なんで僕は生きてんだろうなって虚しくなってしまう瞬間がくる。
そんな感じで悲しみの涙で日本が水没した後wowakaさんの追悼会があったり、wowakaさんを欠いた状態のヒトリエによるワンマンツアーがあったり、初めてのファンクラブライブがあったり(別にいいけどこれも平日の東京だったので行けなかった)初のベスト盤とそれに伴うワンマンツアーがあったりと、なんだか空元気かと心配してしまいそうなほどに精力的に活動する中で、ユニゾンの自主企画対バンツアーである「fun time HOLIDAY 8」のゲストが発表された。
フレデリック、キュウソネコカミ、SUPER BEAVERなどなど、今を煌めく錚々たるメンツが並ぶ中に、ヒトリエの文字を見つけた時の、そしてヒトリエゲスト公演が福岡である時の僕の喜びようといったらそれはもう、察してくださいよ、24歳にしておしっこを漏らしました。上からも下からも水分漏出が止まらねえ 源泉か?
そもそも主催が違うし、wowakaさんももういないからあの時の完全再現ではないけど、2年前の因縁をようやく晴らせるときが来たのだ。ピンポイントでこのめぐりあわせは流石に奇跡と言っても過言ではない。まあコロナの畜生のせいで台無しなんだけど
この2年で悔しさも嫉妬ももどかしさも濃縮に濃縮を重ねてもはやどろっどろである。砂も臍も苦虫も、顎がくたびれるほどに噛んだ。この募りに募った渇望も激情も、すべてZepp Fukuokaに置いていくために産まれた感情だと思えば我が子のように愛おしい。僕はこの対バンが決まった瞬間に、初めて書くライブレポートをこれに捧げることを決めた。
というわけで、前置きが長くなったがこの記事はライブレポートである。初めてのライブレポートなので拙い部分もあるだろうが、多少の節操は温かく見逃すなりTwitterでやさしくリプライするなりで教えてほしい。初めてのライブレポートが妄想ってほんと人としてどうなんだろう
というわけでネタバレ注意、以下本文
【先攻:ヒトリエ】
Zepp Fukuoka。福岡最大のライブハウス。個人的には最近はフレデリックのライブにてよくお世話になる会場である。Zeppの名を冠しながらも収容人数は1500人程度。都内で言うとEX THEATER ROPPONGIとあんまり変わらない。全国のZeppで一番小さい。ということは現存するZeppの中で一番アーティストとの距離が近いZeppである。福岡最高。東京(笑)
開演前は意味もなく近くのMARK IS店内にあるニトリで家具をみて「たけ~~~」と言いながら一人ぶらぶらするのを一種のルーティンとしているのだが、今回もそれをした。人をダメにするソファ、人より先に財布の中身をダメにするのほんと笑えない。
その後いい時間になったので物販に並んでTシャツを1枚買い、ヤフオクドーム側の階段にて整列を待ち、呼ばれる番号に従って会場内に入る。Zepp Fukuokaに来るたびに毎回もらうゴム製のカラフルな小さいペットボトルホルダー、そろそろいらない。何個もいるもんじゃない。ミルクボーイでも流石に持て余す。
ステージ向かって右側、上手の方に陣取る。前列5番目くらいに立つことが出来た。製番からすればなかなか頑張った位置である。ぶっちゃけ押し合いへし合いが苦手なので、いつもはあんまり前には行かない質なのだけど、今回ばかりは話が別である。たとえ出てくるのが愛しのバンドメンバーでなく飢えたライオンであろうと本望の気持ち。歓喜の血反吐をぶちまけるぜ
そうこうしているうちに暗転。歓声と拍手が巻き起こる。
先攻ヒトリエ。おなじみの入場SE、Foals『on the runa』が流れ始め、3人がひょこひょことステージに。一層大きくなる歓声が少し遠く聞こえる。動悸と緊張で心臓が痛い。手拍子を煽るシノダさんにつられて手を打ち鳴らす。去年の6月の追悼会以来に見る、センターに立つべきフロントマンがいないヒトリエ。当たり前だけどまだ見慣れなかった。彼らの各ポジションへの移動や楽器の触り方に一切の迷いがなく、ああ、もう大分慣れたんだな、と思ってしまってちょっともうここで涙ぐんでしまった。
SEがすこしずつ小さくなる。拍手も徐々にまばらになり、やがて止まる。今まで見てきたヒトリエとは思えないほどに静かな立ち上がり。ほんのひと瞬き、しかし確かに実感がある一瞬の無音を挟み、シノダさんのギターが柔らかく会場の空気を揺らす。彼の吸い込んだ息の音が、今までにないくらい大きく聞こえた。
「誰が止められるというの 心が 叫んだ声を」
弾き語りによって幕を開けた彼らのライブの一曲目、ポラリス。ギター一本、コーラスもなし、スポットライトは彼にしか当たっていない。こんなにシンプルなステージなのに視界が歪んで上手く捉えられない。蹲って泣いてしまいたかった。ずるすぎる。追悼会にて、涙声で前説を述べた後に、同じようにポラリスのフレーズ弾き語りからヒトリエ第2章の火蓋を無理やり切った彼を思い出してしまった。リーダーが立ちたかったであろう新木場の広いステージの左端にて、少しぎこちないながらもたくさん、たくさん練習したことが分かる、ヒトリエのギターボーカルとしての姿を見せてくれた、あの日。
2年前の対バンにて、wowakaさんはユニゾンを「日本一カッコいいバンド」と称した。そんな憧れのバンドから名指しで読んでもらえるこの日、このステージに、この場に一番居たかったのは他でもないwowakaさんだったと思う。その事実がめちゃくちゃ悔しいし、だからこそ最初の弾き語りは胸と涙腺に来た。
弾き語りだけの入りから間髪入れずに、どすんと重いベースとドラムが入る。一気に視界が開ける感覚。ああこれだ、この音圧、この演奏、素人耳にもわかる各パートの主張の強さ。これが、このヒトリエが聴きたかったんだよな。何回観ても、初めてワンマンを観たあの日と同じように圧倒される。
追悼会の時に見たポラリスとは比べ物にならないくらいに、練度が上がっていて慄いた。もともと他のバンドでギタボをやっていたシノダさんのことだし適性はもとからあったのだろうが、手元と歌唱の忙しさが流石に人外レベルで、邦楽が産んだバケモンを垣間見てしまった気がした。そしてこれはこのライブ中幾度も思うことになる。
そのまま怒涛の勢いでラスサビを終え、花の咲くようなアウトロを長く伸ばし、伸ばし、伸ばし、拍手も歓声もひと段落し、ただ残響音だけが広い広いZepp Fukuokaの空間に響き渡る中で、ゆっくりと口を開いたシノダさんが一言
シノダ「ヒトリエです。よろしくどうぞ」
上がる歓声、間髪入れず聴きなれたセッション。前列の人たちの何人かは、もう次が何の曲かを察して飛び跳ねている。音源で、生で、映像作品で、脊髄に刷り込まれるほど聴いた9回のキメ、そこからなだれ込むセンスレス・ワンダー。血が沸騰して死に至ったが何とか致命傷で済んだ。
ヒトリエを好きな人たちがヒトリエを好きな理由を誰かに説明する際に、口で10キロバイト分の文字をどんなに洗練された文章にして届けるよりも、これを流した音楽プレーヤーを相手の耳に突っ込んだ方が効果的、そんな曲。全部かっこいい。何回聴いてもカッコイイ。
バカテク演奏、歌唱、ド頭のイントロも間奏もシャウト有りと出し惜しみのない連撃に酔いしれながらも、心のどこかでそんなに飛ばして大丈夫なのか、バテないのか、と心配になっている僕の内心を吹き飛ばす次の曲が
シノダ「ぶっ刺されZepp Fukuoka!! インパーフェクションフォー・ユー!!」
間髪入れず4カウントからの、あのサレインみたいなイントロ!! 泣く子もくたばる俺たちのライブアンセム、インパーフェクションのご来光である。まじで1年と半年ぶりくらいに生で聴いた。ツアーではやってたらしいけど、僕は3人体制になったヒトリエの初全国ツアーに行けてないので……
出し惜しみ皆無、最初っからトップギア。ブレーキなんて製造工程で意図的にぶっ壊して市場に出てる、我らが誇るアジアトップの日本製バンド。熱すぎて3曲目からすでに最終回の気分。僕の人生が。
「分からないことばかりで ぐちゃぐちゃになりそうだ 情けないけど それでも歌 歌うだけだなぁ」のあたり、シノダさんの境遇とシンクロして本当に胸に来た。wowakaさんがこの曲を書いたあたりは確かスランプに陥ってて、その時の状況が色濃く反映された歌詞だと思うんだけど、巡り巡ってこの場でガッチリとハマるの、なんというか運命ってつくづく後天性だなと。
3人で最後に楽器を打ち鳴らし、挨拶代わりの怒涛でとりあえず暗転。どよめきと歓声。たった3曲、されど3曲。たった10分程度のライブパフォーマンスが後々の人生を狂わせてしまうことを、僕らはハヌマーンのCDJでのライブ映像ですでに学んでいる。主役を完全にぶっ飛ばしに来ていた。血走っている。
ユニゾン呼んでくれてありがとう、からの福岡あちいな、からの自身の汗の量で客相手にマウントを取る、いつものシノダさんの自分勝手なMCを聞き、ちょっとだけ懐かしい、安心した気持ちになった。福岡来るたびに汗の話してる。俺より彼が源泉じゃないか。
一呼吸おいてハンドマイクになるシノダさん。ピアノイントロとともに4曲目、SLEEPWALK。ゆったりと踊れるミドルナンバーをもってくるタイミングが大変マーベラス。客の心拍数を把握している人しか出来ない手管である。テクニシャン。ねえ神様視界はどうだいって、神様も多分最初から今まで何も見えねえよ、涙で。ほんとうに、一回でいいからこの曲を生のwowakaさんのボーカルで聴きたかったなって思ってしまうのは我儘だろうか。
「愛してみようぜ」のシンガロンがあったり、間奏中のイガラシさんにダルがらみするシノダさんを観れたりと美味しいとこばかりのパフォーマンス。歌も上手くなっててマジでたくさん練習したんだなって思ってしまう。なぜだか親の気持ち。オタクはすぐに母性を抱くからダメだ。軽率にママになる。
最後もシンガロンで締めた後、少しの間を開けて披露されたのはまさかの(W)HERE。音源では比喩抜きでCDが擦り切れるまで聴いた曲だが、ライブで観たのは初めてだったので、幾度となく聴いたあの世界一カッコいい電話番号プッシュ音みたいなイントロが聞こえた瞬間意図せぬ力が両足に入ってしまった。24歳にもなってうれしくて飛び上がるとか恥ずかしい。でも超うれしい。最高。
この世の「美しい」を暴力的までに詰め込んだ至高のミドルナンバー。純度100%の尊さと儚さで出来ている。目の前に宇宙が広がっている。他の観客は初体験する尊さに飲まれて消えてしまい、僕以外だれもいなくなってしまった。僕と、ヒトリエの二人きり なんという贅沢なライブ。音で僕の精神とヒトリエが融合していく。決して混じりあうはずのない存在が、音楽でひとつになっていく。これが乳化 emulsification
世界一幸せな5分間だったと思う。すべてが消えてしまう気さえした。これが夢であったら覚めないでほしいとか思った。うつくしさに殴られた客の呆然が見て取れる。僕は何も成してないのに勝手に誇らしかった。
やわらかい光がステージを照らし、短めのMC。前に東京で一緒に最高の対バンしたこと、ユニゾンめっちゃかっこいいってこと、けど今日は先輩だろうとぶっ飛ばしに来たんで、とシノダさんの宣戦布告。サクッと次の曲行きます、の言葉からすぐに暗転、聴きなれたキラーチューンのイントロが鳴り響く。炸裂するような三人のアンサンブル。ヒトリエのはじまりの曲、カラノワレモノである。SLEEPWALK→(W)HERE→カラノワレモノの流れ考えた人誰? 天才では? 俺
いまからおおよそ五年くらい前、僕がヒトリエにほれ込んだ切っ掛けの曲である。ヒトリエだけでなく僕もすべてはこの曲から始まったと言っても過言ではない。間違いなく美しいのにどこか荒々しく、とても熱いのにどこか切ない。歌詞・曲調、どちらかが少しでも崩れたら成り立たないこの耽美さ。奇跡のバランス感覚。間違いなくwowakaさんの「渾身」の一曲だと思う。何世紀先でも評価されてほしい。
エモーショナルな演奏と熱の入ったシャウトで演奏を終え、曲の余韻に浸っている僕らに、残響音を鳴らしたままマイクを握るシノダさんが鬼の形相で
シノダ「あのですね、ウイルスって熱に弱いんですよ、皆さんもしかしたら知らないかもしれませんけどね、ウイルスって熱に弱いんですよ!! コロナだかなんだかよく知らねえけどそんなもん、演奏で全員殺すのが俺らなんで! ……というわけでイガラシくんいつものお願い!」
べーん、とたからかに鳴り響く重低音、間髪入れずにドラム。日本国民なら誰もがご存じパチスロヒトリエの確定演出である。脳汁が止まらない。意図してないのに全身に力が入ってしまう。むちゃくちゃ熱くなると同時に、もう後半戦なんだな、と少し寂しくなってしまう。油断してると、彼らのライブは本当に刹那で終わる。
シノダ「オーイェアZepp Fukuokaへお越しのお客様に一つ質問がございます、お客様の中で踊り足りてない人はいらっしゃいませんか!」
イエーイ!!!(俺)
シノダ「おきゃくさまのなかでェ!! おぉどぉりィ足りてない方はいらっしゃいませんかァ!!?」
イエエーーーイイ!!!(世界)
シノダ「燃え尽きろ福岡! ベースイガラシィ!!!」
斬魄刀の始解のような煽りから間髪入れず鬼のようなベースソロ。ぶっとい四弦にこれでもかと叩きこまれる鋼鉄の五指。スーパーベーシストの後ろに般若が宿って見える。気迫。これが真の気迫。素人はよだれを垂らして見守ることしかできない。ここが地獄、ここが理想郷、ここが魔界のダンスフロア。悪魔も僧侶も化け物も、今だけは踊るためだけに知能も敵愾心も投げ捨てる。語彙が中学生になってしまった。
シノダ「エビバディ1! 2!」
俺たち「1・2・3・4!」
飛び跳ね炸裂するヒトリエ最恐のライブアンセム、踊るマネキン、唄う阿呆。ヒトリエのライブに来たらこれを聴かなければ。これですよ、結局これ。最高。いっっっちばんかっこいい。 何もかもすべてここに置いていくという気概を感じる。何もしなくても600円もするライブハウスのくっそ高え水が沸騰するこの熱気、ウイルスなんて生きてるわけがない。
身体中の水分が全て空気中に発散されて干物になりかけたころに演奏が終わり、一瞬三人が身体を向き合わせて何度かキメを入れ、そのままシノダさんのソロに。これまた聞き覚えのあるエモーショナルなギター、からステージが鮮やかなブルーのスポットライトに染まり8曲目、青。この緩急。枯れたはずの涙腺からとめどなく涙があふれてくる。これもなあ、一回でいいから、一回でいいからwowakaさんの声で聴きたかった
ヒトリエ、もといwowakaさんの曲は架空の少女の目線で書かれた歌詞が多くて、一人称がかなりの打率で「あたし」なんだけど、いつもはそういう詞を書くwowakaさんがここぞという時に使ってくる「僕」の一人称は、来るよね、心に。ああ、全部ではなくとも、少なからず自分のこと書いてんだなって。並々ならぬ決意を感じる。
多分ずっとこの曲には、というかポラリス以外のHOWLSの曲には、この先小さな棘が胸に刺さったような気持ちが残り続けるんだろうなって思う。本当の、いちばん格好良い姿で聴けなかったどうしようもなさが、ずっと。でもまあ後悔だろうが無情感だろうが、忘れてしまうよりはましなんだろうな。
そんなセンチな気持ちになっているまま後奏、これまた間髪入れずゆーまお氏のドラム。あっ、これも死ぬ予感がするぞ、と思っていたら案の定、今日幾度目かのシノダさんの述べ口上。
シノダ「ヘーイZepp Fukuoka、まだまだ皆さん踊り足りないんじゃないですか?」
イエーーイ!!!!(宇宙)
シノダ「まだまだ踊れますか!!」
イエーーーイ!!!!!!(俺たち)
ノリにノッての9曲目、ヒトリエの誇るキラーチューン、トーキーダンスのお時間である。圧倒的な中毒性と音圧とBPMによる蹂躙であり凱旋であり暴力。鼓膜から脳髄まですべて怒涛の「カッコいい」で吹き飛ばされる。 なによりもセトリの緩急がすごすぎる。セトリ作ったやつもしかしてうわさの妖怪緩急小僧か?
あーこの音です、この音が欲しかったんです! をすべて満たしてくれるスーパー贅沢な曲。ギター、ベース、ドラム、どこを切っても聴きどころしかない。あまりにもカッコイイ。もうかっこいい以外の言葉はいらない。楽し過ぎてなにも分からない。俺の手足は今日この瞬間何もかも忘れてハッチャケて踊るためにあったのだ。
体感気温60度、コロナウイルスもなにもかも、この世にこの瞬間に害成すやつは全員滅びるこの空間にて熱狂の渦が終わり、観客も何もかも汗だくの中で、その中でも多分一番汗かいてるシノダさんが、アウトロをかき鳴らしながら一言
シノダ「福岡ありがとうございました、最後の曲です! wowakaより愛をこめて!!」
雄たけび交じりの歓声、少しの間を空けて4カウント、最後に炸裂するはアンノウン・マザーグース。余力なんて残さないと言わんばかりの怒涛の連撃を締めくくる一発。さすがに泣く。涙腺ガバガバおじさんである。がんばっているバンドに弱いのだ。
文字通りいろんな意味で集大成の曲である。聴くだけでいろんな感情がこみ上げる。この曲が見せた新しい地平の果てに、もしかしたら僕らは生きているうちにもうたどり着けないのかもしれないけど、それでも今鳴り響く音楽は美しい。聴かれ続ける限り音楽は死なないのだ。月並みだけど、なんとなくそういうことを思った。
もし今日のライブでアンノウン・マザーグースが披露されたら喉が枯れるほどにシンガロンをしようと心に決めていたので、恥ずかしがらずに大きな声をだした。喉から血が出たって本望だった。最後の一節を歌い切り、三人で向かい合って楽器を鳴らす。今までで一番大きな歓声。楽器をかき鳴らしながら最後に
シノダ「ベース、イガラシ! ドラムス、ゆーまお! ギターボーカル、シノダ! そして作詞作曲wowaka!! ヒトリエでした!!」
と、シノダさんのコールにて演奏終了。音楽サイトのライブレポでは幾度となく文章で見てきたコールだけど、生で聴くとずしんと来た。
いやもうマジで最高のライブだった。最初から最後までトップギア。むせ返るような、滾るような熱気を擁しながらも突き抜けるようなこの爽快感。余韻。本当に、このバンドを追っていてよかったと心から思った。ありがとうヒトリエ。
【後攻:UNISON SQUARE GARDEN】
15分程度の準備のち、暗転。ヒトリエのときよりずっと大きな歓声。こればかりは仕方ない。主催だもんな。
もはやおなじみのSE、イズミカワソラさんの「絵の具」が流れ、ステージは鮮やかな青に染まる。ピアノの音とともに鈴木、田淵、斎藤の順で登場。悠々と登場するドラムおじさん、ひょこひょこと登場するベースおじさん、にこにこと登場するギターおじさん。三者三様。
SE途中で短い、けど身体が虚空にふっとぶほど強烈なドラムソロ、からのセッションにて開幕。びっくりするほど息ぴったりの三人のアンサンブル。からのなんだか聞き覚えのある前奏になだれ込み、あっこれは、これは、まさか、とすでに気を失いかけている僕、の内心を「分かってる」斉藤宏介の
斎藤「天国と地獄ゥ!」
ギャッ、みたいな声が出てしまった。動揺しすぎて。音で秘孔を突くのをやめろ
ヒトリエの圧巻のパフォーマンスからの満を持しての後攻一発目、天国と地獄。圧倒的かつ暴力的なまでのサウンドの奔流。颶風も瀑布もこの曲の前ではそよ風と水遊びに過ぎない。人間も神も悪魔も等しく波乱万丈のルーレットに吹き飛ばす聴くジェットコースターである。ド頭一発目これはダメです。脳に血が上りすぎて猿になります。脳に血が上りすぎると猿になるんですか?
斎藤「who is normal in this shoォォォォォォォォゥ?(長め)」
やだァかっこいい(大蛇丸)
がなる斉藤氏、超笑顔の鈴木氏、そして十分な身体のウォームアップを感じさせるキレのある動きの田淵氏。この人だけ競ってるフィールドが違うんだよなあ。人類滅亡してもこの人だけはなんか生きてそう。見てて超楽しい。壊れたラジコン、もとい怒り状態のドスファンゴ。ステージに見どころが多すぎて目が二個じゃ全然足りない。
fakestなビートもcleverなショットもOK people one more time?も全部余すことなく堪能出来て僕はもうこの世に未練がなくなってしまった。これから何を糧に生きていけばいいんだろう。この数分間で全てを失ってしまった。楽しさ通り越してちょっとムカついてきた。おいコラ35歳てめえこの野郎、僕らのこの先をどうしてくれるんだ
斎藤「よーこそォ!」
そんな人生に絶望している僕に、アウトロの余韻を掻き消しながらヨウコソォする斉藤先生のギターからこれまた聞き覚えのある音が。真っ暗になってしまった人生に光が差す。そうだ……ユニゾンには天国と地獄以外にもいい曲なんていくらでもあるんだ……なんでこんな当たり前のことを忘れていたんだろう
ステージ上の三人に後光が差している。歓声すらも遠い。Zepp Fukuokaのステージが途方もなくだだっ広く見える。ユニゾンと言う名のデカい虎を、動物園の檻の前で、いやアフリカを横断する観光バスの中で眺めているかのような、そんな一方的かつ美しい邂逅。「こんばんは福岡!」からの2曲目、アトラクションがはじまる (they call it “NO.6”)。もうここで分かった、揺さぶることしか考えていないタイプのセトリである。
良い曲だったのは知ってたけどこんなにいい曲だったっけ、と変な驚き方をしながら聴いていた。我らがCITSもだけど、Dr.izzyの曲はライブ化けする曲が多すぎる。最後のキメもばっちり決めて、「UNISON SQUARE GARDEN、です!」……か、ら、の、不意打ち「1234!!」
この日一番の歓声がここだった。若干モッシュっぽくなる周りに、そこそこ良い立ち位置にある我が肉体をなるべく流されないように足に力を入れながらも、浮足立つのであまり意味もない。これまたライブド定番、場違いハミングバード。去年は一回も聴けなかったから素直に超うれしい。嬉しいの雨霰。
かの有名なDr.izzy tourを彷彿とさせるこの流れ、僕がizzyの民だったら死んでたけどCITSの民だったからなんとか致命傷で済んだ。AだろうがBだろうがサビだろうが常時上がる歓声と人差し指。湿気を孕んだ熱気、観客ごと踊る会場、もう何がなんだか分からないけど楽しい俺、アクロバティックな田淵智也。音楽で夜が揺れている。ア――――――
もはや楽しいを通り越して、彼らは音楽ではなくて聴覚から摂取するモルヒネを各々の楽器から僕らの脳髄に提供しているのでは? とちょっと犯罪を疑ってしまうほどの多幸感。どうでもいいけど多幸感って言葉、ユニゾン知らなかったら多分こんなに使ってない。聴きどころしかなくて大変良かったです
アウトロを短く切り、「ありがとー」と軽くお辞儀をする斎藤氏。とりあえず暗転。薄暗い空間にひっきりなしに三人の名前を呼ぶ声が響いた。僕は恥ずいのでやらなかった。
うっすらとライトが灯り、汗のせいか心なしかいつもよりきらめいて見える斉藤氏が髪(イヤモニ?)を弄りながら口を開く。
斎藤「福岡の皆さんこんばんは! いやーまだ4月だってのに暑いね! 会場もヒトリエも! ここ(足元を指さす)もうシノダくんの汗でびっちゃびちゃ(笑) スタッフさん大変だったろうな……大丈夫? 脱水症状とかなってないですか? もう遠慮なく休憩とかしてもらっていいんで、無理なく、最後まで自由に楽しんでいってください! よろしくお願いします!」
からの4カウントスタートで炸裂する4曲目、プロトラクト・カウントダウン。今日のセトリでは多分一番レアめ。獣の咆哮のような遺言がそこかしこから聞こえる。僕もちょっとそわそわしてしまった。対バンとかでこういうアルバム曲をぽーんとやってくれるの嬉しいよね……
初期のヒリヒリするような焦燥感と、今の余裕のあるテクニカルさ、どっちのいいとこもそれぞれ丁度良く取ったような良さみハイブリッドな曲だとは思ってたけど、生で聴くとゴリゴリ感がすごかった。スマートタイプだと思ってたらとんだ隠れマッチョだった。ていうか「limit!」のシンガロンの声がデカくてビビった。もっとこう、知る人ぞ知るみたいな印象だったのにな。まあカッコいいからね。
いやあ良いもの聴けた、とかほくほくとした気持ちになりながらアウトロを呑気に堪能していたら、間髪入れずに次の曲のイントロに。ユニゾンのライブは曲間の繋ぎに無駄がなくてスマートで大変良k……
寒気
その出会いは余りにも唐突で、一瞬理解できなかった。近辺の客が皆飛び跳ねている。でも遠い。その黄色い歓声がとても遠い。幾度となく聴いたはずなのに、生で聴くとここまで言葉を失うものなのか。脳が情報を処理しきれてない。感情を声帯に伝達できない。聴覚以外の五感が全て麻痺している。ここで出会えると思っていなかった。完全なる不意打ち。覚悟の不足。今までの人生はこの瞬間までの壮大なる前座だったのか? それほどまでの衝撃。
5曲目、シューゲイザースピーカー。世界最強のアルバムのリード曲、つまり世界最強の曲である。
ここでこのカードを切れるのか。この曲を披露できるのか。田淵智也さんもしかして僕の知らない間にリサーチとかしました? 「Catcher in the spy」でTwitter検索とかしました? 卑怯ですよエゴサーチとか。そういう軽率な行動がオタクの唐突な死を呼ぶのです。もう東京に足を向けて寝れない。
シューゲイザースピーカー、実のところいうとライブCDや映像作品での収録は比較的恵まれている方で(僕は初めて生で聴いた)それこそCITStourだったりOrOrtourだったりで披露されてるんだけど、最近の披露になればなるほどクオリティが目に見えて上がってて(特に音源に対するギターの音の再現度とか)、それを踏まえた上でいうけどこの日演奏されたシューゲイザースピーカーが今までで一番よかった。ここだけ切り取って録音したCDを1万円で売ってくれ、資金に関しては腎臓も肺も皮膚も血管も全部残ってるから安心してほしい。
俺の人生がスタンプラリーもしくはビンゴゲームだったら、この出会いは間違いなくそのスタンプシートなりビンゴカードなりを全部埋めてしまう、相当にヤバいものなんですよ。もうゲーム終了で良い。人生の節目節目の画面に表示される数字に一喜一憂してちまちまと手元のちっぽけなビンゴカードと向き合っている凡夫が憐れで仕方ない。生でシューゲイザースピーカーを聴く。それだけで上がりなんですよ、人生。分かりますか? この世にはシューゲイザースピーカーを生で聴いたことがある人間と聴いたことがない人間しか存在しない。
とにかく全部カッコよかった。それしか言えない。でももうそれだけでいいんですよ。グルメリポーターの美味い肉食った時のリアクションとして、「肉本来の味がしますね」とか「脂身の甘さが違う」とかそういう分かったようなこと言うより、「うまい!!!!!」と美味しさで小便を漏らしながら大気圏まで飛んでいく方が信用できるんですよ、それと同じです 僕はカッコよさのあまりZepp Fukuokaの天井をぶち破って星になりました。これは秘書が書いています、なんて冗談もつかの間
斎藤「I'm sane, but it's trick or treat……」
大盤振る舞いだなぁ(白目)
スリリングでデンジャラスな空気(ここの表現音楽ニュースサイトっぽい)をそのまま受け継ぎながらの6曲目、fake town baby。頭は大興奮なのに展開があまりにも怒涛過ぎて身体が追いつかない。これ以上の過剰摂取は身体が持たない。身体が許可してないのに気持ちは勝手に3倍界王拳
みんな大好き、僕も大好き、キラーチューン祭りアルバムとして名高いもむも(僕が使ってるMODE MOOD MODEの略称)の中でもとりわけ攻撃力がパネエ曲として大変有名ですね。教科書にも載ってる。しかしプロトラクト~からずっと水も飲まずによくもまあこんな難しい曲をガツガツ歌いながらギターが弾けますね斎藤さん。声帯がチタン。
シューゲイザースピーカーからのこの曲、マジでずっとスポットライトがずっと原色バリバリの点滅マシマシで目がちかちかしてた。意図せずオノマトペ大好きな人になってしまった。
「勝算万全、おまたせ」でバチッと終了&暗転。暗がりから「ありがとー」の声。これよね~このメリハリがいい。メンバー間だけでなくてスタッフともめちゃめちゃ息が合ってないと出来ないこのキメ。曲と曲の間とか、一旦演奏を切るところとか、締めるところは締めるってのを徹底してるから、こういうとこに無駄な空白が出来ないの超かっこいい。
ここでMC。ヒトリエとの馴れ初めとか、メンバー全員馬鹿みたいに楽器が上手いこととか、なんだかんだヒトリエのことをめっちゃ褒めた後、
斎藤「……そういえばね、さっきのヒトリエのライブ前ね、シノダくんめっちゃトイレに行きたいって言ってたんだけど、終わって戻ってきても別になんてことなくピンピンしてんの。俺終わったらすぐにトイレにダッシュすんのかなと思ってたんだけど。訊いたら「なんか尿意が消えた」って。もしかしてここ(向かって正面の宙をぐるぐる指さし)らへんに……」
褒めて褒めてずどんと落とすのほんと、何? にやにやしながら言うことか? と思いながらもめっちゃ笑った。田淵もデカい声で笑ってた。
そんなわけで次の曲いきまーす、と軽い気持ちでシノダさんを空中におしっこ飛散おじさんに仕立て上げたあと、これまた聴き馴染みのあるイントロ。7曲目、春が来てぼくら。軽快かつ柔らかなサウンドが耳にしみる。ついさっきまでここにいる全員ぶっ飛ばすかのような、こん棒のような音楽を振り回していたとは思えないほどのやさしさ。ふり幅が広い。時期的にもぴったりで良い。
先ほどまで飛び跳ねて楽しんでいた観客も僕含めてみんなゆらゆらと思い思いに音と揺れていた。戯れていた。本当にいろんな表情を見せるバンドだと思う。内外関係なく、今までの音楽活動をすべて血肉にしてここまで来てる。おそろしい平衡感覚。
後奏を終えてほとんど間髪入れず8曲目、桜のあと(all quartets lead to the )
ボーカルイントロの瞬間の田淵智也のしてやったり! みたいなドヤ顔、忘れるまで忘れない。ゆるやかな幸福、からのはじけるようなハイテンション。頭もうからっぽ、からっぽです 何もわからない 知能指数が著しく低下してしまった
春が来てぼくら、からのこの曲はちょっとせこくないですか? レギュレーション違反では? 嬉し過ぎて杉になってしまった(美味すぎて馬になる的な) というか今回のセトリは俺得すぎるんだけどちょっとマジで考案者出てきてほしい。金一封を贈呈したい そろそろ書いてて虚しくなってきた
めっちゃたのしく身体を揺らしながらも、対バンで8曲目にこの曲、流石に終盤かな……とちょっと寂しく思っていたら案の定斎藤さんから「オンドラムス、タカオスズキ!!」のコールが。ユニゾンのライブの名物、鈴木貴雄御大によるドラムソロの時間である。
いくらイカを極めようと彼の本業はこのスーパードンキーコングなドラミング! ドラムの専門的な事が一切合切分からないのでフィーリングで伝えるが、なんかもう全体的にドッカアアア~ン・ショァァァワァ~ンって感じだった。音が、じゃなくて僕の頭が。舞洲の時とかと比べるとわりかし時間は短めだったかな。すぐにセッションが始まった。
田淵氏にピンスポが当たる。彼のベースは自称下手らしいが、素人なので聴くたびに「どこが?」と思ってしまう。これが下手だって言える人は多分ベースで飯食ってる人だけなんじゃないか。どぅるどぅるしててスッゲーカッコよかった。
そして斎藤氏のソロ。ここで会ったがけもの道のソロのように、楽しげでかっこいいフレーズを、短いプレイタイムの中にこれでもかと詰め込んだ非常に贅沢なソロパートだった。斉藤宏介スターターキット的な。よくもまあ笑顔で弾けるね。僕も今年からアコギをちょいちょい触り始めたんだけど、どれだけ化け物かが前よりずっとわかったよ。指に鉄とか溶接してるとしか思えない。
そのあと3人向かい合ってのバキバキのセッション、からのなだれ込むように9曲目、最新曲Phantom Joke。もちろん初対面。セッションからのPhantom Jokeとか、もし実現したらめちゃくちゃカッコいいだろうな~と思ってたんだけど、まあ案の定カッコよかったよね。知ってんだよなそんなことはな。知ってたんだけど超カッコいいんですよ。身構えてても倒れてしまうカッコよさ。
僕これ一回だけカラオケで歌ったことがあるんですけどマジで難しくて、なんでこんな舌がたくさんある人用の歌を、声帯とリズム感がオリハルコンの人用の歌を、あまつさえ「みんな歌ってね!」とか言わんばかりのアニメタイアップ曲としてシングルで出しちゃうんだろうなって思ったんですけど、この世に歌える人いるんですよ。おかしくないですか? なんかの間違いで、アーティストによるボーカロイドカバーアルバムとかが出たら消失でもANTI THE∞HOLiCでも何でもいいから、ニコニコのタグに「歌ってみろ」ってついてる曲を歌ってほしい。その滑舌に用がある。
そしてとにかくドラムがやば過ぎた。手も足もぐっちゃぐちゃ。おそろしく早いドラム捌き、オレでなきゃ見逃しちゃうね、とかマジで言ってられない。見逃したのでもう一回お願いしたい。すげ~とか言ってる間に終わったわ。まさに幻影(うまい) ほんとにPhantom Jokeやったのか? 僕の都合のいい妄想じゃないのか?
貴雄「3・4、1234!!」
ユニゾン「東の空から夜な夜なドライブ!!!」
泣き叫ぶほどヒート。怒涛なんて言葉では足りない。ここでぶちかましにやって来た最強のキラーチューン、徹頭徹尾夜な夜なドライブ。ギャグみたいなシンセサイザーと、赤と青のスポットライト点滅が超マブシイ。
Aメロを歌う斎藤さんのがなり具合が最高によかった。超チャラかった。同系統のゴリゴリ曲Phantom Jokeの流れから続けて、こんなヤンキーみたいな粘っこい感じで歌われたら男でもギャップで排卵してしまう。エロすぎた。顔を見ながらのあの声はダメだった。
全体的にヒートアップした田淵氏がやりたい放題。ステージ横幅目一杯に動き回るわドラムセットは一周するわ足はガンガン上げるわ。身体能力激高妖怪にしか思えない。これじゃなくて他の曲だけど、年々どんどんヒートアップしていくように思える斎藤さんとも曲間での絡みもエグかった。需要があるのかな、あるんだろうな。少なくとも僕は観てて超面白かった。今度のライブで唐突に斎藤さんと組体操とかしても笑う自信がある。
なんだかんだシンガロンも楽しかったけど、テンションが上がりすぎて逆に頭が冷静になっていた時間帯だったので口パクで済ませた。なるべくライブ中はね、自分以外の声を聴きたいからね。
夜な夜なドライブ夜な夜な! でパキッと演奏を切って拍手と大歓声、ちょっと間を開けて斎藤さんが一言
斎藤「福岡最高でしたありがとう! ラスト!」
体感10分もなかった。本当に早かった。もう終わってしまった。これ書くのは1週間以上かかってるのにな……これも相対性理論かな
もう何千と聴いてきたであろうこなれたドラムの入り、からのピンスポが当たる斉藤氏の弾くちょっと音源より上ずった音のギター、なだれ込むように幸せ満点のイントロに。ラストはご存じ、シュガーソングとビターステップ。結局これなんですよねえ最高。
やっぱりこの曲なんですよ。持ち曲がどこを切っても4番打者ぞろいのこのUNISON SQUARE GARDENとかいうスーパーロックバンドの代表曲ですよ。圧倒的高打率。抜きんでたパワーヒッター。一聴だけでもう分かってしまう「良さ」。これよ。これなんですよ。この即効性。やはり唯一無二。そんじょそこらの素人が考えたグッドスタッフでは、、生演奏のこの一曲で全てを蹴散らされる。
やはり相当場数を踏んできただけあって演奏に一切迷いがない。余裕どころか風格すら感じる。相当難しい曲らしいのにいとも簡単そうに捌きこなす。自分の身体を使いこなし過ぎでは? 廃人。廃人です。舌を巻きすぎてロール状のまま出てこなくなってしまった。
アウトロのデンデンデーデッデッデッデーンのとこを伸ばしに伸ばし、最後にキメを入れて本編終了。
斎藤「福岡ありがとうございましたー! また会いましょう! バイバイ!」
いやーもう超楽しかった。ヒトリエ最高にカッコよかったからなあ~大丈夫かなあ~とか思ってたけど杞憂も杞憂、超絶カッコよかった。ユニゾンのライブに行くたびに好きでよかった~と思うんだけど今回もそういうライブだった。最高。行ってないけど
さて。超楽しかったんだけど、まだこっから最後の〆が残ってるんですよ。証拠にみんな手を叩いてる。アンコールの拍手の時に時に「アーイ!」とか言って仕切る寒いやつがあんまりいないからいいよね、ユニゾンのライブ。ああいう方向に心臓強くなったらマジでダメだと思うよ
何も考えず手を叩いていたらステージに光が差し、着替えた3人が登場。斎藤さんは今回のツアーグッズのオシャレでかわいいTシャツを着ていた。僕が買ったのじゃなかった。「アンコールありがとうございます」からの短めのMC。ヒトリエめっちゃよかったね、また一緒にやりたいって話をしていた。
斎藤「ヒトリエ、本当に厄介なスリーピースバンドが出てきてしまったな、やべえな、と思っておりますが、僕らも負けませんので。またツアーで会いましょう。今日はありがとうございました」
4カウント、からギターイントロ。えっ、の言葉を口が勝手に漏らした後、すべての思考が停止してしまった。そんなバカな、そんな、あれだけ僕を贔屓したセトリを本編で組んでいたくせに、アンコールでそんなことして、いいよ、いい、いいに決まってる、もっとくれ、この先どうなったっていい、いいか、今この瞬間の快楽が全て、音楽とは快楽を求めるための媒体であり手段の一種、いやそんなのどうでもいいマジで俺は前世でどんな徳を如何ほど積んだんだ? なんでそんな
箱庭ロック・ショーなんてきいてない
ユニゾンの曲の中で一番生で聴きたい曲は何ですか、って質問に答えるとするならこの曲だったのに、まさかそんな聴けてしまったとか そんな、棚から牡丹餅どころじゃない 棚から徳川埋蔵金 これで人生勝ち組が確定してしまった……あああ、シューゲイザースピーカーといい箱庭ロック・ショーといい、曲の采配に神の意志すら感じる。Oh my god…………vain
当たり前だけど全編カッコよかった。特にギターソロ。僕はDUGOUT ACCIDENTの限定版についてるCITStourのライブDVDをそれはもうベイブレードのごとくぶん回してきた男ですからね、斎藤さんの手の動きは目に焼き付いて取れなくなってたんですけど、この日に上書きされてしまった。引くほどカッコよかった。ほんとに10何年前の曲ですか?
演奏中に幾度となく思った。これでもういい、もう終わっていい、これ以上は何が来たってもう蛇足なんだからもういい、楽しかった、4半世紀近くの人生で一番楽しいライブだった。もういい、何もいらない、また明日から頑張ります……そう思いながら僕のこの最高の一日は幕を閉じ
斎藤「福岡最高でした! またね!」
なかった あああ~~~最高 要りますその足、いや髭 蛇が竜になる
これまたもう、そんな、サービス精神旺盛すぎやしませんか。もしかしてUNICITYへの納税に対する見返りですか? これが噂のふるさと納税ってやつですか? そんなもう、君の瞳に恋してないまでやってくれるなんてなんてまじで、おまけにしてはちょっとデカすぎる 情緒が破裂して安らかなる最期を迎えそう。
ABサビ間奏アウトロまで余すとこなく幸せ、これはもはやもう「幸せ」のイデアをこちらの世界に持ってきてそのまま超技術で加工して楽曲に仕上げたのような、そういう人間の理解の範疇を超えた幸福感を有する曲へと進化していた。今ならアムウェイだろうがエホバだろうが薦めてきた人間全員返り討ちにしてロックバンドに落とせそうな気さえする。これが真理 これが解脱 今日から俺が涅槃仏
アウトロを伸ばしに伸ばしながらかき鳴らして演奏が終わる。鳴りやまない歓声と拍手。もう一回またね! を繰り返して三人はステージから去っていった。客電の点灯と共に、急に現実に戻された気がして寂しくなってしまった。いつもはどんなに良いライブを観ても、ああ~楽しかった、で終わるのに。鮮明に残った記憶と、いまだ残る会場の熱気と耳鳴りだけが、ほんの数分前まで行われていた夢の光景の証左だった。
人混みに流されながらZepp Fukuokaを抜けた。とっぷりと日の暮れた空が視界を埋めた。まだ少し冷たい、四月の夜の風が汗だくになった身体をそっと撫ぜる。じわじわと蘇ってくるあの素晴らしきライブでのハイライトの数々。これを思い出すだけで当分は生きていけるな、としばらく口のゆるみが収まらなかった。
2018年の1月、赤坂BLITZに行けず悔しさで唇を噛み締めたあの頃の僕が、ようやく救われた気がする。本当に今までいろいろあったけど、今日のこの一日だけでなんかいろいろ報われた。最高の連続、どこをどう取っても見どころしかない、今までで一番幸せなライブでした。ユニゾンを、ヒトリエを信じて追っててよかった。
遠慮することなくいつでもどこでも交わってほしい、いややっぱりまた近場で交わってくれたらうれしい、でもこの二組の対バンがまた観れるのであれば、月でも城崎でもどこへでも行く所存である。本当に良いライブでした。ありがとうございました。
UNISON SQUARE GARDEN-fun time HOLIDAY 8(w/ヒトリエ) 妄想セットリスト
・ヒトリエ
01.ポラリス
02.センスレス・ワンダー
03.インパーフェクション
04.SLEEPWALK
05.W(HERE)
06.カラノワレモノ
07.踊るマネキン、唄う阿呆
08.青
09.トーキーダンス
10.アンノウン・マザーグース
01.天国と地獄
02.アトラクションがはじまる (they call it “NO.6”)
03.場違いハミングバード
04.プロトラクト・カウントダウン
05.シューゲイザースピーカー
07.春が来てぼくら
08.桜のあと(all quartets lead to the?)
09.(ドラムソロ~セッション)Phantom Joke
10.徹頭徹尾夜な夜なドライブ
en
01.箱庭ロック・ショー
02.君の瞳に恋してない
以上、ぜーんぶライブをコロナに台無しにされた僕の妄想でした。今死ぬほと虚しいからほんと良い死に方しないでくれコロナウイルス わりと早い段階でくたばれ